第三話 成金スウェードの悪事
ソフィーが〜……!
家電量販店でMSタブレットを購入した俺は、一旦自宅に戻って荷物を置き、その後自分の仕事場であるはずのコンビニに弁当と夜食に明日の朝飯を購入して再度帰宅。
帰宅後、まずはタブレットの初期設定を済ませて充電。ついでに二つある給電用バッテリーの一つを充電しておく。
さて、では――動画を確認するか風呂にするか飯にするか悩み、風呂を沸かしつつ飯を食べながら動画の確認をすることに決定。
え?欲張り?なんのことだかわからんな。
早速、風呂に水を貯めつつ、カップ麺用とお茶用のお湯を沸かしつつ、弁当を温める。
え?自炊?やってる暇あると思うか?
お湯が湧いたので、カップ麺を開けてかやくを入れてお湯を入れ待つこと四分用にタイマーをセットして、テーブルに持っていく。
チン!
弁当も温まったようだ。しかし、
「あちっ!あちちち……」
温めすぎたようだ。
ま~こんな時もある……あるよな!?
風呂を見てみる。ちょうどいいくらいに貯まっていたので、水を止めて温度を設定――四〇度くらいでいいか。温めにゆっくり浸かると疲れも取れるというしな……。
ピッピッピッとボタンを押して四〇度に合わせたところで――
ピピピ、ピピピ、ピピピ……!
おっとタイマーのアラームが鳴ってしまった。「湯沸かし」のボタンをピッと押して、テーブルへ。
割り箸を割って……
バキッ!
あ……途中で割れやがった……仕方ないか。
カップ麺の蓋を取り、液体スープを投入して混ぜながら麺のだまりを解していく。あーこの湯気がたまらん!
とりあえず、ペン型ビデオカメラからマイクロSDカードを抜いてタブレットに挿入し、録画された動画ファイルをタブレットへコピー。ペン型ビデオカメラには、今日一緒に買ってきた新しい六四ギガバイトのマイクロSDカードを挿入。テストは後でしよう。
ファイルコピーが終了するまで飯にしよう!今日の飯は、今日は豪勢だぞ?醤油豚骨なマ○ちゃん○づくりに、唐揚げ弁当。ご飯はちょい少なめだが唐揚げが七つも入って、さらにマヨネーズと粗塩付きだ。俺は粗塩派だな。なんにでもマヨネーズかければいいなんていうマヨラーの気持ちはどうもわからん。唐揚げにマヨネーズってのも邪道だと思う。唐揚げにレモンはまだ許せる範囲だな。
ん?サラダはないのかって?
唐揚弁当にな、千切りにされたキャベツがたっぷり入っているのだ。ま、温めすぎたことでシャキシャキではなくモシャモシャになってはいるけどな。
さて、説明終わり!麺がのびちまうので、先にカップ麺からいただこう!
ズルっ、ゴホッ!
やっちまった。熱すぎてむせてしまった。
ア?嚥下障害なんて持ってねーぞ。それは心配ない!
さて、唐揚ちゃん!……塩つけて……サクッ!
外人さんがやるように両手の親指、人差し指、中指で何かをつまむようにして小指を立てて〜……さあ皆さんご一緒に!
「ん〜、ジューシー!」
バカがいると思った皆さん、大正解です!否定はしません、俺はバカです!
次はキャベツだ。
そういや「キャベジン」って薬の元はこの「キャベツ」らしい。正確にはキャベツから発見された「塩化メチルメチオニンスルホニウム」(別名「ビタミンU」)らしいけど――キャベツってすごいんだな……
では!モシャモシャモシャ……
やっぱりキャベツはシャキシャキでなきゃいかんな……お、そういやお湯で洗うとキャベツとかレタスが元気になる方法があったな――たしか『ヒートショック現象』とかいったか――けど、もう食べちゃったしな……また今度だな――
さて、残りも平らげて〜――
唐揚が残り二つとなった時、
ポン!
という、なんとも間抜けな音がタブレットからしたので見てみると、どうやらコピーが終わったらしい。
んじゃ、再生してみますか――
映っていたのは、ソフィーが飛んできて何やら喋ってるようだけど声は聞こえず、カメラの前で百面相を始めるところだった。はじめはごく普通に百面相をしていたのだが、徐々に近づいでいって……変顔をする度に鼻の穴がドアップになる。
『ソフィー、もう少し離れないと鼻の穴の中ばかりが映るぞ?』
あ、こりゃ俺の声だな……しかし、自分の声を媒体通して聞くと……
俺ってこんな声してんだな――
って思うよな?な!?
