3話 恐ろしい話
アホみたいに眠い4時間目が終わり、昼休みとなった。不思議なことに授業が終わるまでものすごく眠かったのに、いつも昼休みに入ったとたん眠気が吹っ飛ぶのだ。これは、新しい学校あるあるにならないだろうか。
朝、買ってきた菓子パンをカバンから取り出していると隣から声をかけられた。
「夜月、2週間ずっと菓子パンじゃんかー。この前みたいに弁当もってくればええのに」
こいつは、このクラスで唯一の話し相手と言える博也だ。目立つのを好まない俺に対して、何故か構ってくる。
「この前、弁当食ったら5時間目の体育で出てきそうになったからな。菓子パンならそんなことは起きない」
「あははは!お前が吐きそうになるくらい体育がんばるっとるようには見えんけどな!」
「うるせえなー、出来るやつより、出来なくても頑張るやつの方が先生からしたら評価高いんだよ」
「ポジティブ思考なんか現実逃避しとるんか、よう分からんなー」
いちいち、うるさいやつだ……
「そーいや夜月、朝お前家の近くのコンビニで発現者おったんやろ?」
まさか、今朝のことを聞かれるとは思っていなかった。もう噂が広まっているということか。
「ああ、40代くらいのおっさんで、奇声あげたりしてたから思わず足が止まった」
そう説明すると、博也は頷くと同時に少し顔をしかめた。
「発現者が連れていかれた後、どうなるか知っとるか?」
「二重人格の治療を受けるんだろ?一体、どういう治療法なのか気になるけどな」
「あれ、ほんまに治療なんやろうか?」
思わず、手が止まった。
「どういうことだよ……?」
そう聞くと、博也は少し間を置いてから口を開いた。
「噂に聞いただけなんやけど、連れていかれた人らは拷問されるらしいんや……」
「拷問……!?」
抑えたつもりが、あまりの驚きに少し声を上げてしまった。
「昔、息子が二重人格者やと発覚した家庭があったらしいんやけど治療を受けて帰ってきた息子の体に傷が何箇所かあったらしい。そん時、息子は帰り道で転んだとか言うてたらしいんやけど……」
「それくらいなら、本当に転んだだけなんじゃないか?」
「それが、その息子夜な夜な急に叫びだしたらしいねん『痛い!痛い!』って」
「うわ、急にホラーだな……」
こんな、恐ろしい話が本当なのかどうかは知らないが何にしろ治療というのがなになのか少々、ひっかかる。
「まあ、ただの噂話やしあんま気にせんとこや!」
「お前が始めた話だろー」
本当に……恐ろしい話だな。