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溺愛無用! 今度やったらぶっ飛ばす

作者: 村雨 霖

「食事中に膝に乗せてアーン、だと?

バカか! 幼女扱いが好きなのか? ロリなのか!?


違う違う! 今はレタスの口なんだって!

いちいち肉ばっかりぶち込むな!

あと、一口がデカすぎる!

喉に詰めるつもりか?

好きなものを、好きな量で、好きなように食わせろ!


馬車の中で膝乗せ?

下が凸凹して疲れるし、ゆらゆら揺れっぱなしで馬車酔いするっつーの!

『キミは身体が弱いから……』じゃねえ!

元々乗り物酔いしない体質だったのに!

安定した座席に普通に座らせろ!


愛称で呼べ?

貴様、ここをどこだと思ってる?

陛下の謁見の間だぞ!?

不敬にも程があるだろ!


ざけんな! ざけんな!


政略結婚だから、散々我慢してきたけど、もう限界!

婚約解消して欲しい!


それがダメなら慰謝料払ってでも婚約破棄したい!

自由を!

私に自由をくれ!」






王宮の医務室の寝台で叫び、のたうち回っているのは、フリス伯爵令嬢リゼル。

まだまだ暴走が続く彼女に寄り添うのは、その婚約者、ラルダン侯爵令息レスターだ。


リゼルはその美貌と高潔さ、完璧なマナーで『社交界の白い薔薇』と謳われた令嬢。

レスターも氷のような、研ぎ澄まされた美貌を持った令息だった。

彼は婚約者を溺愛し、惜しみなく愛情を注いでいたと評判ではあったが……


溜息をひとつ吐いた医師の隣には、怒りで顔を赤く染めたフリス伯爵。

何度引っぺがしても、レスターが娘から離れないのだ。

慌てた様子で医務室にやってきた宰相が、伯爵に告げた。


「先ほど賜った陛下からの王命です。

ラルダン侯爵令息側有責での、婚約破棄を認めます」


「そんな!」


振り返ると同時に立ち上がるレスター。


「リゼルは私と腹を割って話をしてくれなかったのです。

常に壁を一枚隔てたような感覚がありました。

私は彼女の全てを知りたくて……」


「で、自白剤を盛った、と?」

「王命は覆りませんぞ」


伯爵と宰相の言葉が被った。

「今度やったらぶっ飛ばす」というセリフは後々、次の婚約者を探す際に、レスターの父親が息子に放つことになると思います。



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