8.炎を纏いし刀
今までと違う二本の刀。
そこにはこれまでに付いていなかったものがそこにはあった。
「刃···刃がついている!それに炎!?」
2本の刀は炎を纏メラメラと勢い良く燃えていたのだ。
「涼介!俺はとりあえず助けを呼んでくる、お前はあのマゾ野郎の足止めをしてろ!死ぬんじゃねーぞ!」
そう言うと針風は地面を掘り、颯爽と姿を消した。
出入り口の障壁を壊して、みんなを避難させたいがそれをあの謎の男が許すわけがない。とりあえずやってみるしかないか。
「おい!そこの野郎!次は俺が相手になってやる!」
「おやおやっ!君は先程の少年!先生がこんなになってるからって助けに入っても無駄ですよ?」
「そんなもんはやってみなきゃわかんねーだろ!」
心配する真白や真黒の声、みんなのやめろという声、アンドレの五月蝿い怒号も聴こえる。
謎の男との距離はひらいているが、この刀の炎を飛ばすことができれば···
「いやー!大した自信です!ではお言葉に甘えてっ···」
謎の男が熊手を振り上げようとした瞬間、俺の刀から炎の斬撃が飛び出し、謎の男目掛けて飛んでいった。
「できた!思い付きだったがこんな技ができるとは」
斬撃は謎の男に命中し、攻撃を繰り出す瞬間に動きを止めた。
「んんーっ!いい!いいですね!先程の黄花と戦っていた時とは別物になってますが、打ち破ったのでしょうかね?」
打ち破る?男も心理を打ち破ることにより再生の剣が成長するのは知っているようだ。
兎にも角にも今は謎の男に攻撃させないように、時間を稼ぐことが先決だ。
俺は斬撃を放ちながら、謎の男との距離を徐々に詰めていく。
離れていた距離もようやく縮まり、剣先が届く距離まで近づいた。
「お前の好きにはさせねー!天上炎火」
謎の男の胸部目掛けて、二本の刀を同時に大きく振り下げた。
今の刀には刃がある、それに炎を纏った刀身は敵の体を燃焼させる。この男相手でも十分にダメージは与えれるはずだ。
刃が当たる寸前のところで左耳からうっすらと不気味な小声で謎の男の声が聞こえた。
「それだけですか···!?」
その声が聞こえた瞬間、俺は左腹部に抉られるような強力な風圧を受けていた。
10メートルは飛ばされただろうか、少し意識が薄れる中、次は右腹部に同様の攻撃を受けた。
「少し期待しましたが残念でした、やはりアンドレ!貴方じゃなきゃダメだ!あぁー!早く!早く!」
壁際に横たわる俺の元に真白と真黒が駆け寄ってくる。
「涼介!!涼介ぇー!!」
「涼介さん!!死なないでぇ!!」
悲痛にも似た叫び声が俺の身の回りで響く。
あれだけのダメージを受けても生きているのが不思議なくらいだ。
再生の剣が成長したおかげでオシリスシステムも強化されたのかもしれない。
「だ···大丈夫だっ···あんなやつにお前達を奪われてたまるかっ···」
まだ体は動く、意識もある。
俺はまだいける!
