第壱話 壊れた異世界のイメージ
「ん?ここは?」
目を覚ますと、そこは見知らぬ草原だった。
そして、自分の格好を見る。
いつも見慣れた黒い服に黒いズボン。
これが、俺、山城 隼の基本的な服装だ。
しかし、ここはどこだろうか?
全く身に覚えが……………
いや、ある。
確か俺は、どこかで何かを頼まれて……………
そこまで思考が及んだところで全て思い出す。
俺は神とかいうやつに魔王によって虐げられている世界を救ってくれ、みたいなことを言われたんだ。
だが、あれは断ったはずだが……………いや、有無を言わせずに無理やり転移ゲートに放り込まれたんだ。
「あの神許さん」
俺が一人恨み言を言っていると、ふと後ろから声がかかった。
「あの、大丈夫ですか?ここで倒れてたんですけど」
振り向いた先に居たのは、青い髪が印象的なまだ若い美女だった。
美女に見とれていると、美女は恥ずかしいのか、顔を背けた。
「あ、俺は山城 隼って言います。助けてくれたのかな?」
「わ、私は、リースって言います。あなたってもしかしてですけど…………」
リースはこのあと、衝撃的な一言を言った。
「異世界の人ですか?」
「え?」
おかしい。この世界の人がそれに気づく訳がないし、何よりそんな言葉すら知らないはずだ。
「あの、私少し特殊で、あなたと同じく転生者だったんです」
俺より先に来ていた転生者。
そんなものは神とかいうやつも言ってなかったし、俺以外が居るなら俺は要らないはずだ。
そんな思考を読み取ったのか、リースが口を開く。
「神にもバレないように、ここに喚ばれたんです。召喚魔法だかの力で」
「召喚魔法!?そんなのあったらいくらでも兵力は生めたはずだ!」
「いえ、その魔導師は一度だけ、この私だけを喚びました。あの人は私なんていうハズレを引いてしまい悲しんだと思います。しかし、彼女は私に優しくしてくれました。それ以来異世界からの人が居たら優しくしようときめたんです」
「その魔導師は今どこに居る?」
その魔導師ならば異世界とのゲートを結ぶくらいなのだから、ワープくらい容易いかもしれない。それを使えばここでの目的も一瞬でクリアできる。
「残念ですが死んでしまいました」