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現実世界

【短編】パヴェ・ド・ショコラ

作者: 高熱バジル

全ては一昨年、友人の「チョコに纏わる同人誌を出そう!」という一声から始まり、そうしてバレンタインに向けて書き始めたのが、この甘酸っぱい幼馴染同士の恋の物語です。


文字制限があったので何度も推敲を重ねて泣く泣く削った部分もあり、駆け足感が否めないのですが、大好きなチョコ「パヴェ・ド・ショコラ」をキーアイテムに使っています。

学生時代特有の甘くてほろ苦い、少し懐かしさも漂うお話です。

楽しんで頂けたら、幸いです。




 千尋は、教室で一人嘆いていた。


「何故に私には料理の才能がないのか」


 スマホが振動し、液晶に目を落として溜息を吐く。幼馴染の涼からだ。


『今日何時に来んの?』

『そろそろ行く。味噌汁くらいは作るよ』

『てかお前味噌汁しか作れねぇじゃん』


 いつものやり取りだ。千尋はスマホを制服のポケットにしまうと、荷物を纏めて教室を出た。


「あれ、千尋ちゃん、今帰り?」


 振り向くと、廊下で色素の薄い美少年が微笑んでいた。


「真田先輩は部活ですか?」

「そ。今日はクッキー焼いた。千尋ちゃんにもお裾分けしようと思って」


 真田は所謂料理男子だ。綺麗な見た目も相まって一部の女子に人気があるが、当の本人は黄色い声援には目もくれず、料理に夢中だ。

 千尋が一年の始めに真田と委員会で知り合ってから、何かと良くしてくれている。


「やった! ありがとうございます。先輩のお菓子、本当美味しいですよね」

「ふふ、良かった。千尋ちゃんが喜んで食べてくれるから、作り甲斐があるんだ」

「先輩だったら、チョコも上手に作れるんだろうなあ」


 そろそろ、あの季節がやって来る。

 そう、千尋のように年頃の女子にとって、毎年戦争のような、バレンタイン・デーが。


「チョコ? ああ、バレンタイン?」

「うん、先輩なら、何でも作れちゃうんだろうなって」


 焼きたてのクッキーを早速貰ってかじりながら、溜息を吐く。


「確かに毎年、友チョコは作ってるね」

「私にも作れたらなぁ」

「作らないの?」

「去年は受験だったので買ったんですけど、そろそろチョコくらい作れるようになりたくて」

「そうなんだ。まあこの時期は、女の子はみんな大変そうだよね」

「男子もホワイトデーは大変そうですよね。お返しが。先輩毎年いっぱい貰ってるみたいですし」


 千尋がニヤニヤと真田を見つめると、白皙の美少年がうっすらと頬を染めた。


「……で? 千尋ちゃん、チョコ作るの?」

「作りたいんですけど自信が……あ。そうか、真田先輩! チョコの作り方教えて下さい」

「え? 僕が?」

「ダメですか?」

「んー、良いけど、どんなの作りたいの?」


 千尋はそう言われても、何を作ったら良いのか皆目わからなかった。

 真田がスマホを取り出し、レシピアプリで検索し、画面を見せて来る。


「生チョコとかどう? これランキング上位で人気みたいだけど」

「生チョコ⁉︎ あれって自分で作れるんですか?」

「ん、ざっと見た感じ……材料も少ないし簡単そう。これで良ければ、教えてあげるよ」

「ありがとうございます!」

「じゃあ今度の週末、僕の家か君の家で練習する?」

「そっか、練習しないとですよね」

「え、ああ。うん、千尋ちゃんは……」


 真田が言い淀み、千尋は察した。

 千尋の不器用さは真田にもバレていて、家庭科の授業で作った焦げ焦げクッキーを委員会でおやつ替わりに真田にも勧めたところ、一口かじった真田は、目を丸くしてから困ったように笑い、『個性的な歯ごたえだね』と言って、そして盛大に咽たのだった。

