第185話:異世界賢者は賢者っぽくなる
「んー、どれも賢者様に近づいた時がポイントになってる気がするんだナ。その剣は賢者様の魔力が染み付いてるから、関係あるかもしれないんだナ。知らんけどナ〜」
前代の賢者に近づいた時——か。
魔剣を手に入れたり支配したり、魔人を倒したりというのは想像しやすい。だが、遊びに負けたときというのはどういう状況だったのかわからないな。まあ、ひとまず色々と試してみるのが早いか。
前代賢者の人生は知らないし、どうもスイとアースはよく覚えていないようなので見た目から攻めていくとしよう。
「なるほどな。じゃ、なるべく賢者っぽくなってみよう。覚えてる限りの特徴を教えてくれ」
俺はスイとアースから外見の特徴を聞き出し、アイテムスロットから必要なアイテムを取り出す。いくらでも入るので今すぐ必要ないものもたくさん用意しているのだ。その辺の雑貨店より品揃えは豊富なはず。
「こんな感じか?」
前代の賢者は帽子と眼鏡を身につけていたらしいので、その通りにしてみる。指には指輪をつけていたらしいのでその通りに。
「なんとなく似てる気がする〜!」
「よくわかんねーけど多分似てるんだナ〜」
スイとアースの評価は上々。
だが、二本の剣には何の変化もなかった。
「ダメか。こういう単純なことじゃないんだろうな」
薄々気づいてはいたが、見た目が賢者を賢者たらしめるものではないのだろう。帽子とか眼鏡とか指輪を身につけている人なんて珍しくないしな。
「他に何か、賢者にしかできないとか、そういうことはなかったか?」
「う〜ん」
「何かあったかナ〜」
まあ、そう簡単に重要なヒントが見つかるはずが——
「あーっ、あれとか?」
「やっぱあれだよナ〜」
あったようだ。
「賢者様は大地の魔力を使えるんだナ〜」
「大地の魔力?」
アースは頷き、近くに生えていた『聖花』を指差した。
「いろんなところから湧き出る魔力を自分の力にするんだナ。例えばこいつも魔力を吸って成長してるんだナ〜」
なるほど、言いたいことは分かる。
異世界では地面から魔力が沸き出ている。地上に噴出した魔力は大気に溶け込む。その魔力を吸収した魔物が強くなったり、『聖花』のような特殊な植物が成長する。いわば、人間以外にとっては栄養なのだ。
だが——
「人間は自然の魔力の影響を受けにくいって話じゃなかったか?」
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