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第三十三話:学園無双?

めっちゃ長くなりました。


正門をくぐると、目の前に広がるのは敬司の学校のグラウンド以上の大きさの広場だ。


「敷地内にこんなもんがあるなんて…まるで金持ちのための学校みたいだ」


そのまま建物に向かって歩き続けていると、五人の男が視界に入った。

遠くからなので顔は分からないが、黒ズボンに白シャツ、その上からベージュのカーディガン、さらにその上から紺色のローブを羽織っている。


「なるほど、見た目からしてこの魔法学園の生徒だろう。丁度いいから道を尋ねるとしよう」


敬司はその男子生徒達に近づき、声をかける。


「なあ、君達五人はここの生徒だろう?ちょっと道を尋ねてもいいか?」


五人の男子生徒はこちらに気づき、その中央にいた生徒が返事をする。


「ああ、学園の生徒で間違いない。しかし、君は一体誰だ?制服を着ていない事からして、生徒では無いようだが…」


「実は、ここの学園主催の合宿に呼ばれる事になったんだけど、学園に転移した際に一緒に転移した奴らとはぐれてしまったんだ。できれば、合宿の関係者がいる場所に案内してくれないか?」


敬司がそう言うと、五人の男子生徒はお互いの顔を見合わせ何かをコソコソと話し始めた。

そして話し合いが終わったのか、さっきの男子生徒が敬司に質問する。


「もしかして、合宿とは学園選抜魔法強化合宿のことか?」


(学園選抜魔法強化合宿という名前は聞いたことはないが、名前からして俺が参加するものと同じやつだろう)


「ああ、多分そうだと思う」


そして男子生徒はさらに質問を続ける。


「君の名前を聞いてもいいかい?」


「俺か?俺の名前は神田敬司って言うんだ」


その言葉を聞いて、五人は驚きの表情をみせた。別に驚くようなことを言ったつもりはないのだが。


「そうか、君が、神田敬司か…」


すると五人は長さ20センチメートルほどの杖を一斉に(ふところ)から取り出し、それを敬司に向ける。

最初に声をかけた時とは一変、その五人の目には明確な敵意が現れていた。


「え、えと、これは一体?」


「すまないが、君にはここで我々に倒されてもらう」


「は?倒される?どういう事だ!?」


「悪く思うな」


五本の杖の先が光り輝き始める。


(何故なのかはわからないが、こいつらは俺に向かって魔法で攻撃しようとしている?)


敬司がそう思った次の瞬間、


「「「「『ファイア』!」」」」


杖からバレーボール程の大きさの火の玉が生成され、それら全てが敬司に向かって放たれる。

直撃はまずいと咄嗟に判断した敬司は、つい先日覚えたての防御魔法を唱える。


「くっ!『バリア』!」


右の手のひらを前に出すと、前方に直径3メートルの半透明の障壁が展開され、五つの火炎球は『バリア』に(はば)まれ消滅する。


「おいやめろ!いきなり何すんだ!危ないだろ!」


「ウインドブラスト!」

「アイスブロック!」

「ストーンバレッジ!」


敬司の制止の声も虚しく、生徒は攻撃の手を緩める事なく魔法を発動し続ける。


敬司はそれら全てを『バリア』で防いでいたものの、耐久度に限界が来始めていた。


(このまま魔法を食らい続けるのはまずい。状況把握のために一旦離脱しよう!)


生徒側の方も魔法を連続使用して魔力が枯渇した為か、攻撃が一旦止む。


「今だ!」


その隙に敬司は『バリア』を一旦解除、パワーエンハンス、マジックエンハンス、ガードエンハンスを三つ同時に重ねがけする。

そして五人から離れようとしたその時、


「今大きな音がこっちから聞こえた!」

「おい!あそこだ!神田敬司がいたぞ!」

「なにっ!?」

「あいつは俺が倒すんだ!」


今度は建物の陰から二十人程の生徒が現れ、敬司を見つけると一斉に走り出した。


「え…もしかして…あいつらも?」


予想は的中。

彼らが発動させた炎、氷、土、風、雷、光、闇、それぞれの属性の攻撃魔法がまるで雨のように敬司に降り注ぐ。


「おいおい待て待て、俺が何したってんだ!殺す気か!」


敬司はたまらず耐久度がまだ残っていた『バリア』を再発動する。さすがに二十人以上が発動した全ての攻撃魔法を防げる訳ではなく、()って五、六発が限度だ。


しかし、敬司にはそれで十分だった。

『危機察知』と『見切り』のスキルを更に追加発動。襲ってくる全ての魔法を一瞬で確認する。


(炎属性魔法三発、氷属性魔法三発、土属性魔法四発、風属性魔法六発、雷属性魔法四発、光属性魔法三発、闇属性魔法二発。恐らく全て初級魔法レベル。最初に『バリア』に着弾するのは炎属性魔法の『ファイア』二発。『バリア』耐久度限界は各属性魔法で六発。『バリア』破壊までの時間は初撃着弾から約二秒。それまでに別の魔法を発動可能!)


