テマリさんと、妖界入口
妖界へやってきた2人。
ツキさんにはどうやら目的があるらしく…?
「ツキさん!!凄いですよ出店が沢山あります!!」
街の入口には溢れるほどの出店が並んでいた。
「ヒトダマ天ぷら」「イモリの素揚げ」
…ヤバそうなのもあるが
不思議なアクセサリーや、魔法の杖っぽいもの。宙に浮いた水に泳ぐ青色の金魚等、ワクワクするものしか無かった。
あっちこっちの出店に目移りする私の後を「まだ入口なんだけどな…」と
笑いながらツキさんが追いかける。
歩きながら、ある店に目が止まる。
可愛い猫の提灯が吊り下げられている店には、ネコミミの生えた女の子が店番をしているのが見えた。
店員さんらしいその子は、店の前でチラチラと見ている私に気がつくと
パッと笑顔を咲かせる。
「あ!そこのお姉さん!もっと近くで見てってニャ!」
かわいい可愛い猫の店員さんに言われたら、断ることはできない。
素直に歩いていき、商品を見る。
そこには可愛らしいアクセサリーや品物が所狭しと並べられていた。
「『テマリの便利アクセサリーショップ』にようこそ!
あたしは手毬!猫人族にゃ!お客さんは、見たところ…人間かにゃ??」
珍しいにゃ!、と言いながら
いくつかのアクセサリーを平らな箱に並べつつ、こちらを見つめているテマリさん。
すると、後ろからツキさんがやってくる。
「お、ここに来たのか。いいとこに目をつけたな。」
ツキさんを見て、驚くテマリさん。
知り合いだろうか?
「ツキさんのお連れさんだったのかにゃ!もしかして、やっと助手を取ったのにゃ?」
「おお、まぁな!」
この店にはよく来るんだ。と言いながら、この間の除霊マッチを棚から取るツキさん。
ここの店のものだったのか。そのマッチ。
「アクセサリー以外も売ってるんですね。」
「あぁ、テマリは発明家でな。よく趣味で便利グッズを作ってはこの棚に置いてるんだ。」
なんて話しをしていたら、アクセサリーを並べ終わったらしいテマリさんが、私の前に箱を中身が見えるように置く。
「これは最近作った人族用の新作アクセにゃ!」
「デザイン、どれもすごく素敵ですね…!全部手作りなんてすごい…」
「デザインだけじゃないにゃ〜!左の3つは、術が苦手な人族用にそれぞれ簡単に術がだせるようになってるにゃ!
右の3つは、それぞれ色々効果があって、どれも自信作なんだにゃ〜。」
ドヤ顔で自信たっぷりに言うテマリさん。
…しかしすぐしゅんと耳がしょげてしまう。(可愛い)
「でも、実はまだ作ったばっかりで効果の確認がしっかり出来てないのにゃ…で、もし良ければ、少しだけお時間頂けないかにゃ…?」
人間はあまり人数がおらず、手伝ってくれる人がいなかったらしい。
お礼はするにゃー、と言いながらうるうると見つめるテマリさん。
「ツキさん…あの〜……」
しょうがないと言ったふうに、頭をかくツキさん。
「まぁ、時間はまだまだあるしいいんじゃねぇの?俺は 用事があるから、少し席を外すけど……」
「ありがとにゃー!!助手さんをかりるから、ツキさんこれ持って行っていいにゃ!」
そう言いながら、除霊マッチの在庫であろう中ぐらいの箱をどさ、と手渡すテマリさん。
「こんなに沢山?!サンキュー!!でかした花夜!」
(よく分からないけど…すごく喜んでいるからいっか。)
「さ!こっちだにゃー!」
ルンルンとしっぽを揺らしながら、出店の裏手で手をふるテマリさん。
「じゃあ、終わったら店の前で待っとけな。」
「はい!」
そう言うとツキさんは箱を抱え人混みに消えていった。
〜店の裏手にて〜
店の裏は、少し開けた空き地のような所だった。
「じゃあ、まずこれをつけるにゃ!これは、火の術をヒトが疲れず簡単に出すための道具で、術が下手っぴな人族の神様や、人間用に作ったものにゃ!」
