150 二組
翌日。
「んー、由衣先輩と零先輩はまだ来てないみたいだね」
「集合時間まではあと少しあるからな」
ショッピングモールにやってきた俺たちは、そんなやりとりをしつつ二人を待つ。
すると、
「あっ、華ちゃんに凛先輩! おはようございます!」
先にやってきたのは、明るい色の長髪を靡かせる少女――葛西 由衣だった。
ぱっちりと開かれた瞳には、周りを引き込むような力がある。
表情や服装も相まってか、女の子らしい可愛さが前面に出てきている印象だ。
「みんな、久しぶり」
続けてやってきたのは、肩まで伸びる髪が特徴的な少女――黒崎 零。
落ち着いた表情や声というのも関係してか、見た目だけなら可愛い系よりも綺麗系といった感じ。その辺りにいる通行人に訊いても同じように答えるだろう。
まあ、実際に話してみたら色々と抜けているところがあるし、子供っぽい面があることもよく知っているので、個人的には可愛い印象も強かったりするが……。
「二人に会ったのはこの前のギルド以来だな。元気にしてたか?」
「はい! 今日は凛先輩も来ると聞いてすごく嬉しかったです!」
「わたしもわたしも」
「そうか、それは何よりだ」
お世辞ではなく本当にそう言ってくれているようだったので、ちょっぴり安心。
「これで全員集まりましたね! さあ、行きましょうか!」
四人が集まったのを確認し、先頭を歩いていく華は、赤色のリボンで結ばれた黒髪のポニーテールを肩甲骨あたりまで垂らしていた。
どんどん前に突き進んでいく華に向けて俺は言う。
「華、そんな早足で歩いてたらはぐれるかもしれないぞ」
「大丈夫だよお兄ちゃん。今日はそんなに人もいないし、心配いらないよ!」
五分後、俺たちははぐれた。
「まさか本当にはぐれるとは」
「あはは、お店に気を取られて少し立ち止まってるうちに、二人ともいなくなっちゃいましたね」
取り残されたのは俺と由衣の二人。
まあ、華と零は我先にと進んでいくタイプだから、立ち止まる俺たちに気付けなかったんだろう。
「それにしても、今日は買い物というよりも集まるのが目的で、ウィンドウショッピングを楽しむって聞いてたんだけど。いきなり別行動になることなんてあるんだな」
「あはは、私もちょっと驚きです。普段友だちと遊びに行くときは、こんなことないですし」
由衣は頬をかきながら、困ったように言った。
社交的な由衣は友だちも多そうだし、こんな風に遊ぶ機会も多いんだろう。
それを言うと華も友だち自体は多いはずなんだが……あんまり遊びにいってる印象がないんだよな。
家事の一部を任せてしまっているから仕方ない部分はあると思うが、それを差し引いたとしてもだ。
昔から俺が家にいるときは、華もいることが多かった。
俺が冒険者になってから、どうなのか分からないけどな。
そして零に関しては……どうなんだろう。あまり人を寄せ付けないタイプなんじゃないかとは思っているが……ふっ、孤高を愛するという意味では俺と一緒だな。
って、そんなことはどうでもよくて。
「よし、それじゃ俺たちも行くか」
「えっ? 二人は待たなくていいんですか?」
「一応メッセージは送ったし、あとで合流はするつもりだけど、ただ待つのも時間の無駄だろ。せっかくだし二人で色々と見て回ろう」
そう提案すると、由衣は少しだけぽかーんとした表情を浮かべたあと、
「は、はい! ぜひお願いします!」
満面の笑みを浮かべて、そう答えるのだった。