迷った場所
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人通りもまばらになった夕暮れ時、1人のパーカーを着た女の子が駐車場の隅でしゃがんでいる。
その周りにはたくさんの猫が円を作ってすわっていた。
ふわふわとしたボブカットの髪を揺らしながら、彼女はカバンを漁っている。
しばらくするとその手にはかつお節の袋が握られていた
「じゃーん!今日のお土産はちょっと奮発だよ!」
そう、このかつお節、1パック800円ちょっとする少しお高いものである。
しかもまだ未開封。
袋の封を切ると、猫たちは目を光らせて、今にも飛びつきそうなくらい袋をじっと見つめる。
「てことで……今日も参加していいですか……!」
袋からかつお節を少し手に取り、一際目立つ白い長毛の猫のまえに差し出す。
ここのボスである彼は手に乗ったかつお節を少し嗅ぎ、迷わずひとくち食べると、ちらりとこちらを一瞥し、輪に戻った。
それを境に、他の猫たちがわらわらとかつお節の袋に集まってくる。
「…やった〜!!!」
どうやら合格のようだ。
彼女は星咲花夜
無類の動物好きで、今日も猫の集会に参加しようとしていたところだ。
「はぁ〜……幸せ……。」
猫たちへの手土産を買うことで懐は寂しくなったが、本人は全く気にしていない。むしろ嬉しそうである。
花夜の住む地域には、野良猫はほぼ居ない、理由は分からないが、おそらく猫好きの家が多いせいだろうか。
しかしどうにかして抜け出してくるらしく、よくこうやって集会を開いている。
近くに来た猫がじゃれて来ているのに気が付き、膝に抱き上げる。
この黒猫はひなたといって、花夜の隣の家のおばあちゃんの猫だ。
かつお節がよほどお気に召したのか、膝の上でゴロゴロと擦り寄っている。
控えめに言って天国だった。
「かわいいねぇ〜!……あ、くすぐったいよ〜!」
そうこうしているうちに、本格的に日は沈み始め、猫たちもまばらになってきた。
「さて……そろそろ帰ろうかな」
膝の埃を払い、立ち上がろうとしたその時、花夜の首にかかるネックレスが揺れる。
瞬間、足元にいたひなたが飛び上がり、ネックレスの紐に噛み付いた。
フェイクレザーの紐はいとも容易くちぎれ、あっという間にそれはひなたの口にくわえられる。
「あ!だめだよ、かえして!」
あせる花夜はお構い無しに、くるりと背を向けて歩き出すひなた。
「まって!!」
バックを置き去りにするのも構わず、急いで追いかける。
路地をぬけ、道路を渡り、着いた先は林。
するりと木の間を抜けていくひなたとは逆に、枝に頭をぶつけたり、根っこにつまづきながら、よたよたと追いかける。
やっと林を抜けたら、そこには古びた神社があった。
夜の雰囲気と相まって幽霊でも出そうな雰囲気のそこは、ビビりな花夜の足を止めるには十分だった。
しかし、あのネックレスは、大事なものだ
なんとかして、取りに行かないといけない。
そろりと、一歩踏み出す。
足元にあった小枝がパキリと乾いた音をたてて折れ、カラスがギャアと鳴きながら飛び立った。
「………………」
顔面蒼白。足が震えてきた。
もう一歩、踏み出そうとすると、今度は社からガタンッと音が聞こえた。
「あーーーー!!!」
限界だった。
石につまづいた後、自分でも驚くスピードで林を走り抜けると、元の駐車場に戻り、カバンを抱えて走り出す。
自宅のアパートの階段を駆け上がり部屋に着くと、服もそのままにベッドに飛び込み、布団を被り
そのまま爆睡。
丸まった布団をベランダから白い影が見つめていた事は、花夜は知らない。