高級介護ロボット
その介護ロボットはお婆ちゃんの誕生日にお孫さんのアキちゃんからプレゼントされた。お婆ちゃんはアキちゃんにメロメロで、もちろんそのプレゼントに大喜び、なんでもアキちゃんがお年玉を貯めてお婆ちゃんの為に買ったのだとか。
「こうきゅーかいごロボットなんだよ? 大切にしてね、お婆ちゃん」
アキちゃんはニコニコと笑いながら、そう自分が買った“高級介護ロボット”だというロボットの自慢をした。
そのアキちゃんの言葉に、お婆ちゃんは相好を崩してこう応える。
「そうかい。そうかい。ありがとうね。とっても、大切にするよ」
ただし、お婆ちゃんは子供のお年玉程度で高級介護ロボットを買えるとは思っていなかった。実際、そのロボットは介護ロボットにしては背が小さく、あまり頼りにならなそう。きっと安物なのだろう。
だけれども、お婆ちゃんはお孫さんとの約束を破る気はなかった。可愛い孫が買ってくれたと思うだけで、そのロボットを愛おしく感じる。
まぁ、そのロボットのデザインは少しばかり可愛いかったから、それも影響しているのだろうけど。
使い始めてみると、やはりその介護ロボットの性能は低かった。色々とお婆ちゃんが手伝わないと仕事ができない。お陰でお婆ちゃんはあまり楽にはならなかった。洗濯物や料理、食器洗いなんかを一緒にやる。ただし、お婆ちゃんはそれに不満はないようだった。周りの人間がもっと良い介護ロボットを薦めても「わたしはこの子が良いんだよ」とそう応える。
手のかかるそのロボットの相手をするのは、まるで孫と一緒にいるように思えて、お婆ちゃんは嬉しかったのだ。
「上手くいってみたいね」
そのお婆ちゃんの様子を聞いて、彼女の娘、つまりアキちゃんの母親はそう言った。
「高いロボットを買った甲斐があったわ」
と。
そう。
――実は、アキちゃんがお婆ちゃんにプレゼントしたロボットは本当に高級品だったのだ。アキちゃんが貯金から出したという話は嘘ではないけれど、全てを出した訳ではない。大部分を出したのは母親だった。アキちゃんからのプレゼントという事にした方がきっと効果があると思って、そう言っただけだ。
その高級介護ロボットは、今までのロボットとはコンセプトがまるで違っていて、むしろ人間に仕事をさせる点にその特徴がある。
介護ロボットが普及した事で人間の負担は減ったのだが、それによって新たな社会問題が生まれてしまった。ロボットが何でもやってくれるお陰で、身体を動かさなくなってしまい、“老い”が速く進行するようになってしまったのだ。だから、敢えて仕事を一緒にやらなくてはいけないロボットを造り、老化の防止を狙ったという訳だ。
“便利になる”と言うと、一見人間にとって良い事のように思えるけども、本当にそう言えるのか、少し冷静になって考えてみるべきなのかもしれない。