表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

1.プロローグ

 俺の半身めがけて飛んでくる青い炎。


 それは俺の脇腹を抉り、膝をつかせた。

「⋯⋯この時をもって、お前は四天王及び魔王軍から除名とする」


 デジャヴを感じると同時にじわじわとした絶望感に包まれていく。結局、異世界だろうがなんだろうが俺の人生が報われることはないらしい。

 視界がゆっくりとぼやけていく。

 ない脇腹に手をかざしながら俺はその場に倒れ込んだ。




 王道()RPG『ドラゴンジャーニー』、通称ドラジャニ。知る人ぞ知るクソゲーである。

 雑なバランス調整と、あからさまな予算不足による低すぎるクオリティに数多のゲーマーを苛立たせ、離脱させた伝説のゲーム。


 俺、井上伴助はそのゲームの開発者である。

 当時22歳だった俺は昔からの夢である、ゲーム制作会社に入社した。某ゾンビゲームや某おじさん兄弟などの有名ゲームを手掛ける大企業⋯⋯


 ではなく、あまり業績が芳しくない小さな会社だった。それでも俺はこの手でゲームを作られることに胸を膨らませ、その時が来るのを待っていた。


 そして来た。そこには俺の考えもしなかった地獄と形容する他ない労働環境が広がっていた。


 延々と納期に追いかけられ精神をすり潰し、目を白黒させながら急な不具合に対応する日々。いつからか残業の概念は無くなり、休日は消えゲームを好きといえなくなった。

 同期は消え、業績は日にちに悪くなり終いには倒産の危機を迎えた。そんな中社運をかけたゲームを俺たちは開発することになる。

 それこそが『ドラゴンジャーニー』である。

 結論から言えばクソゲーになることは分かっていた。

 予算も人材も足りず、スケジュールは遅延。それでも血反吐を吐きながらやっとの思いで世に送り出したのだ。

 その後に俺を待っていたのは、目を潰したくなるほどの酷評だった。

 命削りながら作ったものが、こんなものか。

 結局、大赤字でドラジャニは終わった。ついでに俺の人生も。

 会社を小さくするとかなんとかでリストラされた。俺は無職になった。

 色々なことが頭に浮かんでは消えていった。

 夜、ボーっと歩いてた。

 その時だ。トラックが俺の体を吹っ飛ばしたのは。

 空を飛んだ、意識は暗転した。



 声が何処からか聞こえた。白い空間だった。

「お前は何かしたいことがあるか?」

 頭に声が響く。

「⋯⋯めちゃくちゃにしたい、俺をクビにした会社も、クソ上司も、俺より幸せそうな奴らも何もかも。」

 時間を忘れて友達とゲームをしていたあの頃には戻れないんだ。それならもう、なんでもよかった。

「ほぅ、面白い。その願い叶えてやりたいところだが⋯⋯そうすると犠牲が大きすぎるな。」

 適当に口走ったことに厨二病患者が真面目に取り合っている。

「⋯⋯あぁそうだ、ちょうどいい世界が余っていた。


 井上伴助。お前は不幸だ、そして運がない。次の世界では上手くやるんだぞ。」

 言いたいことはたくさんあったが何故か口は動かなかった。

 俺は意識を失った。



 目を覚ましたそこは、救急車でも病室でもなく、薄暗い部屋の中だった。

「ゔわぁぁぁぁあぁぁぁっ!!」

 俺は二本足で立っていた。

 いきなりのことに死ぬほど驚いた。

 だが俺は徐々に冷静になっていった。

 視界の端にある名前とレベルバーに気がついたからである。そして、俺はそこにあった名前を知っていた。

『アリステア』

 そうドラジャニに登場する序盤の雑魚ボスである。

 夢の中の記憶と今の状況とで生まれる仮定。

 信じられないが、俺はドラジャニの世界に転生していた。

 そこから俺の魔王軍の一員としての、第二の人生が始まった。


 

 

初投稿です。

お読みいただきありがとうございました。

これから1週間くらいは毎日投稿したいと思っています。あらすじの方が面白いかもしれません。よかったら読んでみてください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