114 確信
「ここが宵月ギルドか……」
車から降りた俺の前にあるのは、巨大で立派な建物だった。
さすがは国内上位ギルドの本部なだけはある。
「天音さん、こちらです」
「ああ」
俺はクレアの案内に従い、建物の中に入る。
綺麗な廊下を2人で歩いていると、通りがかる人たちがクレアを見て話しかけてくる。
「クレアさん、おはようございます」
「あっ、クレアちゃんだ、おはよ~」
「はい、おはようございます」
見るに、宵月は上位ギルドにしては珍しく20代が多いようだ。
冒険者歴が長ければ長いほどレベルが増えるこの世界において、実力者は30代から40代であることが多いため、少しだけ驚いてしまう。
そんな彼らからクレアは気さくに話しかけれられていた。
「人気者なんだな」
「……嫌われてはいないと思いますが、どちらかと言えば私がギルドマスターの娘であることの方が大きいんだと思いますよ」
「そうだったのか、初耳だ」
会話をしつつ歩き続けていると、ようやくギルドマスター室に辿り着く。
クレアがノックをすると、中から声が返ってくる。
「入ってくれ」
「失礼します」
クレアの後を追い、俺も中に入る。
部屋の奥にはデスクに腰掛ける一人の男がいた。
「……ん?」
その男性にどこか見覚えがあった。
昔どこかで会ったことがあるのだろうか?
などと考えているうちにも、クレアと男は話し始める。
「言われた通り、天音さんを連れてきました。それから不知火ダンジョンで発生した迷宮崩壊についてですが」
「ああ、その件については協会から連絡をもらってるから報告は大丈夫だ。ご苦労だったな、クレア」
男はクレアを労った後、ようやく俺に視線を向けた。
「よく来てくれた、天音。俺はこのギルド【宵月】のギルドマスター、朝倉 大輔だ。実は以前にも一度お前を勧誘したことがあるんだが、覚えてるか?」
「以前にも勧誘……? あっ」
それでようやく思い出した。
俺がこの人に見覚えがある理由を。
一年前、俺がキング・オブ・ユニークを脱退した後、ダンジョン内転移の将来性を見込んでギルドに勧誘しにきた人がいた。
当時の俺は仲間というものに忌避感があったため、ほとんど話を聞くこともせずに断ったが、改めて思い返してみれば確かにこの人だった。
まさかスカウトではなくギルマス直々のお誘いだったとは、今さらながら驚いてしまう。
「それでは、私は先に失礼いたします」
クレアは俺を連れてくるという用事を済ませたからか、すぐに退出する。
こうして残されたのは、俺と朝倉の2人だけ。
「まあ立ち話もなんだ、そっちのソファーに座ってくれ」
「……はあ」
なんとなく気まずさを覚えるものの、彼の言う通り、来客用に備え付けられているソファーに座る。
すると朝倉は幾つかの資料を持って、向かいのソファーに腰掛けた。
「んじゃ、さっそくだが天音、うちのギルドに入るつもりは――」
「その前に、一つだけ質問をしてもいいですか?」
失礼であることは重々承知だが、俺は朝倉の発言を遮った。
彼は怒った素振りを見せることもなく、こくりと頷く。
「ああ、言ってみてくれ」
許可ももらったことなので、俺は絶対に訊かなければならないと思っていた質問を口に出す。
「なぜ俺を勧誘しようと? 以前のように俺のユニークスキルに将来性を感じたからですか?」
ここで頷いてくれたなら、少しだけ肩の荷が下りる。
だが朝倉は不敵な笑みを浮かべた後、至極当然といった風に告げた。
「半分は正解で、半分は不正解だ。お前のユニークスキルに価値を見出しているのは確かだが……将来性ではなく現時点で既に有能な力に覚醒したんじゃないかと俺は踏んでいる。いや、回りくどいのも面倒だからはっきりと言うか――天音、お前は自分の力を周囲に隠しているんじゃないか?」




