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除霊(物理)

「さてと……これ見たあとなら話は早い。お前、最近顔色悪くなかったか?体調は?」


言われてみれば、特別悪くもなかったが、良くもなかった気がする。


「まさか……」


そのまさかだ、と言いながら体制をたて直した化け物にもう一撃くらわせるツキ。

弧を描き飛んでいくソレから目を離さず、話し続ける。


「こいつはお前を狙ってた悪霊だ。……弱らせてから食うつもりだったらしい。」


さっきの事を思い出し、首を抑える。

ぬるりとした感触に、血が出ていることに気が付き、ゾッとする。


「昨日お前の家に俺が行った時には、かなり近くに来ていた。思ったより面倒くさそうな相手だから、応急処置だけして帰った。」


応急処置……?


「スープ、飲んだろ。うちの境内付近にある湧き水を入れておいた。」


最悪、飲んでいなくても置きっぱなしにしていればこういう類のモノが寄り付きにくくなるという。


「ま、結果飲んでてよかったけどな」


……たしかに、もしかしたら首の傷だけじゃ済まなかったかもしれない。


「…ありがとうございます…でも、どうして?」


「どーいたしまして。…理由は後だ。湧き水に触れて、若干弱ってるからな。先にアレ倒すぞ」


あれだろうか、狐の神様だし、なんかカッコイイ術を使ったりするんだろうか。

少し期待を込めてツキをじっと見る


「……なんだよその目、そんな特別な事はしないぞ」


そう言いつつ、拳を握りしめ、構えるツキ。


「被りたくなけりゃ、下がっとけよ」


ん?被る?


刹那、既によろよろとしている悪霊に向かって

ーー殴りかかった。


「オラァァァ!!!」

「物理!!!」


弾け飛ぶ悪霊。ベチャッっと嫌な音を立てて、悪霊だったものがそこらに散らばる。



あ、ちょっとかかった

「いやぁぁあかかったぁあ?!?!」


「だから下がっとけっつったのに……しょうがねぇなぁ……」


手ぬぐいで着いてしまったモノを拭き取ってくれた。


「う…アリガトウゴザイマス……オェ」


「お願いだから今吐くなよ。」


ため息をつくツキを他所に、あたりをちらりとみる。


……悪霊の欠片というか、肉片というかがピクピクと動いて…動いてる!!?


「あああああの、あれ動いてるんですけど?!」


ん?ああ、といいながら、ツキが肉片に近づく


「そりゃいっぺん死んでるんだから砕いたところで死なねぇよ、燃やさないと」


狐火とかそういうので燃やすのだろうか?


ちょっと待ってろよ、と言いながら懐を探す。

……何を探しているんだろう。


「お、あったあった。さて、景気よくシュッとな。」


「まさかのマッチ!!!!」


取り出したのは薄っぺらい四角い箱に入った、青いしずく型の先端をした、紛うことなきマッチ。

箱には『夏必携!!よく燃える除霊マッチ!』

と書かれている。


「狐火とか疲れるからな〜、いやぁ、便利便利。」


ぽいぽいと悪霊(肉片)を燃やしていく

ツキ。


……わぁ、ほんとだ、よく燃えるなぁ……


「さて、そろそろ燃やし終わったから帰るかぁ」

「あ……えっと、今日はありがとうございました……?」

「何言ってんだ、とりあえず今から行くのはお前ん家だよ。」


え、と困惑する私を置いて、アパートの方に歩いていく。


「待ってくださいよ!!!」


その後を追いかけながら、ちらりと後ろを振り向く。


そこには何も無いところに向かって

寂しそうににゃぁ、と鳴くひなたの姿があった。

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