お迎え
「ツキさんの家ってどこにあるんですか?」
「んー、俺の家は結構奥の方だよ。田舎。」
奥の方……と言われても分からないが
たぶん遠いのだろう。
「今日中に着きますかね?」
「大丈夫だって。迎え呼んでるから。」
迎え?車とかだろうか。
見渡すと町は大正時代のような雰囲気で、車のようなものもチラチラと見える。
「そんなもん使わねぇよ、この建物の上に行くぞ。」
そう言うとツキさんは赤いレンガ造りのビル?のような建物のエレベーターに乗る。
「見た目大正なのに、設備は現代チックなんですね!」
「あ〜、街の見た目は、単に俺たちが住みやすいからこうなだけなんだ。」
なるほど…
エレベーターを降り、屋上に出る。
上から見た街は現世の夜景とはまた違う、不思議な美しさがあった。
街をみながら、ツキさんは続ける。
「まぁ、現代化したい派と、そう出ない派がいて、間をとった結果こうなったんだよ。」
妖怪にも色々いるらしく、ほの暗いところじゃないと落ち着かない人も多いとか。
「座敷わらしがビルのオフィスとかにいたら笑うだろ?」
例えがシュールだけど
確かになんかダメな気がする。
「ところで、お迎えってここに来るんですか?」
「おお、もう見えたぞ」
入口を振り返るが、誰もいない。
「どこ見てんだよ、上だよ上。」
「は?」
瞬間、体が中を浮く
同時に、どんどん小さくなるビルと街。
「あああぁぁぁあ?!?!」
上空何メートルだろうか。
私は鳥のような何かに…くわえられていた
下を見ると、足らしきものにツキさんがブラブラと捕まっている。
「ちょ!!!私めっちゃくわえられてるんですけど!!」
「しょうがねぇだろ、お前腕力無さそうだし。落ちるぞ」
ツキさんはともかく、今の私はどう見てもでっかい鳥に捕まったエサとかだ。
鳥の顔を見ようにも、風が強すぎて目がこれ以上開けられない。
「もう少しの辛抱だからな〜。」
「…………」
ジェットコースターも顔負けな急降下をする鳥のクチバシで、わたしは意識を手放すのだった。