予測の通り、最初に炎属性魔法が『バリア』に着弾。そして六発目の魔法が着弾すると同時に『バリア』が崩れる。

今まさに敬司を倒さんとする幾つもの魔法を前に、相殺の為の渾身の一撃を放つ。


「炎を纏いし龍よ、全てを焦土と変えよ!『龍焦炎舞(フレイム・ドラゴニカ)』!」


敬司の周りを炎が(まと)い始め、龍の形を成した後に上昇し、大量の初級魔法と衝突。

凄まじい爆音を散らしながら直進するその龍は、全ての攻撃魔法を「食らい尽くし」てそのまま空の彼方へと飛んで行った。


(初級魔法合計二五発、相殺完了)


敬司に対する脅威がなくなったことが確認されたため、『危機察知』のスキルが自動的に停止し、思考回路が戦闘用から普通に戻る。


「おい、今の魔法見たか?」

「ああ、あれは第八位界魔法の…」

「大量の初級魔法を力押しだけで相殺しやがった…」

「まともに食らったらやばいぞ…」


さすがに『龍焦炎舞(フレイム・ドラゴニカ)』は想定外だったらしく、生徒の内数人が怖気付いた様子だった。


(できればこれで引いてくれると嬉しいんだが…)


「い、いや、あれだけ強力な魔法を使ったんだ!彼の魔力は確実に枯渇しているはず!倒すなら今だ!」


(あ、そうですか…引いてくれませんか…)


残念ながら敬司には魔力枯渇の心配はない。しかし、先程の言葉で戦意を取り戻した生徒がジリジリと詰め寄ってくる。

気づけば敬司を狙う生徒の数は百人程にまで膨れ上がり、完全に取り囲まれてしまった。


(本当にどうなってんだよ!何で狙われるんだ!一人二人ならまだしも百人以上いるし!とにかく今はこの包囲網から抜け出さないと!)


そう思った敬司はすぐに行動を開始する。

ぐるっと周囲を見渡し包囲が手薄な場所を探し、『スマッシュ』を足に発動。そこに向かって一気に駆け出す。


「動いたぞ!」「捕らえろ!」と周囲が騒ぎ立てる中、敬司は前方に風属性の魔法を放つ。


「『ウインドショック』!」


高い魔力ステータスとエンハンスによって中級魔法クラスにまで強化された風の衝撃波は、咄嗟に防御魔法を発動させた数人の生徒を魔法障壁(まほうしょうへき)もろとも数メートル吹っ飛ばした。

敬司は心の中で「ごめんな」と呟きながら、包囲網に開いた穴を通り、抜け出した。


(よし、何とか包囲網からは脱出できた!だけど何故狙われているのかは謎のままだ。ここは学園で一番偉い人、学園長に会いに行こう。合宿の主催者のはずだから、何とかしてくれるはずだ!)


校舎と思われる建物の入り口を見つけ、そこから中に入る。

学園長は学園長室にいるはずなので、場所がわからない敬司は生徒の誰かに聞かなくてはならないのだが、


「校舎の中にいたぞ!」

「あの包囲網から抜け出したのか!?」

「神田敬司を追え!」


(会う生徒会う生徒皆敵だから聞けないじゃねぇか馬鹿野郎!)


そして校舎に入ってすぐの廊下で三人の生徒に進路を塞がれる。

左右が教室と窓で壁となっているため、前に進むしか道がない。


「ええい!ままよ!」


覚悟を決めた敬司はそのまま前に駆け出した。


「『炎槍(ファイアランス)』!」

「『氷槍(フリーズランス)』!」

「『風刀(ウインドカッター)』!」


対峙する三人がそれぞれ中級魔法を放つ。

2メートルほどの長さの炎と氷の槍と、高速の風の刃が敬司を襲う。


(『危機察知』『見切り』再発動!)


敬司はその三つの魔法の軌道を完璧に読み切り、全てを紙一重で躱しながら進んでいく。

魔法を使って戦ってもいいが、それだと生徒どころか校舎まで破壊しかねないため魔法を使わずに挑む。

そして素早く一人の生徒の懐に入り、鳩尾(みぞおち)に拳の一撃を入れ気絶させる。

残りの二人が倒れた生徒を見て慌てて魔法を発動させようとしたが、クロスレンジでは詠唱は武術のスピードに敵うはずもなく、二人とも敬司の一撃に倒れていった。


(不味いな、このまま戦闘が続けば集合時間に間に合わなくなる。何としてでもこの状況を打破しないと!)


