1話 コンビニ騒動
夏が過ぎ、暗くなる時間帯がだんだんと早くなってきた頃。部活帰りの俺は、晩ご飯を買いにコンビニへと向かっていた。
最近、文化祭が近いため文化部は出し物を必死になって作っている。俺の所属しているコンピューター部も必死というほどではないがボチボチと出し物を作成中である。
だらだら歩いていると、コンビニの前まで来た。親が2人とも海外出張で一人暮らし中の俺は、ほぼ毎日このコンビニにお世話になっている。
「いらっしゃいませー」
中に入ると、聞き慣れた店員の声が聞こえてきた。毎日、俺がここに来ているためか顔すら向けてこない。
そんな愛想のない、店員の前を通りいつも通り弁当売り場の前へと立つ。ところせましと並んでいる弁当だが毎日来ているので、すでにコンプリート済だ。
とりあえず、3日前に食べた牛タン弁当がまあまあ美味しかったので今夜はそれにすることにした。
弁当を手に取り、レジに向かうと無愛想な店員は他の客を相手していて、反対側のレジは誰もいない。しかし幸いなことに無愛想な店員が俺に気付き奥にいるであろうもう1人の店員に声をかけてくれた。
「す、すぐに行きます……!」
反応したのは、女の子だった。声的に自分と歳が近そうに感じるが。
そんなことを考えてレジの前で待っていると案の定、出てきたのは高校生くらいの女の子だった、なるほどアルバイトなわけか。
まだ慣れていない手付きで彼女は弁当のバーコードを読み取り、レジに数字を打ち込む。
「340円に……なります」
緊張しているのか、顔を下に向けてそう言った。
なんだか、こちらまで気まずい気持ちになってきたのでササッと財布を出し小銭を出そうとすると
「沙奈ちゃん!また温めますかって聞いてないでしょ!?」
「っ!すっすみません!」
無愛想な店員に叱られ、肩をびくりと震わせ慌てふためいた様子で彼女が頭を下げる。
「私に謝ってどーするのよ!お客様に謝りなさい」
「あっ……ごっごめんなさい!」
続けてこちらに頭を下げられたので思わずこちらまで、びくりとした。
「別に温めなくて良かったので、大丈夫ですよ……」
そうフォローを入れずにはいられなかった。
俺の言葉を聞いて怒っていた店員は、「気をつけなさいね」とつぶやきレジの奥へと入っていった。
「あの……ありがとうございました」
そう言って彼女はまた頭を下げた。
「いえ、別に大したことしてないですから……」
彼女との間にまたもや、気まずい空気を感じた俺は出した小銭をレジに置き、そのまま弁当を持って店を出た。いつもと同じ、弁当を買いに行くという簡単なことが今日はとてもしんどく感じた。
さあ家に帰ろうとしたその時、突然、さっきの彼女が慌ててこちらに駆け寄ってきた。
「あの!お箸入れるの……忘れちゃってて」
「あっ、どうも…… 」
これは明日から、コンビニを変えた方がいいかもしれない……