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第6段落 怒りは人を進ませる

さっきのテニスは今まで感じたことがないワクワクを感じた。情獣を狩る時の嫌悪感を普段から味わっているせいか爽快感があった。

もっと佳奈ちゃんとも遥ちゃんや薫ちゃんとも先輩たちともテニスをしたい。もっと仲良くなりたい、あの空高く浮かんでいるボールを打ちたい、打ち返したい、もっと可愛いラケットを使いたいそんな考えで頭の中でいっぱいになって、言ってしまった。

「私もテニスをしたい・・・」

「決まりだね」遥ちゃんがニヤリと笑いながら言った。

「これから楽しい中学校生活が始まるー」薫ちゃんが両腕をあげて感動している。もう始まってるのに。

佳奈ちゃんもにんまり笑っている。先輩たち、特にキャプテンがはしゃいで喜んでいる。

「よかったー。今年度も新入部員が入ってくれてー。また昼休みの勧誘で用事あるって避けられるの辛かったか

 ら」

さっきから気になっていたけど、顧問の先生らしきおじいちゃん先生が椅子に座りながら寝ているのか起きているのかわからないけど、微笑んでいる。部活動完全下校時刻が迫っているから帰ったほうが良いと先輩に言われた。

もしタイムオーバーすると部活動活動停止、校門の前に立っている先生にネチネチ言われて、男子の場合通学カバンを背負いながらのバービー20回をさせられるらしい。

私はみんなと別れて家に帰る途中だ。この街は街灯がほとんどない。スーパーやコンビニの明かりが無かったら、

真っ暗で何も見えない。

駅に着き、1人ボロボロのベンチに座って、スマホで時間を確認した。まだ8分ぐらい時間がある。

誰もいない駅のホームはとても静かだ。

そしてさっきの部活動見学を思い出し、ため息をついた。

どうしよう・・・。入るって言ってしまった。私には情獣狩りの仕事がある。お父さんだって相手にしない。

抜け殻だし。おばさんにもまた何か言われるかもしれない。受験も失敗したし。

そんな事を考えていると帰りたくなくなってくる。少し前までテニスをして、この生活もいいなって思ってたのに、なんでだろう。なんで私は顔を下に向けているんだろう。

私はポケットに入っていた情獣狩りの証であるバッジを取り出し、地面に叩きつけた。

こんな家に生まれなければ、もっと普通の家系だったら、佳奈ちゃんたちと部活ができたのに。

私は叩きつけたバッジは拾わなかった。

無くなればいいと思った。情獣狩りの資格なんて。

アナウンスが駅のホームに響き渡り、ブザーがなった。誰かがホームに向かって走ってくる足音が聞こえた。

今は誰とも会いたくない。私は電車のドアが開くと、早々に乗って整理券を取り座席に座った。下を向いているせいか朝、気が付かなかった地面の黒ずみが目に留まる。情獣のゾッとする感じを思い出し、ますます嫌になる。

ドアが閉まり、電車が発進する。

その様子をシャッターがしまったビルの屋上からじっと見ている男が2人いた。

色白で眼鏡をかけ、黒いコートを着ている男がポケットからメモ帳を取り出し、ペンで何かを書き込み、言った。

「彼の妹・・・結構面白い情獣を生み出しそうだ。馬を動かすには人参をぶら下げる。 

 彼の人参は妹さんだよね」

「イラ君は頭がいいからね。イラ君がそう思うならそうなんじゃない。にしても楽しみだよー。

 どんな楽しいを持ってきてくれるのかがさー」銀髪の男が屈託の無い笑顔で答える。

「あんまり期待しない方がいいよ。失敗した時、喪失感がある」

「喪失感も何もかも俺が楽しいものに作り変える日がくる。だから気にしないでね」

そう言い、銀髪の男が冷たい風が流れると同時に消えた。








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