【分解三昧】
ある工場生産が発展した星──そこのオートメーション化した、製品ラインに、その優秀な分解&組み立てロボットは稼動していた。
他の工業ロボットたちに比べ、格段に高性能なそのレトロな外見のロボットは、工場内をレール移動して工業ロボット数台分の作業を受け持っていた。
「やっぱり『AAA・アセンブル』は、他の組み立て分解ロボットに比べて性能がいい」
『AAA・アセンブル』と愛称で呼ばれている、工場ロボットの稼働域を工場内に広げるためにアセンブルの下半身に、新たに八本脚のカニ型移動ロボットがアタッチメントされた。
カニのように縦横無尽に移動するアセンブルの、分解や組み立て効率が高まった。
そんなある日、アセンブルと同型の工業ロボットが量産されて、工場ラインに配置されるコトが決まった。
「もう、おまえが働く必要はなくなっちまったな」
アセンブルを、いつも整備していた担当技術者がオイルを差しながら、悲しげな口調で言った。
「オレも、今日まででこの工場を去るんだよ……後任の技術者には、しっかり整備の方法を伝えておくからな……かわいがってもらえよ」
無言のアセンブルの目が月光を反射して、涙のように光った。
その夜──工場内で男女の痴話喧嘩の声が響いた。
「あの女は何より、キッパリと別れるって言ったじゃない!」
「うるさい! お前さえいなければいいんだ……おまえさえ」
男は衝動的に、女の首を絞めて殺害すると、証拠隠滅のために分解ラインを稼動させた。
仰向けでベルトコンベアーを流れていく女の死体は、AAA・アセンブラの前で急停止する。
アセンブラは、死体を解析して分解を開始した。
「ギチギチィギィ……生命活動を停止した体を分解する」
数十分後──女の体は原型をとどめないほど、ロボットアームで分解された。
アセンブラは、ラインの流れを逆回転させて、解体した肉片をスタートラインに送り返す。
普段とは違う、ラインの動きに工場内の随所で火花が散り、発火物質に引火した工場で火災が発生した。
「ギチッ、ギチッ、ギチッ……もっと分解したい……ギチッ、ギチッ」
【分解三昧】になったカニ脚の、狂った工場ロボットは、燃える工場から脱走した。




