母のような昔の恋人
彼女はいつも涙を隠して、嵐のように感情の起伏が激しかった私のそばにいてくれた。
大雨の日には背中をさすり、陽気な日には私とともに笑い、酷暑の日には暑さに怯えながら私のために水を汲み。
そうやって私は、何度も挫けそうになりながら歩みを進めてきた。
大いなる彼女からの愛に支えられ、ここまで進んできた。
反面、彼女がくれる大いなる愛情にどう報えばいいのか分からなくなってしまった。
どんなものを贈れば彼女に恩返しできるのか。路傍に咲いた小さなタンポポの花では釣り合わないくらい大きなものを、彼女からは受け取りすぎたのだった。
私は彼女を責めた。なんてことをしてくれたんだ、私はあなたのためにこれから何をしてあげたらいいのかわからなくなってしまったじゃないか。
そうやって彼女を責め、怒り、思いつく限りの言葉で罵った。
彼女は何も言えず、ごめんね、と小さく謝った。
私は彼女の元を去った。二度と彼女には会わない。そんな、子供じみた決意とともに。
その期に及んでもなお彼女は、「元気でね」と、小さく手を振っていた。
小さなタンポポでも、私はくれただけでうれしかったよ。
そんな独り言を呟き、ずっと手を振っていた。