雑貨屋と心配事
駅前の雑貨屋にて
カランカラン。と軽い鈴の音と共に扉が開く。
新しい雑貨屋とは言っても、駅前に元々あった古民家を改装して作ったもののようで、なかなか雰囲気があるお店だった。
「素敵なところだね〜!」
「うん!雑貨も凄く綺麗だよ!」
目を輝かせながら雑貨を見ている三木ちゃんに続き、自分も店内を見て回る。
和風チックな小物が多く、手毬のような飾りの付いたピアスや風車の模様があしらわれたボールペン等
少しレトロさも感じさせる雑貨の多い店内は思いのほか私好みで
見ているだけで気分は上がって行った。
店の奥にある小さな数段の階段を上がると、そちらにはガラス製品が置いてあるコーナーのようで
照明のおかげもあってかキラキラと控えめに光っていてとても綺麗だった。
その中にある、緋色の小さなスクエアの飾りがついたピアスに目が止まる。
値段を見ると、1200円と手を出せる値段だった。
…猫たちに買ったかつお節が響いており、お小遣いはだいぶカツカツだが…
一目惚れだし、たまにはいいだろう。
レジにそのまま進み、会計を済ませる。
「ここで付けて行かれますか?」
店員さんが、鏡をさしながら言う。
せっかくだし付けていく事にしようかな。
鏡を見ながらピアスをつけていると
後ろからひょこっと三木ちゃんが現れた。
ピアスを見ると、かわいいと褒めながら何かを渡してくる。
「みてこれ!可愛いから買っちゃった!おまけでもう一個引っ付いてるからさ、おそろいにしよう!」
彼女の手には、猫が7匹付いた根付のようなものが握られていた。
お守り的なものらしい。
お礼を言って受け取り、お互いにカバンにつける。
「やっぱ超可愛い〜!来てよかったなぁ。」
上機嫌で店を出る三木ちゃんの後を
ほくほくした気分で追いかける。
確かに、来てよかった。
お茶をしに入ったカフェで、猫のお守りストラップを弄りながら思う。
……猫か……
黒猫の飾りを触りながら、私は結局見つかっていないままのひなたの事を考えていた。
大丈夫だろうか…ただでさえ寒がりのひなただ。
帰っていないとなると、寂しい思いをしているだろう。
どこで何をしているのか。
「花夜?」
名前を呼ばれてはっとする。
テーブルの向こうで、三木ちゃんがこちらを心配そうにのぞいていた。
「ううん、じつは…」
隣の家の猫が1匹帰って来ていない、ということだけを告げると三木ちゃんは
心配だけど、猫は気まぐれだし
そのうちひょっこり帰ってくるよ!と励ましてくれた。
たしかに、あまり深く考えすぎない方がいいのかもしれない。
今は、お出かけを楽しもう。
少し冷めかけたコーヒーをすすりながらそう思うのだった。