縁の勾玉
評価、感想等お待ちしてます!
「ーと、ここまでがひなたが話してくれたことだな。」
……気が付いたら、私は泣いていた。
つまり、ひなたのお兄ちゃん…あの幽霊は
殺されたのだろう…
ひなたの飼い主は、おばあちゃんではなく、おばあちゃんの息子だった…ということだ
「でも……ツキさんがさっきお祓い(?)したから、ひなたのお兄ちゃんはちゃんと天国に行けたんです…よね?」
すると、ツキさんは渋い顔をした
「それが……まずいかもしれん」
「え?」
少し焦った様子のツキさんは
私に分かるように説明を始める。
「あの除霊マッチは、そこそこの効力は保証されている。もちろん、俺が殴ったのも効果はある。けど」
けど、なんなんだろう
「還り道までは…示せない。」
ツキさん曰く、人間は死後の世界からこちらに来て、死んだら元の場所に還るのだという。
しかし、こう時間が経ちすぎたモノは、帰る場所を忘れてしまうらしい。
現世に居場所を縛られてしまうのだ
「還れないと……どうなるんですか」
「道が分からなければ、永遠にスキマをさ迷ったままだ、苦しみながらな。」
「そんな……」
ツキが神様なら、何とか出来ないのだろうか
「神は、人間の魂まで自由にはできない。仮に俺が魂を無理くり向こうに持って行っても、もうそれはただの抜け殻だ。精神をひっぺがされるようなもんだからな。」
「じゃあ、どうすれば……」
うんうんと頭を抱える私に、ツキさんは問う。
「……別に、お前にはそこまでする理由はないだろう。」
…たしかに関係ない、理由だってない、けど
「こんなに困ってる猫を助けるのに、理由なんていらないでしょう。」
それに、と付け加える。
「帰り道が分からないのは、怖いですから。」
「……お前は度胸があるんだか、ないんだかどっちなんだ…。」
そう言いながらも微笑むツキさん。
「分かった、教える。ただしそのままじゃダメだ。」
「え?」
「まぁ、丁度人間の助手も足りてなかったからな。」
懐から勾玉を取り出すと、私に手渡す
「これは?」
キラキラと光り、山吹色をしている。
「縁の勾玉だ、それを飲むと人間には見えないものが見えるし聞こえる。俺とお前の縁を強くするものだな。」
「よくわかんないけど、これ喉に引っかかったりしない?」
「オブラートいるか?」
「そういう問題じゃない気がする」
……悩んでても仕方ない。飲もう!!
「っ!…………っぷぁ〜!詰まるかと思っ……た?」
体が山吹色の光に包まれる。光が止むと、暗かったはずの外が明るく見えた。
「え?!なにこれ?!」
「常世蛍が見えたんだろう、あれを辿ればスキマに行けるぞ。」
ほら、と手をだすツキ。
その手を取り、歩きだす。
足元のひなたを抱えて、向かう先は、スキマの世界。
私の日常は、今日から非日常になる。
そんな気がした。
次回、スキマの世界へ…!
ひなたのお兄ちゃんを助けることはできるのか?!