再び立ち上がりふらつく足元を必死で保ちながら、泣きじゃくる二人にカッコつけた。
「もうやめて!涼介が死ぬのなんか見たくない!」
「私も涼介さんが死ぬのなんて耐えれない!」
必死で止めようとする二人の気持ちはすごく伝わった。
だがここで諦めてしまったらあの時翔馬に伝えた思いを貫くことができない。
「おいっ!まだ全然効いてないんですけど!?マッサージのつもりか!?」
俺は謎の男に向かって気を張った挑発をして、アンドレに向かっていた男の気をそらした。
こちらを向いた男は目を見開き、歯茎をむき出しにしながら狂ったような形相で言葉を発した。
「ぎゃっはは!私は君のように誰かのために戦ってるやつは嫌いなんだよ!目障りなので先に殺してあげましょう!そこの女共々っ!!!」
判断を誤ってしまった。俺はいままで感じたことない本当の殺気というものを感じていた。
間違いなく次こそは殺されてしまうだろう、また結局守れなかった。
「グッバイ!ジ・エンド!」
男が熊手を振りかざそうとした時、地を鳴らす大きな爆発が発生し、男は吹っ飛んでいった。
「別にねー、いい教師気取るつもりはないんだけどねー、なんだかんだねー生徒のこと大切に思ってるんだよねー!」
「先生!!」
絶望を感じ、死を覚悟した俺は復活したアンドレの姿を見て、泣きながら震えた声で叫んでいた。
他の生徒も同じ気持ちだったのだろう、皆一様に先生と叫ぶ。
「キーバーくん、時間稼いでくれてありがとうねー、いきなり再生の剣が変わったってことは心理を打ち破れたみたいだけどどうやったんだろうねー?」
アンドレも心理については理解済なのか。
再生の剣にはまだまだ俺達に知らされていない謎があるのだろう。
「先生、とりあえずその話はあとで、塞がれた扉を開けられないんですか?」
「おっと!そうだったねー、とりあえずこの隙きにみんなを避難させないとねー」
アンドレが扉の前に立った瞬間。
バコォーン!!
爆発に似たような音と共に、塞がれた扉が向こう側から吹き飛ばされたが、破壊したのはアンドレではないようだ。
「危ないねー、まったく来るのが遅いんじゃないのかねー?」
開かれた扉の向こうからは針風と二人の人影があった。
「いやーアンドレ!わりーわりー!まあでも文句なら学園に言えよな!こんな異常事態なのに気づいてもいねーんだからな、知らせてくれたハリネズミに礼を言えよ!」
「そうだアフロ!俺に感謝しろよ?それと涼介!なんとか無事なようだな!」
「ハリネズミ?そのペット兵器ははじめて見るねー?キーバーくんのペットかねー?とりあえず礼を言うねー」
入ってきた男はアンドレと親しい仲のようだ。
男の名は勇吹と言うらしい。
それともう一つの影は担任の葛城先生であった。
「みんな!大丈夫だったか!!?遅くなって本当にすまなかった!」
少し涙ぐむ先生は申し訳なさそうに謝り、みんなが無事なことを確認して胸を撫で下ろす。
勇吹は周りを見渡しアンドレに問いかけた。
「それでアンドレ、侵入してきたやつはどこだ?」
「あのへんにねー、転がってるとおもうけどねー、ただし勇吹、油断はしてはいけないねー」
勇吹はアンドレが指差した方向に向かい歩き始めた時、訓練場の天井を突き破り、一人の女が現れた。
女は倒れた謎の男に近づき胸ぐらを掴み引き起こしながらこう話した。
「臥薪、いつまで遊んでいるつもりだ!黄花は手に入れたのか?」
「くっ···カトレア来たのか···!」
「私は黄花を手に入れたのかと聞いている、どうせ貴様のことだ、楽しくなって目的を忘れたのだろ?」
突如現れた女の姿を見て驚くアンドレと勇吹。
「なんでお前がここにいる!カトレアクリストファー!」
勇吹の声に気づいたカトレアは臥薪を担ぎ上げ、天井に鎖を巻きつけて、ゆっくりと上昇していった。
「4将が二人もいるとは、これは分が悪い、ここは引かせてもらうが、また直ぐに会えるだろう!その時まで黄花は預けておこう」
抱えられた臥薪も続けざまにこう言った。
「アンドレェとそこの小僧!次会えるのを私は指折り数え待っているぞ!」
二人は徐々に小さくなり、いつしか見えなくなっていった。
幸いなことに犠牲者は出なかったが、多くの謎を残してこの戦いは終わりを迎えたのだった。