表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/29

Scene01:欲望の坩堝(るつぼ)

AIの「檻」を抜けて、「幽霊のゴースト・ルート」を往け ……

この作品は受賞作のスピンオフです

カレイドポリスの酸性雨は、有栖川玲ありすがわ れいの記憶にある霞が関の「完璧な静寂」とは、あまりにも対極の「ノイズ」を奏でていた。

「——玲、聞こえる? こちら桜井。カレイドポリスへの再侵入は確認できた。けど、本当に無茶するよね……」

数週間前、東京・霞が関の地下要塞。あのAI「アマテラス」の「檻」から、オペレーターの桜井さくらいと共に辛くも脱出した玲は、今、再び混沌の都市に戻ってきていた。

「ATLASの『神託オラクル』と、お父さん……有栖川宗也のログのクロス解析、終わったよ」

セーフハウスの安端末から聞こえる桜井の声は、疲労と興奮が入り混じった独特の「響き」を持っていた。

「渉さん……玲のお父さんの協力者が遺した、次の『遺産』の在り処。分かった」

「……どこ?」

「カレイドポリス新市街、『バーベル』の頂。——ギャラリー・ヴァルハラよ」

玲は、雨に煙る超高層タワー「バーベル(バベル)」を見上げていた。ゼロデイ・フレアの災禍を免れ、旧市街の混沌スロウタラムを見下ろす「欲望の坩堝」。

玲の「調律者」としての「耳」が、あの塔から発せられる強烈な「渇望」と「痛み」のノイズを捉えていた。

「……桜井。ヴァルハラのセキュリティAI『アルゴス』のハッキングは?」

『それが……かなり手強い。A級ハッカーでも門前払いされるって噂は本当みたい。でも、スタッフ用の偽装IDダミーなら何とか用意できる。表オークションの混乱に紛れて潜入するしか……』

「分かった。それでいく」

玲は通信を切り、酸性雨を弾くフードを深く被り直した。

渉が遺した「遺産」。それが、AIの支配に抗うための次の「鍵」なのか、それとも新たな「混沌ノイズ」の始まりなのか。

玲は、塔から響く「鉄の味」と「焦げた臭い」のノイズに向かい、一歩を踏み出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