表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/186

第22話:レベルが上がったんだが

 ◇


 1000体のレッドウルフを倒すとレベルが上がっていた。

 これだけ倒してLv1→Lv5となると、異世界の魔物の経験値はかなりマゾい。


 ステータスを確認した限りは、HPとMPが上がっているくらいで、特に目立った変化はない。

 しかしレベルアップの恩恵のメインはそちらではなく、スキルレベルが上げられることにある。


 あとで確認しておこう。


 王都に帰還して、レッドウルフの討伐依頼を達成したことをギルドに報告する。

 何体倒したか否かはギルド証に自動的に記録されるので、これが証明になる。


「あっ、ユーキさん報告ですね! 今度はどんなとんでもないことしたんですか!?」


 いつの間にか、俺がとんでもないことをするやつだと思われるようになっていた。

 昔からもこれからも特殊なことはしてないんだけどな……。


「今日は普通だぞ。レッドウルフの討伐依頼だ。この通り、特殊なことは何もない」


 ギルド証を受けたとった受付嬢が依頼内容と討伐数を確認する。


「またとんでもないことになってるじゃないですか!? なんですか1000って! 桁がおかしいですって。普通は2桁とかそういうものですから!」


「え、そうなの?」


 確かに1体ずつ処理するのが面倒だったからスイの力を借りて効率良く進めたが、時間さえかければ少なくとも3桁くらいはいきそうだと思ったのだが。


「そうです! 多分、一度の依頼で倒したレッドウルフの討伐数としては記録塗り替えてますからね!」


「そうなのか。すまんな、世間知らずで」


「はぁ……。やっと異常さに気が付きましたか。では、処理をするので……って、これランク上がりません!?」


「数はそれに合わせてきたぞ」


「なるほど、それで1000体ということですね……」


 受付嬢も俺の意図を察してくれたようだ。


「では、お二人とも新しいギルド証をご用意しますので、アレリアさん、ギルド証をお預かりしてもよろしいでしょうか?」


 受付嬢がアレリアに古いギルド証の返却を求める。

 しかし——


「いえ、私は魔物を倒していませんし……ごめんなさい」


 どういうわけか、応じなかった。


「え……? では、どうしましょう……」


 受付嬢は困惑顔だ。

 まさかランクアップのための返却を断られるとは思わなかったのだろう。


「ギルドの規定でランクアップのためには古いギルド証を回収することになっていまして」


「一体も魔物を倒していないのに、ランクを上げても仕方ありません! 私はDのままでいいです」


「……ええ? ランクアップのチャンスがあるのに断られたことは初めてです……」


「この場合はどうなるんだ?」


「冒険者が断った場合は、原則として現在のランクを維持します。しかし、断られた例はありません。下位ランクの依頼は今まで通り受けられるので……」


「なるほど。……ランクアップのチャンスってのは今だけなのか? ちょっと考える時間をもらうこととかってできないか?」


「今すぐに決断しなくても大丈夫なはずです。ただ三日以内にランクアップしないと権利失効になります。次に上げたくなった場合はもう一度条件を初めから満たす必要が……」


「なるほど、わかった。三日あれば十分だ。それと、俺のランクアップも保留にしておいてくれ」


「わかりまし……って、ええ!?」


 ランクアップは、冒険者パーティにとってはめでたいこと。

 俺だけが上がっても素直に喜べない。


「アレリア、ちょっと気分を変えよう」


 ◇


 一度ギルドの建物の外に出て、アレリアに聞いてみた。


「どうしてランクアップしたくないんだ?」


「ユーキを困らせたいわけではないのです。ごめんなさい」


「謝る必要はないし、責めてるつもりもない。理由を聞きたいだけなんだ」


 普通に考えて、ランクというものは上がって損するものではない。

 よりレベルの高い依頼を受けられるし、下位ランク向けの依頼も変わらず受けられる。自分にはまだ早いと思えばDランク依頼を受注すればいい。


「私とユーキとでは格が違います。勝つ必要なんてないと思います。……でも、ユーキが一人でこなした依頼で私のランクまで上がるのはおかしいと思うのです。そういう仕組みなのだとしても……」


「そうだったか……」


 俺は、自分のためというのもあるが、アレリアのためにも早くランクを上げて、なるべく報酬単価の高い依頼を受注し、早く王都を出たいと思っていた。


 そのせいで、さっきのレッドウルフ討伐では強引な形になってしまったことは否めない。

 良かれと思ってやったことだったが、アレリアの萎縮を引き起こす結果になってしまった。


「つまり、アレリアは、Cランク相当の力にとどいてないと思ってるんだよな。じゃあ、Cランクの依頼が普通にこなせることがわかったら、ランクを上げても問題ないわけだ」


「……そうなのでしょうか」


「だって、Cランクの依頼をこなせる力があるなら、極端な話、 いきなりCランクから冒険者をスタートしても胸張って名乗れるだろ?」


「それは、そうかもしれません。自分でも、自分の気持ちが整理できていなくて……」


「アレリアは自分が思ってるより強いってことを自覚した方がいい。今から、Cランクの魔物を倒しに行こう」


「え、でもユーキは保留に……」


「勝手に外に出て、勝手に魔物を倒すことに依頼も何も関係ない」


「それだと、せっかく倒してもお金にならないんじゃ?」


「お金とアレリア、どっちが大切かって天秤にかけられるもんじゃないだろ? さっさと用意するぞ」

毎日24時間ポイント更新しています!

評価者数も481名に増加!

アプリで読んでいる方なども、3分で登録していただければすぐに本作を評価できますのでよろしくお願い致します!


★大切なお願い★


・面白かった

・続きが気になる


などほんの少しでも思っていただけましたらブックマークと評価をお願いいたします。

(評価は↓の広告下辺りにある【☆☆☆☆☆】をクリックorタップでできます)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まぁ仮に天秤にかけたところでお金が吹っ飛んでって天井を貫通するくらいには違うよなぁ〜
2022/03/01 05:31 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