第82話:伯爵が想像以上だったんだが⑧
「アースはこの村のことはどのくらいまでわかる?」
「全部わかるんだナー」
「全部……というと?」
「ここのことは全部知ってる! 村人の痴話喧嘩とかも知ってるんだナー!」
「なるほど、本当に全部わかるんだな」
別段、痴話喧嘩を知っている必要ないが。
「なら、普段村で困ってることとか、そういうのはわかるか?」
「一番困ってるのは、橋がないことだと思うんだナー」
「橋か……なるほど」
スイに乗って上空を俯瞰できたから、アースが言いたいことはわかる。
この村は、両サイドに河が通っている。
物質循環というものを聞いたことがある。
雨に含まれる栄養は森や河を経由して、最終的に海に放出されるサイクルを繰り返すというものだ。
おそらくだが、この自然の肥料がロイジウスの地を豊かにしているのだろう。
そんな大事な河なのだが、橋の数が十分になく、別の村や王都まで運ぶ際に迂回ルートを使うことが多いことは容易に想像できた。
あの領主のことだから、お金をケチってロクに開発していなかったのだろう。
「アース、サンキューな」
この兵士たちにやってもらうべきことは決めた。
「よし、じゃあお前たちには罰として橋の建設をやってもらおう」
 