ひし形のルビーのような石が金色の花の台座にはめ込まれた、可愛らしいネックレスをつけられる。
「手のひらを上に向けてちっちゃい火をイメージして!あ!一応顔から手は遠ざけるにゃ!」
言われた通り、マッチの火をイメージすると
小さな火が手のひらに現れた。
「成功にゃ!疲れた感じはないかにゃ?」
ないので、その通りに伝えると、嬉しそうに首のネックレスをテマリさんが外す。
「ありがとにゃ!次はこれ!その次は……」
そんな感じに、突風を出せるものや水を出せるもの、果ては傷を直せるものまで試用する。
傷を直せる物の試用は、怨霊みたいになったアツキさんに掴まれた時付いた首の傷をきれいさっぱり消してくれた。
正直ものすごくありがたい。
「ありがとにゃー!すごく助かったにゃ!」
これで本格的に量産を始められる。と喜ぶテマリさん。
しっぽがたってるので、喜んでくれてるのがよくわかる。
「さて!お礼の前に、聞きたいことがあるにゃ!」
「なんでしょう?」
「もしかして、花夜ちゃん猫好きにゃ?」
バレてる?!……ずっと耳としっぽ見てたからかな。
「動物全般大好きです!」
「なら、お礼はこれできまりにゃ!」
そう言いながら、1組の耳飾りを差し出される。
「ピアス穴がなくても大丈夫!埋め込まれた妖界産磁石を使った、取れにくさは折り紙付きのマグネットピアス!」
「これも何か効果があるんですか?」
「もちろんにゃ!これは、人間以外とコミュニケーションを取るためのピアスにゃ!」
まさか動物の言葉がわかるようになる?!早速つけてみる。
「動物以外にも、ヒトガタじゃない野生妖怪とも話せるようになる助手の仕事でもお役立ちな便利アイテムだにゃ!」
ちょうどそのタイミングでツキさんが帰ってきた。箱はどこかに置いてきたらしいが、手には紙袋が握られていた。
「ツキさん!おかえりなさい!」
「あぁ!そのイヤリングがお礼か?いいの貰ったじゃねぇか。」
似合ってるぞ!と笑うツキさんに頭をくしゃくしゃ撫でられる。
ちょっと照れくさいが
褒められたのは素直に嬉しかった。
「テマリ!ちょっと頼みがあるんだが、これ加工してくれねぇか?」
ツキさんはそう言うと、月の形の石を渡す。
何かを察したテマリさんはそれを受け取ると
「すぐできるから待っててにゃ!」
そう言うやいなや、店の奥に消えていく。
「ちなみに、何してたんですか?」
そう聞くと、ツキさんはドヤ顔で手に持った紙袋を少し掲げる。
「助手がついたのは久しぶりだからな!仕事道具の調達と、お前に必要なものを準備してきた。」
今まで仕事してなかったんですか…?という疑問は飲み込み。
気になったことを聞く。
「わたしに必要なもの…?」
「詳しいことは今から会うやつにしっかり聞けるから。ほら、テマリ来たぞ。」
気が付いたらテマリさんがカウンターに出てきたところだった。
本当に早かったなぁ
「お待たせにゃ!これで大丈夫かにゃ?」
手に持っていたのはさっきの石に青の小さな石を埋め込み、金色のチェーンを付けたネックレスだった。
それを見たツキさんは、 納得したように頷く
「最高だ!さすがテマリだな。」
「お得意さんの頼みには全力でこたえるにゃー。」
ツキさんは受け取ったネックレスを
私の首に付ける。
???
「助手さんには、仕えてる神様が誰かわかるものを渡すのが決まりなんだにゃー!」
なるほど
「あ!俺が説明しようとおもったのに……」
ブツブツと言うツキさんは見なかったことにし
ネックレスをながめる
……はめられてるこの青い石、さっき見たような…
「それはさっきの傷を治したネックレスと同じ石にゃ!よく怪我しそうだからおまけ。」
テマリさん、めちゃめちゃいいヒトだ…!
「ツキさん、テマリさん、ありがとうございます!」
「いえいえ、助手頑張ってにゃー!」
手を振るテマリさんに手を振りながら、私とツキさんは店を後にした。