224 神玉の欠片
「……ここだな」
翌日。
俺はさっそく、クレアの手紙に書かれてあったSランクダンジョンにやってきていた。
そのSランクダンジョンが存在するのは、都心からほど近い海上に浮かぶ小さな島の上――否、島そのものがダンジョン本体とのことだった。
数年前にそのダンジョンが出現して以降、観測される魔力の膨大さとその危険性から、一般には存在を秘匿され、普段は結界で姿を隠されている。
結界内への入場と攻略を許されるのは、Sランクの資格を持つ冒険者のみ。
――なのだが、今回は【宵月】が用意してくれた特殊なボートを利用し、俺は一人でその島までやってきていた。
「クレアの協力がなければ来れなかったわけだし、感謝しないとな」
Sランクダンジョンのスパンは全員で共有されるため、基本的にはSランク冒険者が順番に攻略している。
クレアの前の人物が攻略したのは昨日とのことであり、クレアの番が回ってくるのは一週間後。
本来であればその期間、スパンがあるせいで誰も攻略できないのだが――
「俺とクレアには、スパンなんて関係ない。この一週間、できる限り周回して強くなってやる」
決意を固めた俺はさっそくゲートをくぐり中に入る。
内部はダンジョン内とは思えないほど絢爛な様相をしており、まるで丁寧に築かれた古代遺跡のようだった。
「そういう意味じゃ、【隔絶の魔塔】や、カインと戦った空間がイメージ的に近いか……」
他のダンジョンにはない、異質な何かを感じる。
警戒しながら、俺は先に進んでいった。
まずはダンジョン内転移を利用し、階層のショートカットを行いたいところだが、今回に限ってはそうする必要はない。
何でもクレアの手紙いわく、このダンジョンは一本道となっており、道中に魔物も出現しない。
いるのはただ一体、このダンジョンを統べるボスのみ。
その後もしばらく歩を進めていると、俺はとうとうそこに辿り着いた。
一辺が数百メートルに達しようかというほどの巨大な空間。
そしてその中心に、ヤツはいた。
『グルルルルゥゥゥゥゥゥゥ!』
艶やかに輝く漆黒の鱗に覆われた堂々たる体躯。
まるで山を見上げているのかと錯覚するほどに巨大だった。
そこに存在するだけで重圧が辺り一面にかかり、一歩踏み出しただけでダンジョン全体が大きく振動する。
――この姿形をした存在を、俺はよく知っていた。
すなわち、竜。
翼こそ持たない地竜ではあるが、紛れもない魔物の王がそこに存在していた。
俺はすぐに鑑定を使用する。
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【■■■■■■】
・討伐推奨レベル:100000
・ダンジョンボス:神玉の欠片(エクストラダンジョン)
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名前は不明だが、レベルだけはしっかりと確認できた。
ただ、俺は少しだけ違和感を覚える。
「本当に10万かよ……」
同じレベルの魔物とは、これまでにもイフリート、ケルベロス、ジオ・イクシードと戦ってきている。
しかしそれらを上回る絶対的な圧のようなものを感じた。
それこそ、カインと対峙した時と近いだろうか。
アイツはレベルこそ10万に達していなかったであろうものの、イフリートを大きく上回る実力を有していた。
恐らくこの魔物も、レベル以上の力を有しているはずだ。
「かといって、引き下がる気はないけどな――無名剣」
格上喰いの長剣を呼び出し、俺は最強の魔物と対峙する。
「――いくぞ」
『グルァァァアアアアア!』
そしてとうとう、史上最難関のSランクダンジョン――【神玉の欠片】の攻略が幕を開けた。




