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第183話:異世界賢者は共有させる

 ゲームを急に取り上げられた子供のように怒るミーシャ。だが、今のアレリアの介入はナイスタイミングだった。


「あのまま戦っていたらミーシャ、大怪我していました。そうですよね? ユーキ」


「ああ、その通りだ」


 俺が即答すると、アレリアは満足気な表情になった。


「生命力が減少して怒り状態になった魔物は攻撃力、攻撃速度が上がります。ミーシャが一方的に攻撃できていたのに、急に吹き飛ばされたのはそういうことなんです。あのまま戦っても勝ち目はありませんでした」


「そういうことだったんだ……」


「重要なのは怖がらずにしっかりと魔物の動きを見ることと、力任せに攻撃しないことなんです」


 アレリアは、剣に魔力を込めた。魔力を帯びた剣はほんの少し青く煌めく。


「腕の力だけじゃなくて、魔力を頼りましょう。ちょっとコツを掴めばあのくらいの敵は簡単に倒せるはずです! じゃあ、こっちに来てください」


「う、うん」


 手取り足取りミーシャに魔力を使った武器の使い方を教えるアレリア。


 この感じなら、こっちはアレリアに任せておけば大丈夫だろう。


「アリスもやってみよう。武器は……」


「いい。大丈夫」


 アリスはゴールデンクラブの方に向き、手を突き出す。


 前方から七つの幾何学模様——魔法陣が同時に出現した。王国でハルカから受けた依頼で三人の冒険者をオークの群から助けた時と同じものだ。


 魔法陣からは白い光が溢れ出し、騎士の軍団を形作っていく。騎士たちは二人が剣、一人が槍、一人が斧、一人が弓、二人が杖を持っている。


「目標、あのザリガニ」


 アリスが召喚した騎士たちに指示を出すと、一斉に攻撃を始めた。


 ドガガガガガガンンンッッ!!


 剣、槍、斧による近接攻撃に加え、背後から弓と魔法による援護射撃。


 ジリジリとゴールデンクラブの生命力を削る。最後は前衛の騎士が吹き飛ばされはしたものの、魔物を倒すことに成功した。


「よし。これでいい?」


「ああ、オッケーだ」


 アリスの召喚魔法……思っていたよりも強いな。自身の能力と同等のステータスを持つ個体を生み出せるようだが、複数体を同時に扱えるのはさすがにチートすぎる……。


 個々は並の戦力だとしても、死を恐れない多数が集まればそこそこ通用するというのはちょっとした発見だった。


 と、それはともかく。


「まあ、これでも正直いいっちゃいいんだが……強いて言うなら、騎士同士の連係が悪い」


「連係?」


「とりあえず全員で特攻させて強引に押し切るって感じだろ? こう、なんていうか……上手くお互いを助け合って相乗効果を生むような戦い方ができれば格段に強くなるはずだ」


「う〜ん。どこを直せばいいの?」


 アリスが困った顔で尋ねてきた。


 だが、実はこれに関する答えを俺は持ち合わせていない。俺自身が戦闘に立って特攻することしかしていなかったからだ。連係が悪いことまでは分かるが、それをどう改善すれば良いのかはわからない。


 とはいえ、あくまで俺がわからないというだけ。答えを知っているパーティメンバーを俺は知っている。


「それは……アイナに聞くといい」


「私!?」


 急に話を振られたことでビクッとするアイナ。


「ああ。普段ずっと後ろから俺とアレリアの戦いを見てただろ? そんなアイナならわかることもあるんじゃないかと思ってな」


「急に言われてもアドバイスできることなんて……ちょっとしかないわよ」


 アイナは謙遜しているが、ちょっとわかれば十分だ。そのちょっとの差が大きな結果に繋がるんだからな。

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