第146話:話を聞いてみたんだが①
「君たちが助けてくれたのか?」
声の主は、俺たちが助けにきた対象であるアインという冒険者。
「その通りだ。間に合って良かったよ」
「ありがとう、本当に……もうおしまいだと思ったよ」
アインがそう言うと、後ろにいた仲間の二人——ハルクとルーリエの二人も頭を下げた。
「まさかこんなところに高位の冒険者が来てくださっていたとは……このご恩、必ず何かの形で返させてくれ……」
「本当に、本当に……ありがとうございました」
冒険者ギルドを騙すようなパーティと聞いていたのでどんな荒くれ者かと思いきや、案外普通の冒険者じゃないか——というのが第一印象だった。
ミーシャとアリス、それとアースから降りてきたアレリアとアイナを見ても俺と同じように感じているようだった。
スイとアースはいつの間にか小さくなり、俺の側をふわふわと浮いている。
あと、どうでもいいことだが……この三人は俺が王都では有名だということには気づいていないようだ。
王都以外の住民や冒険者には顔バレしていないので、名前を出すまではわからないのだろう。
久しぶりに『大公爵』ではなく『一人の冒険者』として扱われた気がして気分が良い。
それはそれとして——
「……どうして身分不相応の依頼なんか受けたんだ?」
俺が尋ねると、三人はビクッと肩を揺らした。
「俺たちがここに来たのは偶然じゃないんだ。不正なギルドカードを使って依頼を受けた冒険者がいると聞いて追いかけてきた」
百パーセントの確信があったわけではないが、ステータスを見る限りはCランク相当の冒険者。
『未分不相応』というワードにも露骨な反応を見せたので、カマをかけて見たというわけだ。
「ああ……バレていたのか。手間をかけてすまなかった」
「アイン……」
「……」
何か言い訳をするかと思いきや、三人はあっさりと事実を認めた。
「あんたらが進んで不正に走るタイプとは思えないんだ。良かったら事情を聞かせてくれないか?」
人は見た目によらないと言うが、俺の直感は意外と当たる。何か事情があったのではないか、そんな風に思わされたことからの言葉だった。
三人は顔を見合わせ、ハルクとルーリエが頷く。
「わかった。助けてもらった立場だしな。全て話すよ……」
アインはそう言い、事情を話し始めた。
金のために不正に手を染めたこと。金が必要だったのはパーティでただ一人の回復術師であるアイリスの治療費のためということ。これ以外に方法がなかったということ。
「まあ、だとしても世話になってるギルドを騙していい理由にはならねえけどな……。結果、あのザマだ」