そうして廊下を進んでいると、程なくしてまた生徒と対峙する。ふと後ろを振り向くと、既に後方にも生徒が待機していた。

いわゆる挟み撃ちである。


(仕方がない!倒すしか!)


敬司がそう思い身構えた瞬間、左手を誰かに掴まれる感触があった。


「っつ!」


驚いて自分の左手を見ると、廊下の左にある教室のドアから()えたように伸びた手が、敬司の手を握っていた。


「は!?なにこれ!?」


そしてその手は敬司をものすごい力で引っ張り、敬司は閉じたドアをすり抜けて教室に飛び込んだ。


「うわっ!!一体なにがうぷっ!」


突然の出来事に叫び声を上げようとしたが、後ろから誰かに手で口を塞がれる。

「やられる!」と思ったその時、女の子の声が聴こえた。


「静かに」


「むぐっ?」


「静かにして。大丈夫。見つからない」


普通だったらなりふり構わず逃げ出すようなシチュエーションなのだが、なぜかその声には妙な安心感があり、それに従い敬司は声を潜めた。すると、


「教室に入ったぞ!探せ!」


という声とともに数人の生徒が教室に入ってくる。敬司とその口を塞ぐ女の子(?)は教室の中央にいたのだが、敬司を探しに来た数人は何故か二人を認識できず、


「…いないな、窓から外に出たか?」


といって教室を後にした。

慌ただしい喧騒から一変。教室の中は二人だけになり、一気に静かになった。


「む、むぐむぐむぐ?(あの、そろそろ手を離してくれないか?)」


「ん、ごめんなさい」


敬司は口を塞ぐ手から解放され、後ろを振り向いた。

そこにいたのは、魔法学園の制服を着た、比較的小柄な青色のショートヘアの女の子だった。

目は半開きで、見た目は眠そうな顔をしている。ジト目といえば、わかるだろうか。


「えと、君は俺を助けてくれたのか?」


「うん」


彼女は小さく頷く。


「俺を攻撃しないのか?」


「する必要がない」


「必要がない?どう言うことだ?」


俺が質問すると、彼女はなにも言わずにすぐ近くにあった教室の机を漁り、中から一つの袋を取り出した。その袋はあの有名な駄菓子だった。


「ポ、ポテトチップス?」


「うん。大好き」


彼女は敬司に構うことなくその袋を開け、そのままポテチを食べだした。


「………」


目の前の女の子のあまりにもマイペースな行動に、何が何だか訳のわからないまま彼女を見つめていると、


「………いる?」


敬司がポテチを欲しがっていると思ったのか、彼女が袋を敬司に差し出す。


「じ、じゃあ、一つだけ…」


「どうぞ」


袋からポテチを一枚取り出し、そのまま食べる。


「って!そうじゃなくて!攻撃する必要性がないってどう言うことだ?俺は何で追われてるんだよ!何か知らないのか?知ってたら教えてくれ!」


敬司は矢継ぎ早に質問を投げかけたが、彼女は動じる様子もなく、


「名前は?」


「え?」


「名前、教えて」


「か、神田敬司だ」


「そう、なるほど」


彼女は俯いて少し考える素振りを見せた後、顔を上げ、


「中腰になって」


「何でだ?」


「いいから」


彼女の有無を言わさぬ雰囲気に仕方なく中腰になる。すると、彼女と敬司の目線が同じくらいになった。


「これで、いいのか?」


「うん、そのまま」


彼女はそう言うとポテチがついた右手をハンカチで拭いたあと、両手で敬司の顔をを包み込み、鼻がくっつくほどの距離まで顔を近づけてきた。


「え?ちょ!?何やってんの!?」


「動かないで」


「お、おう…」


そうして数秒間の間、超至近距離で二人は見つめあっていた。


(普通に見た感じだとわからないが、近くで見るとまつ毛が長くてかなり整った顔立ちしてるな)


と敬司が考えた時、


「もう大丈夫。覚えた」


といって手を離した。


「一体何を?」


「顔。目が悪いからよく見えない」


「コンタクトとかメガネとかはないのか?」


「さっきコンタクト落とした」


「そ、そうか。あの、そろそろ聞きたいんだけど、取り敢えず君の名前は?」


「ヒナタ。影浦日向(かげうらひなた)


「日向か、いい名前だな。後もう一つ、俺は何で追われてるのか知ってるのか?」


「うん」


「教えてくれないか?」


「わかった。ついてきて」


そう言うと日向は突然歩き出す。


「どこに行くんだ?」


「学園長室。案内してあげる」


「でも外に行ったらまた騒動が起こるんじゃないか?」


「大丈夫。私達の姿は、誰にも見えないから」

新キャラですね

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