「タイムリミット」
椿姫 菜白、彼女は私たちのクラスの委員長だった。そして瓦礫の中から見つかった生徒のひとりでもあった。
ーーー
「菜白~!!次の移動教室…どうする?」
紗倉が菜白に抱きついてそう言った。
「あまりひっつきすぎないでください紗倉さん。」
「あ~、ごめんごめん笑」
笑いながら謝る紗倉は、渋々菜白から距離をとる。
「全く…紗倉さんはもう少し部をわきまえて下さい。それと…紫乃さん、制服のネクタイはきちんとしてください。お見苦しいですよ。」
菜白は、目ざとくも私がネクタイを外している事も指摘した。
「あ、ゴメン…つい暑くてさ、外してたわ」
「まっ…最近の秋は暑いですから、しょうがないですね…」
菜白は呆れたように言った。
ドサッ…
視界の端で何かが倒れるような音がした。
「紗倉!!ちょっとアンタしっかり!!」
先ほどまで菜白の後ろにいたはずの紗倉が廊下の床に倒れていたのだ。
「あ、ゴメン…何だか朝から熱っぽくて…心配させてごめんね紫乃…」
紗倉の額を触ると、少し熱があった。私は急いで菜白と一緒に紗倉を抱えて、保健室へと向かった。いつも保健室にいる養護教諭は不在だったため、菜白が職員室に養護教諭を探しに行った。そして私は紗倉の肩を持って出入口手前のベッドに座らせた。
「あは…ホント…ごめんね紫乃」
紗倉は、元気なさげな顔を上げて私に謝った。
「そんな事はいいから、寝てて紗倉」
「ありがとう…紫乃。…あとでアイス奢るよ」
ベッドにゆっくりと横たわった紗倉は、そういうとスっと眠りに落ちた。
私は布団を優しくかけて、菜白が帰ってくるのを待った。それからしばらくして、菜白が養護教諭と担任を連れて戻ってきた。
その後、私と菜白はその場をあとにして、移動先の教室に向かった。
次の授業のあと、担任から紗倉が早退したことを知らされた。私は放課後、菜白と共に、紗倉の家へと向かった。
ーーー
私はモズの高鳴きで目が覚めた。
横には、相も変わらずぐっすりと眠る紗倉が居た。
「紗倉…アンタの事は…私がどうにかするから…」
私は優しく、紗倉の顔にかかった髪の毛をかき分けた。
すると紗倉がうっすらと目を開けた。
「あれ…紫乃?…どうしたの?」
紗倉はゆっくりと言った。
「ううん、懐かしい夢を見てて、ついアンタの事が心配になって、顔を見てただけよ」
私は顔を逸らして、ウソをつきながら、眠そうな紗倉にそう伝えた。
「私は大丈夫だよ。心配してくれてありがとう紫乃…怖かったんだね、大丈夫だよ。」
紗倉は重い身体を起こし、私に抱きつき目を見て言った。
「うん…こわかった…」
モズが窓の近くを飛んで行った。
まだ残暑を感じる秋風が、窓の隙間から私たちの頬を撫で下ろす。
「紗倉、今日は出かけない?」
「うん…行こう紫乃」