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第1話:いきなり追放されたんだが

「ああ、勇者よ、よくぞ来られましたな!」


「……んあ?」


 目が覚めると、中世ヨーロッパの王宮のように豪奢な部屋の中央に突っ立っていた。

 王冠を被った白ヒゲのおっさんが俺に話しかけている。

 そんな状況だ。


「状況が飲み込めないんだが」


「それは俺から説明しよう」


 おっさんだけに注目していたが、よく見ると後ろに男女合わせて7人が控えていた。

 みんな強そうな武器を持っていてタダモノではなさそうな雰囲気がある。


 黄金の剣。白銀の盾。漆黒の槍。深緑の弓。紺碧の魔法剣。紅色の双剣。純白の杖。


 俺に説明をしようと前に出てきた男は、黄金の剣の持ち主だった。

 身長180センチくらいはありそうだが、ほどよく筋肉がついている。

 なんとなく悔しいが、イケメンっぽい気がする。


「キミは我々に加え、最後の——8人目の勇者として召喚された。混沌の魔王を滅ぼし、平和な世界を取り戻すのが使命だ」


「はあ」


 なんだその中二臭い設定は。

 騙されてテレビの撮影かなんかに参加させられてるんじゃないだろうな。

 このまま黙ってドッキリに参加させられるのも癪に障る。


 よし、ちょっといじめてやろう。

 俺は天邪鬼なのだ。


「では、その証拠を見せてくれ。あー、魔王は出せない設定だよな。あんたらが勇者だってことと、俺が勇者だってことを証明してくれればいい」


「そのくらいはお安い御用だ。少し待っていろ」


 黄金の剣の男は、右手を突き出した。


「ステータス・オープン!」


 ププッ!

 必死なところ申し訳ないのだが、笑い転げそうになった。

 俺よりちょっと歳上かそこらの男がゲームのセリフみたいなことを真面目な顔で言っているのだ。


 彼の努力に免じてこちらも乗ってやろうじゃないか。


「うわー本当に見え……は? 本当に見えるんだが」


 ————————————————————————

 名前:ファブリス・ジョーキン Lv.15

 クラス:剣の勇者

 スキル:非公開

 HP:非公開

 MP:非公開

 ————————————————————————


 ゲームのウィンドウのような感じでこんなものがAR映像のように表示された。

 剣の勇者と書いてある。

 まだ確定ではないが、こんな摩訶不思議なことは手品じゃできないはずだ。


「非公開ってのはなんだ?」


「他人から重要な情報は見えないようになっている。たとえ勇者同士でもな」


「なるほど」


「キミもやってみるが良い。俺と同じようにすればできるはずだ」


「よし、ステータス・オープン!」


 おっ! 本当に出てきた!


 ————————————————————————

 名前:松崎祐樹(まつさきゆうき) Lv.1

 クラス:賢者

 スキル:『システム操作』『神の加護』

 HP:97795/97795

 MP:216987/216987

 ————————————————————————


 ふむふむ、俺は賢者か。賢者と言えば、SMOで使っていたキャラと同じだな。

 だとしたらかなり強そうだ。

 しかし、賢者って勇者だったか?


「こ、これは……」


 ファブリスが困惑し、国王のおっさんを見る。

 周りがザワザワし始めた。


「勇者武器がないからおかしいなとは思っておったが……ちっ」


 物凄い形相で王は俺を睨み、舌打ちした。

 なんだかさっきまでのお祝いムードからは変わってしまった。何か雲行きが怪しい。


「俺は賢者っていう勇者ってことなのか?」


「貴様は勇者でもなんでもないっ!」


「な、なんだって!? じゃあ賢者ってのはなんなんだ?」


「賢者? 知らんな。勇者でないのならば即刻去るがよい! 貴様なんぞの居場所はないっ!」


「は? なんだよ急に。事情を教えてくれよ!」


 俺はすがるようにファブリスを見る。


「弱者を助ける義理などない。俺を騙しやがって、野垂れ死ねばいいんじゃないのか?」


「な、なんだよ……さっきまで色々教えてくれただろ?」


「お前が勇者でないのならばもう俺に関わるな、雑魚が! いや、俺だけじゃない。勇者パーティの総意だ!」


 …………。


 唖然とするしかなかった。

 さっきまで普通に接してくれていたのに、勇者じゃないというだけでこんなことを言われるなんて。


「他の勇者も……なんだよ……」


 そんな目で俺を見るなよ。

 蔑むような目つき。男も女も。みんな心から俺を見下し侮蔑の対象にしていた。


 まるで俺が嘘吐きみたいだった。


「連れて行け」


「はっ!」


 衛兵が集まり、俺を王城の外へ連れていく。

 抵抗しようとすればできたが、抵抗したとしても状況が好転するとは思えない。


 なんだよ……どいつもこいつも……!

 俺がどんな悪いことをしたってんだよ!

 何回追い出されるんだよ!


「よし、出て行けガキが」


 衛兵に背中を蹴飛ばされ、王城の外に捨てられた。

 これが夢だったらいいのに……確かな痛みを感じる。


 そういえば、勇者召喚とか言ってたな。じゃあここは異世界か。

 ラスボスの戦利品にそんなことが書いてあったな。——事情はわからないが、そういうことか。


 俺は異世界に転生してしまったのか。

 それも一文なしで。

 勇者でもなんでもなく。賢者(多分弱いんだろう)として。


 いやいや、冷静にどうすんだよ。

 こんなの無理ゲーだろ。

ざまぁ回収は少し先になります


7/28 追記

第30話にて回収完了しました。

安心してお読みください。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 『神の加護』(隠蔽)とか書いたほうが良いのでは? 読者視点と作者視点で理解が違うのはミスリードを誘うとき以外は問題かと思います。
[一言] 「この賢者ってのがヤバすぎた。あらゆる特化職を凌ぐ能力。あらゆるパラメータが上限値。あらゆるスキルが使い放題。完全に環境をぶっ壊していた。」 なのに、「賢者(多分弱いんだろう)として」 ラス…
[気になる点] それに他の異世界人(勇者)が賢者を知らないのも不自然。 それとLV1のステータスだけど、勇者達はLV1の時点でHPは10万超えていたのか? 明らかに勇者達よりステータスが高そうなんだけ…
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