第77話:伯爵が想像以上だったんだが③
念のため、結界魔法を展開しておく。
「……真っ暗ね」
「ユーキ、何も見えません」
二人の声が反響する。
なんとも奇妙な状況だが、仕方ないな……。
「ちょっと待っててくれ」
俺は洞窟用光源をアイテムスロットから取り出し、使用する。
俺たちの周りが昼間の屋外のように明るくなり、見やすくなった。
なったのだが——
「かかれええええ————‼︎」
「「「「「うおおおおおお————‼︎」」」」」
大勢の声が聞こえたかと思うと、鎧に身を包んだ十人ほどの兵士に囲まれた。
そのうちの七人から剣を向けられ、三人からはいつでも魔法を放てる格好で手を向けられていた。
「……なんのつもりだ?」
俺が問いかけると、貴族らしい豪華な格好をした一人の男が顔を出した。
身長は百六十センチほどで、胴長。
体重百キロを超えていそうなデブ……じゃなく巨漢だった。
この男の名前を、俺は知っている。
俺は立場上王族の肖像画を俺はいつでも見られる環境にあったので、そこで見たことがあったのだ。
こいつは、ロイジウス領の現領主——ダスト・ロイジウス伯爵。
先日処刑したセルベール国王とは比較的近い血縁関係にあったと聞いている。
「ど、どうせボクちんを追い出そうとか思ってるんだろ! お前、噂は聞いてるぞ! 王国を荒らしまくってくれたそうだな!」





