4話 発現
部活帰りの道、今夜もまた、彼女のいるコンビニへ夕食を買いに行く。別のコンビニに行こうと考えていたが距離があってめんどくさいので結局やめた。
コンビニ前まで来て、中を少し覗くと掃除をしている彼女の姿があった。他の客は見当たらない。
昨日、あのようなことがあってただでさえ、気まずいのに客が俺一人とは……
やっぱり、別のコンビニを当たろうかと思い背を向ける。
「沙奈ちゃん!なにしてるのよ!」
が、後ろの怒鳴り声に足を止められる。なんだ、また怒られてるのか?
呆れ気味に後ろを向くと、かなり予想外の光景が広がっていた。
彼女が持っていたモップが地面に放り出され、彼女はアルバイトの制服を脱いで地面に叩きつけた。
「ただ、指示に従っては大したことでもないのに怒られる。こんな無意味で不快な時間は必要ないわ」
そう言って、彼女はこちらのいる出入口へと向かってきた。
「えっ?どういう状況で……」
彼女はドアを荒々しく開けると、動揺しているこちらを気にもとめず通り過ぎていく。
「なんなのよあの子……!急に人が変わったみたい……」
人が変わった……?
『二重人格者が連行されたあと、どうなるか知ってるか?』
『拷問されるらしいぜ……』
気がつけば、走り出していた。おそらくあの店員はもう気づいている……急いで彼女を見つけないと……!
彼女が向かったのは学校方面だ、しかしそれだけではどこへ行ったかわからない。とにかくがむしゃらに走り続けた。
しばらく走って大野橋までくると川のほとりで彼女が歩いていた。
急いで駆け寄ると、彼女は振り返って
「あなたは……昨日のお客さん……ですよね?」
そう、冷静に答えた。
「あっ、そうなんですけど……」
追いかけてきたはいいものの、どうしたらいいのかわからない……
「あの……すごく変なこと聞いてもいいですか?」
「えっ?は、はい……」
彼女は困惑した顔でうつむき、言った。
「私がなんでこんなところにいるのか知りませんか?」
整理がつかない俺の頭は、彼女のその言葉でオーバーヒート寸前となってしまっていた……