 土下座する勢いで謝罪すると、真田は苦笑しながらも、千尋の失敗作をその後も試食してくれる間柄になった。

 画面の作り方を見ても、さっぱりわからない。日本語は理解できるのに、経験がないので想像がつかないのだ。

 料理経験者の真田がいれば鬼に金棒とばかりに、週末の約束をして、校門まで一緒に歩いてから別れた。

 自宅に着くと部屋着に着替え、隣家に行く。呼び鈴を鳴らさずに鍵の開いた玄関ドアから勝手に上がり込むと、リビングに幼馴染がソファに座ってスマホを見ていた。


「おう、遅かったな」

「ちょっと先輩と話し込んでた」

「先輩?」

「委員会で同じ真田先輩」

「あー、あいつか」

「あいつって何よ」

「別に。じゃ、飯にしようぜ。味噌汁作るんだろ」

「あ、うん。具は何が良い?」

「じゃが芋とわかめ。わかめは塩抜きしておいたぞ」

「了解。あんたその組み合わせ、本当好きだよね」


 千尋は慣れた動作で台所に移動しエプロンを借りて着けながら、冷蔵庫から味噌やらを取り出す。勝手知ったる何とやらだ。


「じゃが芋がほろほろになるのが良いんだよな」

「今日のおかずも美味しそう。流石おばさん」

「そっちのお浸しは俺が作った」

「え! また作れるもの増えてんじゃん」

「茹でただけだぞ?」

「はいはい。ったく料理男子ばっかり」

「料理男子?」

「あー、真田先輩、料理部だから」

「へぇ」

「今度、お菓子作り教えて貰うんだ」

「ふーん」


 涼は私が他の男子と一緒でも、何も思わないんだろうなぁ。そんな気がして、千尋の胸をチクリと刺す。

 千尋はそれ以上は考えないようにして、味噌汁を作りおかずを温め返すと、ご飯をよそって席に着いた。

 涼は中学から背が伸び始めた。バスケ部だからだろうか、高校に入ってからも更に伸び、今では千尋と30センチの差がある。

 大柄になり、食べる量も半端なく、涼の母親が『食費が嵩む』と悲鳴を上げていたと耳にした。


「で、何でそいつに教わんの?」

「え?」


 ぼーっと考えていた千尋に、涼が溜息を吐いた。


「出たよ。何でそいつに教わんの?」

「ああ、ちょっと作りたい物があって。先輩得意そうだから」

「ふーん」

「まあ良いじゃん。食べよ」

「もう食い終わる」

「はやっ」


 目をやれば、山盛りだった茶碗は既に空で、涼の皿のおかずも食べ尽くされた後だった。


「足りた? お代わりは? 私のおかず要る?」

「貰う」


 茶碗を受け取り、キッチンの炊飯器から大盛によそって、カウンター越しに涼に渡す。すると涼はすかさず汁椀を渡して来て、味噌汁のお代わりも要求した。


「本当、良く食べるよね」

「また背伸びた」

「マジか。何センチ?」

「180」

「でか」

「バスケだとそうでもねぇよ」


 昔は私より小さかったのになぁ。千尋は少し寂しく思いながら夕食を終え、片付けをして、『また明日ね』と涼に言って自宅へ帰った。




◇◇◇




 週末、最寄り駅で真田と待ち合わせをして、スーパーでチョコレートの材料を買った。

 スマホの液晶に映るレシピサイトの材料リストを見ながら、板チョコや生クリーム、ココアパウダーを次々と買い物かごに入れて行く。


「これくらいでいいかな」

「先輩、私失敗するかもなのでちょっと多めに買おうかと」

「ふふ、千尋ちゃんらしいね」

「だってどうせまたスーパーに来る羽目になりますよ」

「変な自信」


 くつくつと笑う真田をよそに、千尋は生クリームをもう一つかごに入れた。余ったら余ったで、母親が使うだろう。

 二人で食べる菓子もカゴに入れ、レジに持って行く。財布を出そうとした真田を慌てて手で制止して、自分の財布から支払いを済ませるとスーパーを後にした。

 自宅前まで来た時、隣家の玄関が開いて、涼と目が合った。

 涼は千尋と真田を交互に見比べると、無表情のまま真田にぺこりと頭を下げて、出掛けて行く。


「涼、部活?」

「ああ」

「帰り何時頃?」

「遅くなる。飯は要らねぇ」

「そう。頑張って」


 後ろ姿に声を掛けたが、涼は聞こえなかったのか、そのまま行ってしまった。


「一年の草壁だっけ」

「はい、幼馴染です」

「へぇ。背高いね」

「バスケ部で」

「付き合ってるの?」

「えっ」

「違うの?」

「ち、違いますよ。何ですか急に」

「ふふ、お邪魔します」


 真田は微笑しながら後を着いて来る。手洗いを済ませた後キッチンへ案内すると、真田は持参した自前のエプロンを着けて、エコバッグの中身を取り出した。千尋も慌てて母親のエプロンを着けると、使う分の生クリームをカウンターに残し、残りを冷蔵庫へしまう。


「前もって言っておくけど、自己流だからね?」

「はい、先輩の料理部としての経験が頼りなんで。今日は宜しくです」


 真田は自分のスマホをスマホリングでキッチンカウンターに立たせ、レシピサイトの生チョコの作り方を見ている。


「チョコは湯煎で溶かすから、鍋とボウルとヘラが要るね」


 準備を終えると早速真田が誘導し、レシピ通りに作業を進めた。


「チョコ、溶けたね。そしたら生クリームを足して……そ、ゆっくり満遍なくヘラで搔き回す」

「何か、割と簡単だった」

「うん、クリームの量とかちゃんと分量守ればレシピ通りのが出来る筈」

「バットに入れたら冷蔵庫で冷やして固めるんですよね」

「そ。仕上げにココアパウダーつけて完了」


 リビングで菓子とお茶を出しつつチョコが固まるのを待ち、固まったところで冷蔵庫から取り出し、包丁でキューブ状になるように切り分ける。ココアパウダーを振るい、一つ一つをお化粧して行った。

