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再生の維新  作者: グッドリッチ忠勝
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7.心理

 ここはどこなのだろう。

 アンドレやみんなはどこに消えたのだろうか?

 薄暗い空に、だだっ広く広がる荒野。

 木があるが、黒く朽ち果ててその異様な雰囲気を盛り上げている。


 「よっ!そんな狐に摘まれたような顔をして滑稽だな!」


 そう言うと針風は俺の肩から降りて目の前に立った。

 

 「そういえば殺すって言ってたよな?あれはどう言うことなんだよ?それにここはどこなんだ!みんなは!?」


 驚きを隠せない俺に針風はこう言った。


 「ここは涼介の心の中さ!深層心理の中とでも言おう。ただもっとも浅い場所ではあるがな」


 俺は理解が追いつかなかったがとりあえずこんな所に連れてきたんだからそれなりの理由があるのだろう。


 「涼介、お前にはここがどんな風に見えている?」


 「なんか薄気味悪い、不気味な場所にしか見えないのだが···ってここ俺の心の中なんだろっ!?」


 「気づいたか、お前の心の中はこんなにも荒んでいるんだ」


 まさか俺の心がこんなにも混沌としていたとは。

 まだ信じることができない。


 「まあこんな荒んだ心だからこそお前には価値があるのさ」


 荒んだ心に価値がある?

 一体どう言うことなのだろう?

 疑問に思っていると針風が再生の剣について説明を始めた。


 「みなが再生の剣と呼ぶ物体、これはただの無機質な物体ではなく生命体であるとの研究結果が出ている、まだこの物体に関しての謎は多いのだが一つわかっていることがある」


 生命体とは正直驚いた。

 葵学園では入学試験を合格すると同時にそれぞれの生徒に再生の剣が渡される。

 学習では再生の剣に関する史実も学ぶのだが、それには2079年に宇宙より飛来した隕石の中から発見され、量産されたと書かれていた。


 「この再生の剣は人の感情を食べて成長する。人間の喜怒哀楽の感情を。その食べてもらえるかもしれない感情を再生の種と呼んでいる。

でも、ただ普通に人間がその感情を抱くだけでは再生の剣は成長しない、こいつを成長させるにはその深層心理にある感情を完全に打ち破らなくてはならないんだ。

打ち破るという意味合いは人それぞれで、特に決まっていないからそこが難しいんだがな」


 深層心理に深く関わっていることは授業でわかっていたが、再生の剣にそんな能力があったとは···

 しかし打ち破るということが、どのようにしたらいいのかわからないのが問題点だ。

 

 「涼介の深層心理にある種は4つある、ここは最も浅い場所ではあるがお前があの変態マゾ野郎と戦って時間を稼ぐほどには成長できるだろう、まあ打ち破れたらの話だがな」


 4つ!?多いのか、少ないのか分からないが···

 だがまあ今はそんなことより早くここから出てみんなを助けることが先決だ。


 「でもよくわかってないんだろ!?どうすればいいんだよ!?」


 「ここはお前の深層心理だと言ったよな?まあ浅い深層心理の層だからすぐに鍵は見つかるさ!」


 針風がそう言った直後、暗闇の中から得体の知れない者が姿を表した。

 その姿は腹部に大きな穴を空け、空洞のように開いた穴からは顔が飛び出していた。


「一体なんなんだよこいつは!?」


 お腹に大きな穴が空き、そこからは人の顔が飛び出している。今まで見たこともないその恐ろしい姿に俺は体を硬直させた。


「涼介!そいつはお前の心理の化身だ!とりあえずぶっ叩け!」


 ぶっ叩けと言われても足が竦んで動かない。

 その化物が徐々に近づき5メートルほどまで近づいた時お腹から出ている顔の正体がわかった。


「ま···さか、翔馬!」


 俺が殺された時巻き添えを食らって死んでしまった翔馬。

 これが俺の抱えている心理なのか。

 確かに拭いきれない自責の念にあの事件以来駆られていた。

 見た目は化物ではあるが、翔馬の顔だとわかった時、謝らずにはいられなかった。


 「俺が···いや俺の力が無かったばっかりにすまなかった···俺は生き返ったが、翔馬、お前だけ死んでしまって···」


 「そうだ!涼介が撃たれたばっかりに巻き添えを食った!それにお前だけ生き返るなんて許せない!俺にもやりたいことがたくさんあった!お前のせいだ!」


 俺はその言葉を聞いて、胸が張り裂けそうな懺悔の思いでいっぱいだった。

 言葉を失い、立ち尽くしていると針風の声が耳をつくように語りかけてきた。


「涼介!これはお前にしか乗り越えることができないから、俺から特に言えることは無いが、ここでお前が打ち破ることができなければ、あの姉妹や他の生徒もあの場で死ぬことになるだろうよ。お前で見つけるんだ!この心理の先を!」


 そうだ···真白や真黒、京香や他の生徒たちまでまたなにもできずに殺されるのを許すことができるのか·····


 否!!


 薄く霞んでいた俺の心に使命感という強い光が射した。

 ここで打ちひしがれて、何もしないわけにはいかない!


「翔馬!先に誤っておく!すまないと···確かにお前の言う通りだ、でも再び貰い受けたこの命、次こそ仲間を救って落としたい!だから!ここは無理にでも許してもらう!!だからここはどけー!」


 全身の力を拳に込めて、全速力で化物に近づいた。

 

「うおぉぉぉー!」


 ここまで力を込めてパンチを繰り出したのは初めてだった。

 化物の腹部に拳がぶつかると一瞬にして、化物は弾け飛んだ。

 

「涼介!打ち破れたのだな、よくやった」


「針風···でもあの化物、いや翔馬は一体?それに針風!お前も何もんなんだよ?」


 理解できないことが多すぎて俺は混乱していた。

 だがどことなく心の荷が降りた気がした。


「とりあえず説明は後だ!ここを出るぞ」



 ブチッ!!


 針風が俺の額に付けた針が取れると深層心理の場所に来る直前の光景に戻っていた。

 血だらけのアンドレと薄ら笑う謎の男。


「針風!とりあえずさっきのであの野郎と戦って時間を稼ぐくらいには強くなったんだよな?」


「多分な!今までのお前よりは強くなっているはずだ、再生の剣を展開してみろ」


 急いで展開を始めてみると、そこには今までと違う二本の刀があった。  



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