第4段落 楽しいこと
私達がやって来たことに気が付いた先輩2人がこちらに来て、
「部活動見学?まだ先生は職員会議で来ていないけど、ゆっくり見ていってね。先生が来たら、体験もできると思
うけど、どうする?」と聞いてきた。
「してみたいです」遥ちゃんが真剣な表情で言う。さっきまで薫ちゃんとしょうもない会話をして、ムキになっていたとは思えない。
「部員は何人いるんですか?」そして薫ちゃんが質問する。
先輩が視線を上にそらして考えてから答える。
「8人だよ。2、3年合わせて。2年生が4人、3年生が4人だよ」
「そうなんですね。教えてくれてありがとうございます」
もう1人の先輩はさっきから、佳奈ちゃんの方をジロジロ見ている。どうかしたのだろうか?
「あ、先生来たみたい。もし良ければ、体験してみる?」
「はい」薫ちゃんと遥ちゃんがやる気のある返事をした。
そして私もつられて返事をした。せっかく来たので、やってみたいと思ったからなのだろうか?
私はテニスのことを何も知らないし、部活動に入ることもできないのに、、、
そんな事を考えていても仕方がない。何でも全力で楽しむそれが私のモットーなんだから、全力で楽しむ。
楽しんでいる私はかなり可愛いいんだから。そんな事を言い聞かせて、マイワールドから戻ってくると、3人は先輩と一緒にテニスコートに入ろうとしていた。
「ちょっと待って」そう言いながら、みんなの後を追う。
「何で置いてくの。ひどいよ」
「いや、何か考え事してるっぽかったからさ、そっとしといた方が良いかなって」
今は冷静な遥ちゃんにそんなことを言われるだなんて。
「佳奈ちゃん、私そんなに話しかけづらかった?」
「私は先輩のプレーを真剣に見ている結衣ちゃん凄いなって思って・・・・・多分二人もそう思ったんだと思う」
ごめんなさい。自分のこと可愛いなんて考えていました。こんな素晴らしい解釈をしてくれて・・・
私だったら何ボケっと突っ立っているのとか思ちゃってる所です。
佳奈ちゃんまじ天使。
まず、先輩たちがラケットの使い方を1体1でを教えてくれることになった。
私に教えてくれる先輩はキャプテンだと思う。
「ラケットの握り方は人差し指を掛けるような感じで・・・えっ、あってるよね?」
「いや、分からないですよ」
「そうだよね。この部活はそんなにガチじゃないからさ。キャプテンだって押し付け合いだったし」
この先輩はキャプテンを押し付けられたのか。お人好しそうだもんなぁ。
「先輩は優しいんですね。私、ここに来るまで先輩が怖い人ばかりだったら嫌だなって思ってたんです」
「そうだったんだ。この部活に怖い人はいないから大丈夫だよ。私はさぁ、運動がもとから得意じゃなくて
運動部に入るつもりはなかったんだ。でも、初めてこの柔らかいボールを握って、ラケットを振った時に
これだって感じがして・・・
ミニゲームをした時に負けたけど、ラケットにボールが当たっただけなのに楽しくて・・・」
「本当に部活が好きなんですね」
「分かってくれる?」
「先輩の楽しそうな顔を見てればわかりますよ」
「キャプテーン、ミニゲームしよー」
「分かったー。今からミニゲームするらしいから。コートに入ろう」
「はい」
試合は10点先取。審判は先輩がしてくれる。ジャンケン負け同士で私は佳奈ちゃんと対戦することになった。
「さぁ、決着をつけようじゃん、かおるん」
「遥には絶対負けないんだから」
「二人とも経験者なんでしょ?」「どっちが勝つかな。と言うかガチすぎ」
先輩たちがそんな話をしているのをあの二人には聞こえていないんだろうな。
「1ゲームマッチプレイボール」
遥ちゃんの上サーブが薫ちゃんを襲う。薫ちゃんはそれを返す。
ボールはキレイな弧を描き、ラインギリギリに着地する。遥ちゃんはボールを高く打ち上げる。
薫ちゃん側のネットの近くにボールが落ちようとする。薫ちゃんは素早くボールが落ちる地点まで移動して
巧みに軽くラケットの面に当てボールを遥ちゃん側のネットのそばに落とす。
「やったー」
「それは無いっしょかおるん」
「遥はパワーはあるけど、スピードがないからね。後衛やってた私の方がこのゲームでは有利」
「ムキっー」
その後、薫ちゃんが遥ちゃんを走らせまくって薫ちゃんが勝った。
次は私達の番だ。
「お願いします。結衣ちゃん」
「こちらこそ」
心なしか佳奈ちゃんがワクワクしているように感じられた。
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