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電脳ハンターヒロユキと、感情自律型AIシリーズの、伝送路悪魔 討伐記  作者: 秋野PONO(ぽの)
第三章 彼らの日常、そして嵐の前の…

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第10話 むぎゅう―おばけ詰め詰めパニックー1

ある日のちょっと特殊な依頼。

――マスター……。スループット低下中 単位時間あたりの伝送量7.650どんどん減ってます。スループットゼロです。むぎゅう……。詰め詰めでくるしぃ。


 物質体なので発声もできるのに、ゴミに圧縮されて肺から空気を取り入れられず、言葉を出せなくなったコリンダーが通信回線で訴えてくる。


  「むぎゅう」の擬音をわざわざ送ってくるところが律儀である。


「コリンダー。ちょいこらえてくれ……。今、ゴミ圧縮するから……!」

 ヒロユキはエルボーでエンダーの急所を突いて1匹ずつ消去しながら叫ぶ。

 受けるんじゃなかった……、こんな依頼……。


 ヒロユキはゴミエンダーたちにつぶされながら心底後悔していた。


※※


事の起こりは昨日の夕方である。


「わるい。ヒロユキ。明日なんだけど、災害用緊急回線8080番を、代替AIのミーシャとエンジェルに任せたから」


 時間は20時を少し過ぎたところだ。ヒロユキとコリンダーは食堂で遅い食事をとっていたところだ。


「お。コリンダー。珍しいな今日は激辛タンタンメンじゃないのか」


 ヘンリーが4人掛けのテーブルの空き椅子に腰を下ろしながらコリンダーに笑いかける。


「はい。ちょうど私の前で終わってしまったのです」

 ヒロユキが申し訳なさそうに口を挟む。


「悪かったってば……。ちょうどコリンダーの手前で並んでてさ。何食うのって聞いたら激辛タンタンメンって聞いて食ったことなかったから興味湧いちゃって」


 赤いスープをふぅふぅと覚ましながらヒロユキがきまり悪げに言う。


「おおっと。それでヒロユキのとこで今日分がおわっちったの?ぷ。コリンダー。前々から思ってたんだけど、お前運悪すぎじゃね」


「代えようか?って言ったんよ一応。そしたら『人様の獲得した獲物を横取りする教育は受けておりません。』って頑なで。はぁ、ちょっとした好奇心だったんだよ」


「たはは。仲いいなお前ら」

 適当に済ませようとするヘンリーに「ちっ」と舌打ちしながら熱々ラーメンを冷ます作業に戻るヒロユキ。


 食堂は20時半までなので、急いでいる。

「んべ。ふぁんだって。ひぃしゃとふぇんしぇる?」


「……食いながらしゃべるな。ミーシャとエンジェルに代わってもらうことにした。お前ら二人、明日は急ぎでAL回線でエンダーの掃討作業を頼みてーんだよ。」


「AL……。アナログ回線ですか。なぜ我々が。アナログ回線保守はウェストの担当範囲では……」


「とろとろ親子丼((ミニ))」を食べ終わったコリンダーが目を細めながら言う。


「……うん。そうなんだけどよ。

 ウェストの主要機は今エクスポ2050の準備で忙しいのよ。

 本当なら代替機がやる予定だったんだけど、なんか調子悪くて緊急メンテに入ったんだって。

 ってさっき連絡が。

 最後に保守したのいつ、ってきいたら2か月前だっていうじゃん……。はよ連絡しよろって感じだよな。」


「2か月ノーメンテですか……。かなり溢れている気がいたします……」


「そうなんだよ……!まあアナログ回線だから?通常回線とは違って発生自体は少ないんだけど、それでも2か月はなかなかな。

 むこうさんも何とか調整しようとしたようだが、エクスポのあれこれも重なってマジで人出たりないって……。

 珍しいよな、こっちより豊富なはずだが。いつもは」


「もちろんご依頼とあれば異論ありませんが……。ミーシャとエンジェルでは難しいのですか」


「通常回線ならいいんだけどアナログ回線は……、何かあると面倒だから、ヒロユキが一番安心確実だ」

「……ああそうか。ヒロユキはアナログ回線保守出身でしたね」


 ……およ?


 ヘンリーは動揺を巧みに隠しながら内心で感心した。

 通常、電脳ハンターのAIは伝送路上での業務上、相棒を「マスター」と呼ぶことを推奨されている。伝送路上ではハンターが主司令塔で、AIが補佐用ブレーンであることが規定づけられているためである。


 別に罰則規定はないし、今は業務外、呼び名なんてどうだっていいのだが、多くのAⅠは業務外の物質世界でも相棒を「マスター」と呼ぶ。


 なんだかいろいろな思いがヘンリーの頭をよぎったが、最終的には、

――まぁこいつ(ヒロユキ)適当なやつだし、堅苦しいからやめろ、っていったんだろうな。

 というところに落ち着いて、特にそれ以上触れなかった。


 ヒロユキは平然とした顔で辛ラーメンと格闘している。

 一応話は聞いてるようで、頭はときおり頷いては、いる。


※※


 そして今。


 ヒロユキはゴミに埋もれながら心底後悔していた。

「コリンダーこっちだ。わき道に避難帯がある。今道あけるっ。圧縮完了。道に沿って移動しろ!」


「イエス、マイマスター。……助かりました。狭いですね。物質体解放して思念に戻りましょうか?」


「んーいや。物質体の攻撃の方が効くんだよね。レイヤ1と同じで。ちょっと保留で……」


 避難帯は人間2.3人で一杯になる程度の脇道である。エンダー避けのジャミングがかけてあるため、エンダーが入り込まない。……代わりに、正規のデータの通行もできない。生体のみが進入可能の、まさに、「避難路」である。


「ふいー、詰め詰めだったなー。2カ月放置するとこうなるのか。アリスの「マジカル掃除機☆」でも借りてくりゃよかったかな」


――数々のエンダーを圧縮してきた身ですが、自分が圧縮されるのは初体験でした。物質体を回復中。

 コリンダーが疲れたような声で報告する。


「だいぶ引っかかれたな……」


「はい。顔も……細かい傷だらけです。しかしマスター。そもそもなぜ我々がAL回線の保守などしなければならないのでしょう。デジタル回線が普及して50年以上経つのだから、アナログ回線など閉じてしまえば良いのではないでしょうか、マスター」

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