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世界最速のレベルアップ ~無能スキル【ダンジョン内転移】が覚醒した結果、俺だけダンジョンのルールに縛られず最強になった~  作者: 八又ナガト
第三章 支配者と王

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145 ver2

 俺が冒険者を目指すようになった、初めてのきっかけ。


 およそ10年前。俺と華が一緒に出掛けていた時のことだ。

 近くで迷宮崩壊が発生し、大量の魔物が地上に現れるという事件があり、俺と華はそれに巻き込まれた。


 自分を遥かに上回る大きさの魔物に死を覚悟した次の瞬間――1人の冒険者が俺たちの前に現れて、魔物を一瞬で討伐してみせた。

 その背中に。その強さに。俺は憧れたのだ。

 今となってはもう当時の記憶はおぼろげで、その冒険者が誰だったのかさえ分からないままだけど。

 それでも、この胸に生じた熱い思いだけは覚えている。


 だから、もし自分が大人になった時、冒険者になることができたなら。

 彼のように強くなり、大切な誰かを守ることができる存在になりたいと思った。


 金を稼ぎたいだとか、無能と蔑んだ誰かを見返したいだとか、それらはあくまで後付けの理由でしかなくて。

 全てのきっかけは、そんなちっぽけな憧憬だった。



「……こんな感じかな」


 簡潔にだが、冒険者を目指した理由を語り終えた俺はそう切り上げた。

 多くの冒険者が地位、名誉、大金を求める中では少数派の――だけど、とりたてて珍しくもないよくある理由。


 それを聞き、彼女はどう思ったのだろうか。

 そんなことを思いながら恐る恐る様子をうかがうと、


「素敵だと思います」

「――――」


 クレアは優しい笑みを浮かべていた。

 想定していなかった表情に驚くとともに、俺はその美しさに目を奪われた。



「由衣さんや零さんから聞いたことがあります。二人ともあなたに助けられたことがあって、それを心から感謝していると。昨日の八神さんたちに関してもそうです。あなたはもう、立派に自身の目標を叶えられているんですね」

「……そうなのかな」

「ええ、きっと。願わくば、私はその末にあなたが――」



 そこでクレアは何かに気付いたように、はっと口を閉ざす。


「どうかしたのか?」

「い、いえ、なんでもありません。それよりも天音さん、飲み物があと少ししかありませんね。お代わりを頼みますか?」

「いや、大丈夫だ」


 そう言って、俺は冷たくなったミルクティーをごくりと飲み干す。

 クレアが俺を呼び出した用件はこれで終わりみたいだし、そろそろ解散する頃合いだろう。

 ただその前に、一つだけ訊きたいことがあった。


「こっちからも一つだけ質問いいか?」

「はい、なんでしょう?」

「クレアが冒険者になった理由を聞かせてほしい」


 クレアが俺に望んだように、俺もまた彼女が冒険者になった理由を聞きたいと思っていた。

 彼女の強さの一端を知れるかもしれないと思ったから。


 するとクレアは一瞬だけ大きく目を見開いた後、これまでの柔和な雰囲気から一転。

 大気が凍えるのではないかと思えるほど冷たい視線を俺に――否、ここではないどこかに向けて、桜色の唇を動かした。


「守ることです、全てを――だってそれが、私の使命ですから」

「……使命?」


 目標でも夢でもなく、使命と彼女は言った。

 それではまるで、その言葉が彼女自身のものではないようで――。


「クレア――」

「と、こんな感じでしょうか。天音さんの理由とそう大きくは変わりませんね」

「…………」


 問いを投げかけるタイミングをずらされ、呼び声だけが空気に霧散していく。

 先ほどまでの柔らかい雰囲気に戻ったはいいものの、それがまるで、これ以上踏み込んでほしくはないと主張しているように感じた。


 俺が言葉を止めたことで、二人の間に微妙な沈黙が流れる。

 そんな沈黙を破るように、クレアはおもむろに切り出した。


「天音さん、今日はお付き合いいただきありがとうございました。貴重なお話を聞くことができてよかったです。そろそろ店を出ましょうか」


 伝票を手に取り、立ち上がるクレア。

 どうしてだろう。その背中に、寂寥(せきりょう)のようなものを感じた。

 彼女を引き留めなければいけない気がした。


「待ってくれ、クレア」

「……はい?」


 振り返るクレア。呼び止めたはいいものの、何を言うべきかは分からない。

 永遠にも思える数瞬の思考の末――俺はその答えに辿り着いた。


「そう言えば今日の朝やってたけど、今度の放送でウルフんver2が登場するらしいぞ」

「……コーヒーのお代わりをお願いします」

「あっ、俺のもお願いします」


 それから一時間後、俺たちは解散した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 果たして主人公はクレアの心の氷を溶かすことができるのか
[良い点] 話の進みが凄く良くて飽きてくることなく見れるので毎回楽しみです。 [気になる点] 話が凄く面白いので書籍化されてもいいと思います! [一言] 僕としては、天音とクレアが結ばれたら嬉しいです…
[一言] あぁチョロインw
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