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第一段落 入学式は友達レベル0

やってしまった。私、稲荷山結衣は中学受験に落ちた。私の家は人の感情から生まれる生命体「情獣」を狩る名門一族。小学校は私立で、代々私の家がお世話になっていた。中学校も代々お世話になっているところがあり、そこに行く予定だった。そんなに難しい所でもない。蒼斗兄だって、父親だって、親戚の人だって受かるだろうと思っていた。しかし、落ちた。あの学校の制服可愛かったのに。

そんな思いを抱きながら、今まさに入学式を迎えようとしていた。入学式の整列の確認のため、生徒は武道館に集められている。周りを見ている感じ、小学校はみんな同じだったっぽい。

「何組だろうね?」「先生誰かな?」「久しぶり」「腹へった」「髪きったねぇ」

などの会話が耳には入ってくるたびに、私は友達作りをイチからしなければいけないと思わされる。

そんな事を考えていると、イカついゴツい先生が話し始めた。

「もうすぐ、体育館に移動します。みんな緊張してる?この式が初めてみんなでやる一つ目の行事となるわけ

 だが、楽しんでいきましょう」

見た目と違いフランクな喋り方に驚いた。優しい先生っぽい。そんな事を考えていると、後ろから、

「あの先生優しいんだよ」と女の子が話しかけてきた。

「へぇ、そうなんだ。担当教科はなんなの?」

「国語。お姉ちゃんもあの先生に教えてもらっていたんだ」

「国語?めっちゃ意外なんだけど。絶対体育だと思ったわ」 「起立」

そんな会話をしていると、周りのみんなが立ち上がり、急いで私も立ち上がった。私に話しかけてくれた子も急いで立ち上がったみたいだ。入学式から先生に目をつけられたくない。それはみんな同じ思いだ。

まぁ、小学校も5年生あたりから宿題を出さなくなって、おかっぱ出っ歯の牧尾園先生に怒られたっけ。

そんな事を考えながら、体育館へ向かった。

式は無事に終わった。校長先生は優しそうで話も短かったが、その次のPTA会長ときたら、せっかくの校長先生のファインプレーを台無しにするだけでなく、一月は行く、二月は去る、三月は逃げるとか謎な事を言うし、舞台から降りようとする時に祝辞の紙を落として、踏んだことに気が付かず、席に戻るし、腰は痛いし、本当に最悪。

すると、父親の代わりに保護者代理で来ていた蒼斗兄が「あの看板の前で写真を撮らない?」と言ってきた。

「嫌だよ。みんな友達と撮ってるじゃん。まだ私友達できてないし」

「そんなことないよほら、今撮ろうとしている人見てみてよ」

蒼斗兄が指した先には一人の男子と、おばぁちゃんらしき人がいた。

「嫌だよ、撮りたくないよばぁーちゃん」

「せっかく並んだんだから、撮ろうよ」

「いや、僕がトイレに言っている間に勝手に並んでたのはばぁーちゃんじゃん。一緒に撮るなんてごめんだから」

「じゃぁ、友達連れてきたら?」

「えっ?」

「この間、一緒にゲームしたとか、本の感想を言い合ったり、ライブを見たりしたんでしょ?」

それ全部ネットでできることじゃない?絶対ネッ友じゃん。

「いや、それはあの、今日は体調不良で欠席だよ」

「えーこの間会わせてくれる?って聞いたら、わかった、わかったって言ってたから楽しみにしてたのに。残念」

うわ公開処刑じゃん。かわいそう。そんな事を思っていたら、私の視界に20代男性が割り込んで来た。

「僕達もちょうど撮りたいと思ってたんですけど、もし良ければ、一緒に撮りませんか?」

えっ?

「本当ですか?朔弥、一緒に撮ろう」

本当にうざくて、余計なことしかしないどうしようもない兄だ。今日もあいつの準備が遅くて、遅刻しそうだった

というのに。向こうの男子も同じ気持ちだろう。印刷の悪い新聞の顔写真みたいな目をしている。

どうせ一緒に撮るなら、イケメンがよかったのにー。一緒に撮るのは、

「はいチーズ」『はい、坊主』 カシャッ。私の顔はクシャァ。 

そんな様子を電波塔で不敵な笑顔を浮かべながら眺めている者がいた。



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