 仕上がった物を前に、味見の為二人で一つずつ摘まんで口に運ぶ。柔らかく滑らかで、とろけるような舌触りだ。千尋は真田と顔を見合わせた。


「美味しい!」

「成功だね」


 思わず真田と右手をバチンと叩き合う。


「失敗しなかったのは先輩がそばで見ててくれたからです、ありがとうです!」

「僕、今日殆ど何もしてない気がするけど」


 真田は眉尻を下げて笑うが、千尋は首を左右に勢い良く振って鼻息荒く答えた。


「いえ! こんなにスムーズに進められたのは先輩のお陰です! さっきみたいな感じで一人で練習してみます!」

「成功すると良いね」

「はい、失敗しないように気を付けます!」


 そろそろ帰ると言う真田に、千尋はお世話になっておいて何もお返しが出来なかった事を言うが、真田は取り合わず、せめてと作ったばかりの生チョコを半分ほど土産に持たせた。駅まで送ると言うのにそれも固辞される。


「家帰ったら食べるね。今日は楽しかった。また月曜学校で」


 真田は手を振ると、路地を颯爽と帰って行った。




◇◇◇




 あれから、バレンタイン直前まで千尋は練習しまくった。

 週末毎に生チョコが生成されて行く。父親と弟は試食をさせられ過ぎて、近頃はうんざりしている。どうにか二人を拝み倒して試食を続けて貰い、弟にダークチョコの方が甘過ぎないのではとアドバイスを貰った。

 千尋は最終調整を行う為、翌日スーパーで材料を買う事にし、ダークチョコ版もぶっつけ本番で作る事にした。

 この頃涼は部活が忙しいらしく、夕食を要らないと言う日が増えて、そのメッセージを見る度千尋の心はざわついていた。

 学校で会ってもすぐに目を逸らされるし、登下校も別々の日が殆どで、メッセージのやり取りも他愛のない物は減っているのが気になっていた。

 翌朝、買い物を済ませて最終調整を行い、ミルクとダークチョコ版の二つを作った。真田に最初に教わったのが功を成したようで、ここまで失敗知らずなのは奇跡的である。

 明日の月曜はいよいよバレンタイン・デーだ。

 千尋は、この機に涼に気持ちを伝える事を決めた。バレンタインに告白と言うのは些かベタではあるが、中学の頃から何度も告白しようとしながら挫折して来た。近頃の謎の焦燥感も手伝い、ここらで真面目に伝えたいと遂に決心したのである。 

 翌朝、高鳴る胸を落ち着かせながら、千尋は綺麗にリボン掛けした本命チョコを鞄に入れて登校した。

 休み時間、放課後など、渡すタイミングを見計らっていたが、涼は席を外していたり友人と談笑していたりとチャンスを逃し、未だ渡せていない。涼の部活後を狙い、正門前で彼を待つ事にした。

 赤い鼻を擦り、白い息を吐きながら待っていると、校庭を歩いて来た真田に話し掛けられた。ついでのように友チョコを渡していると、後ろから涼が現れた。涼は二人を一瞥すると、ばつの悪そうな顔で去って行く。

