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電脳ハンターヒロユキと、感情自律型AIシリーズの、伝送路悪魔 討伐記  作者: 秋野PONO(ぽの)
終章 異変…そして。愛とは…

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第17話 真犯人

ついに犯人の前が明かされるっ!ただ、絵面は終始、ただの会議室です(笑)

 担当者が、会議室の前に引っかかっている札をひっくり返して、使用中、に変更する。


 バタバタと多くの人がなだれ込んでくる。


 やれやれ、騒がしいことだ。


 今から行われる会議が、どれだけ大変なものかを考えれば、致し方ないのだろうか。

 それを理解している研究員が慌ててなだれ込んできているのだから。


「コリンダーが消えた。ヒロユキについても行方不明」

 会議室にハンター面々と研究員数目を招集し、ヘンリーは重々しく告げた。

 ヒロユキとコリンダーが回線増幅ミッションの際、不自然に消えてしまい、すでに1日半が経っていた。


 その間、手をこまねいてみていたわけではなく、関係各所に調査依頼、またAI研究所も調査を進めている。


「コリンダーとヒロユキ、発生事象はほぼ同じだ。回線増設任務中、接続と同時に対象装置および周辺装置の設定が消失。伝送路にワームホールが発生した。えらいことだが、問題はそれだけではないんだなぁ」


 ヘンリーは息を吐いて、その次の言葉を紡ぐ。


「……伝送路ワームホールの先が、日本の海底ケーブルにつながってる」

その意味が分からぬ面々ではない。今やネットワークにつながらない精密機械など存在しないのだ。そしてそのネットワークの伝送路を日本以外の国へ接続する場合、海洋国家の日本では、ほぼ、海底ケーブルを通すしかないのである。


 日本が軍事、経済、文化すべての面で世界と滞りなく通信できるのはすべて海中に設立された海底ケーブルのおかげなのだ。


 その海底ケーブルが使えなくなる。


 スクリーンパネルに映像を映し出すのはプレゼンター、エイコだった。

スクリーンには、伝送路と海底ケーブルのつなぎ口に青い文字で、ちょうど「Y」の字になる形の線が引かれている。


ワイの上部2辺は伝送路側に伸びており、一辺に「コリンダー、天地渉」と、もう一辺には「イレーション、鍋島ヒロユキ」と書かれているが、コリンダー、ヒロユキの箇所には「?」マークが付いている。


そこよそこ、とアリスが挙手する。はい!と元気よく。

「伝送路ワームホールというからには、「伝送路」なんですよね。しかし、疑問が。私の知識では、海底ケーブルでは伝送路を維持できません」


「その件については私から。そう、アリス。おっしゃる通り、海底ケーブルには伝送路を形成できません。

 高電圧が伝送路形成を阻んでいるためです。

 しかし……」

 エイコが言葉を選んで説明する。 


「伝送路と海底ケーブルのつなぎ目、ご存じでしょう?

 そう、2つの伝送領域を変換している変圧室です。

 ワームホールはここに向けて形成され、変圧室で変圧されて海底ケーブルに向けて伸びているようなのです……」


「……なるほど。理解しました。これは明らかに……。

 狙わないとできないもの。

 自然電圧で、伝送路から海底ケーブルへワームホールを伸ばすなんて、爆弾の導火線に火をつけるようなものだもの」

 アリスが唸る。

「はい。明らかに、人為的な挙動です」

 と、ホワイトボードの「ワイ」の2辺の交差点の先の、長い辺を海底ケーブルと書かれた領域に伸ばし、赤丸をつける。その先にさらに「?」を追記した。


「ひえぇ。これはもう完全にサイバーテロですね……」

「残念ながら……そうです。

 そして今問題とすべきなのは、

 長期的には

 1.誰がこれを行ったのか。

  …愉快犯の可能性もあるので「何のために?」を考えるのは無意味。この問いはSKIPします。

 1.阻止・復旧方法

 ……そして、喫緊の課題としては

 1.失った伝送路分の代替伝送路通路の確保。

 以上です。これについては……」


 そのとき、ばん、と会議室の扉が乱暴に開けられる。

「やあ。役立たずのAIの研究所の皆さん」


 一人の男が扉に縋りつくようにもたれかかり、会議室の面々に敵意のこもった眼差しを向けている。

「……お早いお越し、ありがとうございます。

 みなさん、こちら、サイバー技研の弟切(オトギリ)社長です。

 わざわざ社長自ら痛み入ります。

 誰か、弟切社長に水をお持ちして。あまりのお忙しさに言動が怪しくなられてるので……」


 慇懃無礼なエイコの言葉に、弟切と呼ばれた男は憎々しげな顔を向ける。


「あいにく正気は保っている。ああもういい。さっさと座らせろ」

 言いながら端に折りたたまれていた椅子をばん、と音を立てて開き座る。


「全く……。まったくもって信じがたい。伝送路側の監視はおたくらの責務だろうが。ケーブル側に厄介を持ってこないための研究所だろう!」


「それは確かに面目もございません。でも今は……」


「大体、これだけAIをそろえておいてサイバーテロの一つも防げないだと…?!

