第31話:真の国王じゃないのに暗躍しすぎてるんだが
王城の一室にて。
「ユーキ様、租税の件で領主から問合せが殺到していまして」
「なんだ?」
「三日目に行った貨幣変更の件で、今年度の国庫納税は旧貨でも認めてほしいと……」
俺は、レグルスにアドバイスする形で、新貨を発行していた。
体制が完全に変わったので、権威付けをするためと、もう一つの大きな理由がったからだ。
「ダメだ。それは許さない。王国が旧貨と等価交換すると発表しているんだから、交換した上で納税するよう答えてくれ」
「それが、大量の硬貨を移動させるとなると時間がかかると」
「だから特例で納税の猶予期間を設けた。今は交換が殺到しているが、ちゃんと準備すれば十分間に合うはずだ……と、俺は考えるぞ」
「わかりました。そのように答えておきます!」
「うむ、頼んだ」
このように、役人が俺の部屋を訪れ、俺がアドバイスをするという体で国を動かしている。
国王はレグルスで、今の制度上は国王が全ての権利を持っているのだが、なぜか俺が実質的に統治してしまっていた。
旧貨での納税を許可しないのは、悪徳領主から金を巻き上げるためである。
一部の領主は、色々と緩かった前国王時代に、国庫への納税をチョロまかして私腹を肥やしていた。
とっ捕まえても良いのだが、ただでさえ混乱している王国でそれをやるとさらなる混乱を招いてしまう。
だから、遠回りな方法で対処した。
新貨への変更で、旧貨は金属としての価値しか持たなくなる。
救済措置として旧貨と新貨を等価交換するので、まともな領主が困ることはないだろう。
交換に応じた領主には手間賃として特別交付税を与えているので、喜ぶ領主の方が多いはずだ。
だが、チョロまかした多額の旧貨を交換するとなれば、その金がどこから湧いたのか調査が入る。
——俺がそう指示した。
旧貨での納税が認められれば、綺麗な金だけを交換して、汚い金を納税に使うということができる。
それを阻止するのが狙いだ。
悪徳領主は交換できず、脱税で肥した財産がただの金属の塊になる。
まあ、ちゃんと『金属』は王国が買い取れるよう準備を進めているので多少の財産は取り戻すだろうが。
もちろん、想定以上に『金属』がどこからか湧いてきたら、相場も下がるだろうから、多少足元を見て買い叩くつもりだ。
「ユーキ、悪い顔になってますよ?」
一人で満足していたのだが、顔に出ていたらしい。アレリアにバレてしまった。
「そんなに悪い顔になってたか?」
「はい、とっても悪い顔です。ユーキは悪いことをする人じゃないので、どこかの悪い領主さんが困りそうですけど……」
アレリアは勘も鋭いんだな。だいたいそれで合っている。
「それにしてもこのところ忙しいな。……やっとある程度は任せられるようになったが」
いちいち全てのことに俺が対処していると時間がいくら有っても足りない。
頭が良い優秀な人材を集め、議論させる場というのを急遽用意した。
議会制の制度を整えるまでにまだまだ整えなければならない問題も多数抱えている。
まだまだ忙しい日々は続くが、その間を縫って少しは自分の時間を作り出せる見通しは立った。
「明日はお休みなんですよね。もし良ければ、気分転換に久しぶりに冒険者をやりませんか?」
「一応の本業は冒険者のはずなんだが、いつの間にかこりゃ日曜冒険者だな……。もちろん付き合うよ。アレリアに退屈させてるのは済まないと思ってる」
「とんでもないですよ。大事な仕事をしているんですから。……でも、久しぶりにプライベートのユーキと会えるのは嬉しいです」
なぜか、アレリアは恥ずかしそうにもじもじとしてしまう。
かわいい。
まさか、俺に気があるとか……?
いやいや、何を勘違いしてるんだ!
落ち着け、俺。
こんな超絶美少女が俺を好きになるはずがない!
だって考えてもみろ、生まれてから転生するまで一度も春がやってきたことはなかった。
毎日が寂しいクリボッチだった。
異世界に来たらいきなりモテるはずがないだろう。
ふぅ、危ない。勘違いおじさんになるところだった。
「そう言ってくれると嬉しいよ。アレリアもそうだけど、スイにも大分退屈させてるしな。って、スイまた寝てるのか?」
「むにゃむにゃ……ご主人様? 三食昼寝付きでぐうたらできるって最高の竜生だよ〜」
「こっちの心配はいらなかったみたいだな……」
こんなグータラ翼竜を飼っておいても仕方がないので、ちゃんと仕事をしてもらおう。
しかしイマイチこの竜の使い道がわからないのだが……。
スイが攻撃するとだいたいはワンパンになってしまうので、俺とアレリアが手を出すまでもない。
それはそれで楽だが、成長することができない。
かと言って、俺が攻撃してもワンパンなのだが。
「また魔族みたいなのが出てきたらいいんだけどな。今度はもうちょっと強いやつ」
「何を言ってるんですか! 平和なのが一番ですよ?」
「か、可能性の話だって。魔王がいる限り、魔族がどこからともなく湧いてきてもおかしくはないだろ?」
「それはそうですけど……」
そんな他愛もない話が、忙しい俺の癒しになっていた。
俺を支えてくれるアレリアへのサービスという意味でも、久しぶりの休日を満喫するとしよう。
naonama様、素敵なレビューをありがとうございます!
とてもモチベが上がりました!
さて、第2章なのですが、全20話構成で計画しています。
(経験上おそらくプロット通りには進まないので参考程度で)
プロットの組み直しで今日は投稿が遅くなりました。
引き続き本作をよろしくお願いいたします。
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