86/186
第85話:伯爵が想像以上だったんだが⑪
「でも、それだけなんですか?」
「何がだ?」
「変な話ですけど、もっと悪いようにもできたはずですよ。前の国王みたいに」
「……まあ、確かにそうかもな」
大公爵へ剣を向けたということは、俺の裁量で死罪にもできる重罪。
もっと手っ取り早く金に変える方法だってあるにはある。
「それなのに、みんな幸せになれる方法に落ち着くのは、やっぱりユーキは優しいんじゃないの?」
アイナまでそんなことを言ってくる。
正直、あの時はそんなことはまったく頭になかった。自然と出てきた発想がこれだったのだ。
「さあ、どうだろうな」
——とだけ返事した。