 慌てて真田に別れを告げ、千尋は涼を追いかけた。


「待って! 一緒に帰ろ」

「んだよ、先輩と帰るんじゃねぇの?」

「え? 先輩逆方向だし」

「ふーん」

「あ、あのさ……」

「俺コンビニ寄ってくわ」

「何で? 家帰ったら夕食じゃん」

「先帰ってろよ」

「……わかった」


 少し不機嫌そうな涼に、千尋は肩を落とし、先に涼の家へと向かった。

 夕食を作っていると、涼が帰宅した。二人で静かに夕食を食べる。


「さっきの」

「え?」


 千尋が思わず顔をあげると、不機嫌そうな涼の顔が向かいに見えた。


「真田にチョコ渡したのか?」

「あ、うん。お世話になったからね」

「……へぇ」

「涼は誰かに貰った?」

「……まあな」

「そ、そうなんだ」


 再び沈黙が訪れる。

 受け取ったチョコの中には、本命もあったのではないだろうか。自分より上手で、凝ったチョコを渡した子がいてもおかしくない。

 千尋は急激に冷えて行く感覚を覚えながら食事を終えた。

 洗い物をしていると、隣で涼が食器を拭いて行く。


「あのさ……」


 千尋が歯切れ悪く話しかけると、涼は黙って手を動かしたまま、こちらを向いた。


「チョコ作ったんだけど……食べる?」

「食う」


 千尋は洗い物を終えると、鞄から今日一日持ち歩いていた生チョコを取り出し、涼に渡した。

 涼は無言で受け取り、すかさず箱のリボンを解いて中身を見た。


「へぇ……うまそうじゃん」

『あいつに教わったってのがムカつくけど』


 その言葉は小さすぎて、千尋の耳には届かなかった。

 一つ摘まんで、口に入れると、涼が片眉を上げた。


「あんま甘くなくてうまいな」

「本当? 良かった!」

「うん、これなら全部食べれそう」

「そんな一遍に食べたら良くないよ。良かったら、まだ家にもあるからおじさんとか──」

「駄目だ」

「え?」

「これは俺が一人で食べる」

「甘い物好きだったっけ?」

「……お前さ」

「うん?」

「真田と付き合ってんの?」

「は?」


 みるみる内に顔どころか耳まで真っ赤にした千尋を見て、涼は眉根を寄せた。


「何で赤くなんの? 図星?」

「ち、違っ、びっくりしただけ。んわけないじゃん」

「家まで招く程仲良い癖に」

「だからあれはチョコの作り方教えて貰ってただけで」

「二人きりで?」


 涼は生チョコを食べるのをやめ、リビングの端に置いてあった鞄の中から、コンビニの袋を取り出して千尋に押し付けるように渡す。


「ん」

「何これ?」

「……買った」

「え?」


 ビニール袋の中から、某有名店とコラボしたコンビニバージョンのチョコレートの箱が出て来た。


「くれるの?」

「と、友チョコって男からもやるらしいじゃん」


 涼の顔を見ると、珍しく目が泳いでいる。


「友チョコ……」


 千尋の胸はチクリと痛んだ。やっぱ友達なのかな。


「私のは友チョコじゃないんだけど」


 千尋が言うと、涼の泳いでいた目が千尋に戻り、見開かれた。


「何? 義理チョコ?」


 そう言われて千尋は瞠目した。


「さっきもあいつに同じような箱渡してたもんな」

「だからあれは友チョコだってば」

「別にどっちでも良い」

「何で怒ってるの?」

「怒ってねぇし」

「ねぇ、まだ話の途中なんだけど」

「何だよっ」


 珍しく声を荒げた涼に、千尋はビクリと肩を揺らして顔を見た。


「涼が何で怒ってるかわからない」

「寧ろ何でわかんないわけ?」

「ええ……?」

「あークソッ」


 遂に悪態まで吐き始めた幼馴染を呆然と見つつ、頭を必死で整理する。


「そのチョコ、涼の為に作ったの」

「は?」

「……だから、その……ちゃんと伝えたくて」

「何を?」

「わ、私達、幼馴染だけど、私は……」


 そこまで言うと、涼がハッとした顔で生チョコの箱を見てから千尋に向き直り、千尋の口に手を当てて制止した。


「言うな!」


 千尋は絶句した。

 やっぱり言わない方が良かった? 幼馴染の関係を壊す事になったのでは?

 ぐるぐると頭の中を駆け巡り、半泣きになりながら俯いていると、涼が口を開いた。


「俺が言うから。……好きだ」


 一瞬自分の耳が信じられなくて、千尋は恐る恐る涼の顔を見上げた。

 目の前には耳まで赤く染めた涼の顔があった。


「え?」

「あー! もう言わねぇ」

「やだ! もう一回言って」


 制服の端を掴み、千尋が詰め寄ると、涼が途端にしどろもどろになる。


「ちょ、おま、伸びるだろ!」

「何て言ったの?」

「聞こえたんだろ?」

「ちゃんと聞きたい」

「ぐっ。……きだ」

「え? 何て?」

「だからっ好きだって言ったんだよ!」


 ボン! と音が鳴ったかと思うくらい、千尋の顔が一気に赤みを帯びる。涼は顔を片手で覆い隠している。暫しの沈黙の後、千尋が恐る恐る聞いた。


「……本当に?」

「こんな事で、嘘吐けるかよ」

「え、いつから?」

「るせぇな」

「だって……」

「てか、返事は?」

「もう気付いてるんでしょ? だから先に言ってくれたんでしょ?」

「そ、そうだけど! 俺だってちゃんと聞きてぇし」


 目を逸らしながらも、チラチラと千尋を見ている。千尋は笑顔になった。


「好き! 私も好き!」

「おま! 声でかい」

「良いじゃん、誰もいないし」

「は? そういう事言うんじゃねぇよ!」

「え?」


 『は~~~』という涼の盛大な溜息の意味を千尋が知るのは、二人が付き合い始めてもっと後になってからである。




〈了〉

お読み頂きありがとうございました。

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