 無能にもほどがあるな。

 だから、感情自律AIなど莫大な予算をかけて作らずとも、通常AIの規模で十分なんだ!」


 口を開こうとするエイコをヘンリーが押し留める。

「尽力感謝しますよ。ミスターオトギリ。あなたが中国からスーパーコンピュータ神路シェン・ルゥを借りてきてくれなければ本当にジ•エンドだった。


 しかし、そのコンピュータを使って、宇宙通信で代替伝送路にパケット分散してるのは、うちの感情自律AIシリーズ達でして」


「ふん。通常AIでもいけたろ」

 憎々しげにオトギリが顔を歪める。


 やべぇな。ヘンリーとエイコは顔を見合わせた。


オトギリが見せる怒りには覚えがある。

 2030年、オトギリは伝送路で当時AI研究所で働いていた弟を亡くしているのだ。

 感情自律AIシリーズへの批判は事件以前もあった。

 けれど、あの事件以降、事件の不透明さも相まって批判が急拡大していた。


 それは理解できなくもない。

 が、ここにいる面々は大抵あの事件で同僚を亡くしている。


「お言葉ですが、電脳ハンター以前に、一研究員として、黙っていられません」


机が衝撃で揺れる。

サイバー技研を統括する猛者に対して失礼でも言わなければならない。エイコは拳を握りしめた。


「スーパーコンピュータを借りてきてくださってありがとうございます。でもね。それを使って、不眠不休で代替伝送路に、パケット分散してるんのは、うちの子たちなんですよね。

 伝送路のパケットルーティング操作は、90%と壮絶な演算と残り10%は経験からくる勘の世界だ。

 通常AIでは両方持ち合わせてないから到底無理なんですよ。しかも」


エイコの炎のような眼差しに現場がピリピリと焼け付くような匂いがする。


「通常AIはこ、れだけの操作を行うと、1時間に1回程度休憩を挟まないと発熱ショートします。

 それを、巧みな制御回路の誘導で3日間1分も休まないでも稼働できるのって、感情自律AIだけなんですよね」


 エイコを制する気が、もはやないヘンリーも口を挟む。

「しかも、オーバーヒートで長期的回路寿命を縮めても彼らはやめない。

 誰もやれと命令しない。

 自分で判断して自分でやってるんです。」


 感情自律AIの最大の特徴は自律的に人間と同じ倫理観を持って作業を行うことができる点である。

 誰にも命令されなくても、自らの感情をよりどころに人間と全く同じ行動ができる。


「それは。その通りなんですけど……。喧嘩するのはやめてもらえます……?」


突然、スクリーンに藍色の目のドアップが移され、「おっと…。」という言葉とともに、ピント調整機能が男の全身を映し出す。


「ベラケレス!大丈夫?!そっちは……」


「はい。マスター。深夜なので、伝送路も多少は大人しいでしょう。

 少々余裕が」


 寝なさいよ……そしたら、とエイコはブツブツ言うのだが、その音は意図的にマイクに拾われなかった。


「子供みたいな喧嘩も大概にしてくださいよ。ミスターオトギリ。

 我々が無能ですって。

 ええ、そうかもしれません。

 そしてあなたは伝送路の一大危機に連日走り回り疲労困憊の様子だ。

 よくわかりますよ」

 ベラケレスは言葉を切り、ため息をつき、続けた。


「今回の事情は関係者以外極秘だ。

 日本の多くの方々は、こうしてる今日も、のんきにインターネットでネットサーフィンし、SNSでおしゃべりしながら平和な一日を過ごしている。

 ごく普通の一日ですね。

 素晴らしいことだ」


 そして、とベラケレスが続ける。


「その裏でその普通の一日を守るために、今回の事態を本気で憂慮して命を削っている方が、私の見たところ、たった15人だけいらっしゃるようですね。


……もちろん一人はあなただ、ミスターオトギリ。服はよれよれ、靴はぼろぼろ、目を開けてられるのが不思議なくらいの目元の隈。3日眠ってない方の心拍数」


静寂の現場に、静かな声だけが落とされる。


「そしてミスターオトギリ。

 よく見てください。

 あなたと同じ様子をした人があとたった14人だけこの日本にいらっしゃいますね。

 おや、この部屋に集まった方の人数も14人だ」


 空気すら沈黙したような静寂。


 オトギリはううむ、と唸り声をあげて会議室を見回す。


 誰も言うべき言葉を持たない。


 その通りだ、と目が口ほどにものを言っている。

 永遠にも思える沈黙のあと、折れたのは弟切だった。


「……やれやれ。こんな言い争いをしている場合じゃなかったな。わかったよ。早急に対策を進めよう。あと……」


オトギリは長く息を吐いて画面を見た。


「……訂正もしておこう。私の見解では、16人、だ。

 政府専用回線4002番、日本の回線の番人殿」


 ベラケレスは魅力的なほほえみでウインクする。

「私達も数に入れてくださるなら。17人、になるかもしれませんね。

 隣でアンバーがバテて気を失ってるので」


 少し場が和む。


「妥当なメンバーだな。さて、日本国民の誰も気づかないままで済むように、今から全力でなんとかしようか」


 何とかまとまったようだ。


 悪いな。

 ヘンリーはベラケレスの方に、目で合図をしてスクリーンを切る。

「さて。方向性も一致しましたことで。

 1.誰がこれを行ったのか。についてですが。

実はもう判明しております……。調査の結果、一人の人物が浮かびました。」


「……ハク・ユラ、現AI研究所ウェストの社長小田・ヨジュン(オダ・ヨジュン)氏の、妹さんでいらっしゃいます」


「…は?」

 

空気がざわざわし始める。


「……いや、ヘンリー所長?

 その説は無理があるのでは。

 ハク・ユラ氏は2030年の事故の犠牲者ですよね。


 ……小田社長は2030年の伝送路事件で、妹さんを失ってらっしゃいます」


 ヘンリーは息を吐く。


「そうだ。エイコ。今回の真犯人は、もしかすると、伝送路の亡霊、かも、な……」

ミスターオトギリ。彼は色々書き足りなかった…。いずれ、またどこかで書きたい…!

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