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月魂国~十四人の罪人たち~  作者: 楠本恵士
【第一部】第一章・妖星ディストーション帝国【蚕食鯨呑】
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第1話・月ノ牙『幻月鉄馬』

 次元狭間の空間に響く会話の声──

「次の次元世界にいる、わたしのスペア体は特定できたか?」

「はい、この娘を特定できました」

「なるほど、わたしにそっくりだ……もっとも平行世界の、わたしなら似ていて当然か……母船内にいる【闇の牙】に連絡を取れ、平行世界の裏空間に到着次第、侵略を開始すると」


 ◇◇◇◇◇◇


 現世界の一つ──男子高校生の『幻月 鉄馬(げんつき てつま)』は、今日もバイクに乗って登校していた。

「我が道はオレの道! 頼れる男、幻月鉄馬さま登校!」


 鉄馬が通う学校は、バイクやスクーターでの通学が認められていた。

 徒歩で登校する生徒たちに混じって、スクーターや大形バイクに乗った女子生徒が、鉄馬のバイクを次々と追い抜いていく。

「女子は、なんびとたりとも、オレの後ろを走るコトは許さねえ……オレを追い抜いていけ」

 自転車に乗った女子生徒も鉄馬を追い抜いていく。


 男子生徒が乗ったスクーターが鉄馬のバイクを追い抜こうとした時、ヘルメットの中で鉄馬が怒鳴る。

「誰が、野郎がオレを追い抜いてもいいと言った! オレより先に行ってもいいのは女子だけだ!」


 男子生徒が乗るスクーターに、走りながら寄った鉄馬は男子生徒を、スクーターごと浅い川に蹴り落とした。

 走り去りながら、鉄馬が言った。

「男なら自力で上がってこい! 親獅子に千尋の谷に落とされた、獅子の子供のように!」

 バイクで走り去っていく、幻月鉄馬を見る女子生徒たちの。

「幻月鉄馬って最低」

「妹は学園一番の美少女なのに……兄があれじゃあねぇ」

「時代錯誤の乱暴者」

 そんな囁き声が聞こえた。


  ◇◇◇◇◇◇◇◇


 学園の昼休み──屋上で勝手に持ち込んだ、リクライニングできるビーチチェアの上で、愛用のアポロキャップを深めにかぶって昼寝をしていた鉄馬のところに。

 妹の幻月灯花(とうか)が、怒り顔でやって来て言った。

「聞いたよお兄ちゃん、また登校時に追い抜こうとした男子生徒を川に蹴り落としたんだって……蹴り落とされた男の子、泣きながら。ずぶ濡れで家に帰っていったんだよ……どうして、そういうことするの?」


「鍛えているだけだよ……あの程度で弱音を吐いて泣いて逃げる男は男じゃねぇ……それからオレのコトはバイクに乗っている時の二つ名は【月ノ牙】って呼んでくれ……今、思いついた」

「何が【月ノ牙】よ、お兄ちゃんのバカ!」

 妹の灯花が、サラサラの髪を揺らして、去っていくのを横目で見ていた鉄馬は。


 視界の隅に映る青空と雲の境界線に、赤い染みのようなモノがチラッと見えたような気がした。

(あれ?)

 染みが見えた雲と青空の境界線を、凝視する鉄馬。

 いつも通りの雲と空。

「気のせいか」

 鉄馬は帽子を深くかぶり直して、昼寝を続けた。

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情景/状況を想像で補いつつ、普通の小説っぽい文章に書き直してみた  ◇◇◇◇◇◇ 「次の世界にいるはずの、わたしのスペア体は特定できたの?」 「はい、この娘と特定できました」 「なるほど……、わ…
2025/08/24 16:08 情景/状況を想像で補いつつ、普通の小説っぽい文章に書き直してみた
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