第184話:異世界賢者は条件を探る
「じゃあ、そのちょっとを教えてやってくれ」
アイナにとっても、普段何気なく感じていたことを言葉にするいいきっかけになるはずだ。人に物事を教えるのは、自分にとっても成長に繋がる。
アリスに関してはアイナに任せておけば安心できそうだ。
さて、暇になってしまった俺だが——何もしないわけではない。
これまでなんとなく受け入れてきたアレの謎を突き止めておきたい。
「スイ、アース。聞きたいことがある」
「なーに?」
「うーん?」
俺の肩で眠そうにしていた二体の竜がふわっと飛び、俺と向かい合う形に。
俺は、アイテムスロットから魔剣ベルセルクと聖剣エクスカリバーを取り出した。
「これって、前代の賢者が使ってた武器なんだよな?」
「そうだよ〜」
スイが何を当然のことをとでも言いたけに返事した。
「この武器は一体なんなんだ? 修復率っていうのはどうすれば上がるんだ?」
ずっと気になっていたことを言葉にした。
魔剣ベルセルクは、たまたま王都の武器屋に錆びて眠っていたもの。聖剣エクスカリバーは、古代遺跡の中にひっそりと刺さっていたもの。
放置されていたままでは使い物にならなかった剣を俺が手に入れたことで修復され、実用的に使えている。
さっき話を聞いた商業区の装備店の爺さんが言うには、この二本の剣はかなり品質が良いとのことだ。『修復率』が上がるほどに強くなっているのは分かる。まだ修復率35%でこれなら、100%になるとどうなるのか……100%にするにはどうすればいいのか、どうしても気になる。
「う〜ん?」
スイは言葉に詰まり、アースを見た。
「オレも知らねーんだナ〜」
アースもピンと来ていないご様子。
「どんな些細なことでもいい。気づいたことはないか? この剣がどういうものなのかなんてわからなくてもいい。修復率を上げるにはどうすればいい?」
何か共通点があればそれをヒントにできれば良いのだが、どういう時に修復率が上がってたっけ……。記憶を掘り起こし、整理していく。
・魔剣/聖剣を手に入れた時。
・魔剣と聖剣を同時に支配したとき。
・魔人を倒したとき。
・アルフレッドとの遊びで負けたとき。
この四つのタイミングだった。
振り返ってみても共通点らしい共通点は見えない。
「あー、あれじゃねえんかナー?」
アースが何かに気づいたようだった。
「なんか、ユーキが賢者っぽくなったタイミングな気がするんだナ」
「ユーキ様な」
コツンとスイの頭を叩くスイ。
「いてて……」
呼び方はどうでも良いのだが、スイ的には気になるようだ。
と、それはともかく。
「賢者っぽくなったタイミングってどういうことだ?」
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