ある軍師の絶望
俺の指示で人が死ぬ。
戦場では当たり前だ、老兵、新兵、将軍関係なく死ぬ、俺が戦えと命じたら、
どんなに怖くても、死ぬのが嫌でも、人を殺したくなくても、戦うしかない、それが戦争だから、
そうしないと自分の大切なものを守れない。
俺の指示で何千、何万の命が散る、
そのおかげで何千万の民の命が守れるのなら、安いのかもしれない
しかし、何年経っても、人が死ぬのには慣れない、いや、絶対に慣れてはならない。
多くの軍師は、
それはお前が弱いからと切り捨てることもできるだろう、しかし、俺には無理だ。
俺の指示で、誰かが見ず知らずの誰かの命を狩る。
その人には守るべき大切な人がいたかもしれない、帰る場所があった。
その誰かの死を悼む人が必ずいる。
敵味方関係なく、
戦場跡には野犬が人の骸を漁る、いつしか骨もなくなり、防具や武器だけが錆びるのを待つのみ。それも、野盗が盗んでいく、
そんな光景を長年見てきた、
俺は、俺の命が惜しい、
俺は大勢の部下を死地に送り、帰らぬ人にさせてしまった、
俺の言っていることは軍師失格だろうな、
笑うなら笑ってくれ、
しかし、笑えるか、お前に。
実際に体験もしたことのない奴にそんな事ができるか。
俺の言っていることは軍師失格だ、しかし、人間としては間違っていない、自分の命が惜しい、それの何が間違いだ、
言えるなら言ってみろ、
まぁ、そんな事はどうでもいい、他人の言っているつまんない事は俺は信じない。
全員、自分の命が惜しくない奴はいない、
だが、守るべきものがある、愛する人、子供、家族、祖国、
それを守るためならば命すら捨てられる、
それは、正解なのだろうか、俺にはわからない。
戦争を止めるためには戦争をしなければならない
何という、皮肉だろうか、血を流さないと血が止まらない、
いつか、平和が訪れるであろうか、
・・・いや、そんな日はないのだろうな。
それを歴史が証明している。
争いのない平和な世の中よりも、
人が殺し合いをしている方がずっとずっと長い、
たとえ、少しの平和が訪れようと、すぐに崩れ去る。
そして。また新たな英雄が生まれ、偽りの平和を作り崩れ去る、




