助手?になったようです
「おい……いい加減泣きやめよ……」
「あ''〜〜ひな''た''ぢゃーーん……」
ひなたちゃんとお別れから1時間後
未だ私は泣きやめずにいた。
「…また会えるっていったろ…ほ、ほら…ティシュやるから…」
最初は呆れた顔で見ていたツキさんだったが、私のあまりの泣きようと周囲の目線に耐えきれず
私の背中を擦りながらオロオロしだした。
「あ、あの…そこ通りたいんですけど…」
「あ''……ずみばぜん…」
(…ここで泣いたら迷惑をかけてしまうな…)
ツキさんからティッシュを貰い、勢いよく鼻をかむ。
「すいませんでした…あんまりにも寂しくて…」
立ち上がりながら、ティッシュのお礼をツキさんに言う。
「おー、泣き止んだなら、街の見物でも行くか?」
見物……?
あの世に私たちが入っても大丈夫なのだろうか。
「入るのはあの世じゃねぇよ。入ってもいいけど、時間制限やらなんやらでめんどくさいから、今回は妖界。」
妖界…?
「魔界的なアレですか…?」
「間違っちゃいない。いるのは妖怪やら神やらだがな。」
なるほど…ツキさんのお仲間(?)がいるのか…
楽しそうだし、行ってみたいな。
「行きます!!」
んじゃ決まりだな。と言いながら、ツキさんは別の階段に歩き出す。
にしても、たくさん階段があるなぁ…
「階段多すぎじゃないですか??」
「まぁ、ここで迷子になるやつも多いからなぁ。来る時は気をつけろよ。探すのに2日はかかるから。」
絶対入らないから大丈夫です。
ビビりにほの暗い階段ソロ攻略は不可能。
「そういえば、ここは真っ暗じゃないんですね。ちゃんと階段見えます。」
「入口のアレは、生きてる人間の迷い込み防止だからなぁ。妖界に行くだけなら別に出入口もあるし」
夜目が効かない妖怪もいるらしいのでここは割と明るいのだとか。
なるほど…というか。
「私、妖界?に入って大丈夫なんですかね……食べられたりとか……。」
得体のしれない妖怪にパクッと1口食べられる所を想像してしまう。
「人喰いは確かにいるけど、勾玉食ったヤツは食べれないようになってるから安心しろ。せっかくできた人間の助手喰わせるかよ。」
あぁ……なら安心…?
「今更なんですけど、助手ってなんなんですか…?」
「あ?まだ言ってなかったっけか。」
歩きながら、色々と説明をしてくれた。
長かったのでまとめると
・あの勾玉は、本来は直接手伝いをさせる巫女をつける時等に飲ませるものでスキマへの通行許可と、妖界での安全を保証するものである。
・勾玉は飲んでから死ぬまで有効で、期限切れで効力は切れない。
・ただ、飲ませた以上スキマや妖界に人間が自由に出入りできるようになるため、飲ませた側にも責任が生じる。
・人間の助手も欲しかったのと、それ以外にスキマに連れていく方法が見つからなかったので飲ませた。それはすまん。
と、そんな感じだった。
「それについては理解しました。
…にしても、猫ちゃんとの約束を果たす為にそんな面倒なことをするなんて、優しいんですね。」
「1回約束したら守らなきゃいけねぇんだよ。カード減点になるから。」
カードのような形の木札を手でプラプラさせながら言う。
「ちなみに、ポイントって復活するんですか?」
「んー、1点復活に20年だったかなぁ。」
…長い。
「ちなみに私は何をすればいいんでしょう?」
「あ?説明も無しに助手にしたんだから、最初はそこまで仕事させねぇよ。さすがに」
「そうですか」
すこし安心した。まぁ、成り行きだけど、ツキさんはいい人そうだし
助手?も悪くないかもしれない。
何より暇だし。
「まぁ最初は主に社の掃除とかだな。あ、虫とかダメなら先に言っとけよ。
あとは何か仕事が出来た時、それのサポートだけど……」
……当面はお掃除になりそうだ。
仕事はほぼ来ないから安心しろ。との事だが。
「着いたぞ。この街広いからはぐれるなよ。」
今度はゲートなんて物はなく
扉を開くとすぐに街が広がっていた。