113 生じる疑問
突如として、不知火ダンジョンにて発生した迷宮崩壊。
それによってダンジョンの外に姿を現した討伐推奨レベル40000のサイクロプスを倒したのは、今俺の目の前にいる少女――朝倉クレアだった。
俺と同い年であるこの少女が、なぜそれほどの力を持っているのかは甚だ疑問。
しかし今に限っては、それ以上に気になることがあった。
自宅での食事中、たまに華が言っていた話を思い出す。
そう、その話とはつまり――
「まさかクレアが、隣町の朝倉さんとこのお子さんだったとは」
「? 確かに私の家は天音さんの住所から見たら隣町ですが、それがどうかしたのですか?」
「いや、なんでもない」
クレアの問いに対し、俺は首を左右に振った。
わざわざ本人にそのことを伝える必要はないだろう。
それにしても、まさか華の話が本当のことだったとは。
テキトーに作ったほら話だとばかり思っていた。
心の底からびっくりだ。
そのせいもあるのだろうか。
まだ出会ったばかりのクレアに、俺は不思議な親近感を抱くのだった。
サイクロプスの討伐後まもなく、地上に出てきた残りの魔物を掃討することに成功した。
重軽傷者はいるものの、どうやら死人は出なかったようだ。
これも全てはクレアのおかげだろう。
あのまま俺一人で戦っていれば、どんな結果になったかは分からない。
掃討が終わると、ラストボスを討伐したクレアはその場にやってきた冒険者協会の方に対して、簡単に状況説明をしていた。
クレアがサイクロプスを倒したと聞いても、彼らは驚く素振りを見せなかった。
どうやら俺と違い、クレアは自分の力を周囲に隠していないみたいだ。
それもそうか。じゃないと最年少でSランクに到達したとニュースで取り上げられるはずがないからな。
その後、説明を終えてようやく解放されたクレアが話しかけてきた。
「お待たせしてしまい申し訳ありません。天音さんを本部に連れていく件ですが、この後かまた後日か、どちらの方がよろしいでしょうか?」
「……そうだな」
手を顎に当てて考えてみる。
正直、俺はまだギルドに所属するつもりはない。
ダンジョン内転移を利用した高速レベルアップは俺一人でしかできないこともあり、まだしばらくはこれまでのようにソロで活動したいと考えている。
ただ疑問なのが、周囲からは無能と蔑まれている俺を、宵月がどうして勧誘しようと思ったのか。
その点については非常に気になる。
それに――
「……?」
――それ以上に気になるのが、クレアという存在。
19歳という若さでどうやってあれだけの強さを得たのか、宵月にいけばその理由も少しは分かるかもしれない。
となると、残された答えは一つだった。
「クレアさえよければ、この後で頼む」
「分かりました。それではすぐにでも――と、その前に」
クレアがサイクロプスに手を伸ばして触れると、一瞬でその巨体が消える。
アイテムボックスの中に回収したのだろう。
討伐したクレアに回収の権利はあるのだから、至極当然の行為だ。
それにしてもあれだけの質量を保管できるとは、少なくともアイテムボックスのスキルレベルは5を超えているに違いない。
そんなやり取りを経て、俺たちは宵月ギルドに向かうのだった。