しかし、ソフィーの驚きようとあとソフィーのワンピースから覗く胸の谷間ってなんというか扇情的だな……
あ、違うぞ!俺はロリとかじゃないからな!どうせならクレアさんみたいな女性の胸に――
ハッ!余計なことは考えないようにしよう!触らぬ神に祟りなし!
動画はスペ……じゃなかったスウェードが入ってきたところだ。生で見てもそうだったが、この人を見下すような目つき、なんか腹立つんだよな。目潰しでもしたろか!って思えてしまう――いや、今はしないぞ?せっかく買ったタブレットを買って数時間で壊すなんてことはしたくないからな!
スウェードの水増し受注書もしっかりうつってるし、これでうちの証拠はバッチリだ。あとは、うちの分で過去に水増し請求があったかどうかだけど、それは明日だな。
おっと、メインPCに動画コピーしておくか。
メインのミドルタワーな三年前に買ったゲーミングPC。これが親父からの最後のプレゼントになってしまったやつだな……。まだちゃんと動いてくれてはいるけどな、ゲームにゃ辛くなってきたPCだ。
チャラララ〜
ラッキー7な窓OSが起動して、マイクロSDカードを挿入して、HDDへコピー。
やっぱりこっちのが早え〜な。さすがUSB3は伊達じゃないってことだな。
お茶を啜っているとコピーが終わったので、明日に備えて、スリープだけにしておく。あ、メモリーカードは一応抜いておく。念のため。
さて、明日に備えて寝るか!
あ、明日は金曜だな……そう気付いた俺の頭の中には『夢は叶うよ〜』なバンドの「決戦は金曜日」が流れていた。
翌朝――
ジリリリリリリ……!
ピピピピピピピ……!
リーーンリーーン……!
ポッポー!ポッポー!……
うるせーなー……
一つ止めれば次が鳴り、それも止めれば次が鳴りで、さすがにそれが四つも続けば目が覚めるというもので。
ということで、皆さんおはようございます。
現在、朝六時でございます。
早起きだなと?
そうなんです。いつもより一時間も早いのです。なぜこんなに早いのかというと、動画編集の為です。
昨日メインPCのHDDへコピーしておいた動画から、スウェードとのやり取り部分のみと、みんな大好きソフィーの百面相動画集に分けてエンコードする。
だいたい一時間半くらいで終わりそうだな。
今のうちに朝風呂入って、朝飯食って用意しときますか。あ、制服も一緒に洗濯して乾燥機にかけちゃえ!
え?朝早くから近所迷惑だって?
そりゃだってオメェ、もう七時過ぎてるもんよ。平日のこの時間っつったら、みんなバタバタしてんべ?近所迷惑じゃなかんべ?
お前どこ人だよ……
自分で自分に突っ込むって、なんか寂しい……
――――
そんなこんなで、九時でございます。
制服にものり効かせてアイロンかけてかばんの中に入れたし、昨夜充電しておいた緊急時用の給電用バッテリーとソーラーパネルも入れたし、もう一つの予備のバッテリーも準備完了。
大事なタブレットもキーボード付きカバーセットして、専用の低反発なカバーにも入れてカバンの中にナイナイして。
財布も持ったし、ハンカチ、ティッシュもOK。戸締まり、ガスの元栓、シャワーの締め忘れ、電気の消し忘れ、無駄なコンセントの抜き忘れ……よし、大丈夫だな。
あ、今日は燃えるゴミの日だったな。
ダンボールも細かく裁断して袋詰したし、ゴミ袋をいつもの倍の二袋を持ってご出勤!
ちょうど旦那様をお見送り中の一〇一号室のご夫婦と遭遇。玄関先だというのに、この二人のアツアツっぷりは……
――リア充爆発しろ!――
は!?なんか変な声が聞こえた……あぶないな俺……
アツアツのお二人さんにご挨拶して、コンビニへ向かう。
因みに一〇一号室のご主人は、お医者さんだ。大学病院に勤務している方で、将来は小さくてもいいから自分の病院を持ちたいそうだ。素晴らしいご主人だ!
そんなご主人に対して、大家な俺は異世界のコンビニでアルバイト中だったりする――
あ~、なんか空が高いな〜……
☆☆☆ ☆☆☆
いつも通り鍵開けてドアくぐって異世界の王都エーリシアのコンビニ「カータル」へやってきた俺。更衣室で制服に着替え、窓から見える真っ青な空を見て、予備充電池のソーラー充電を試すのもアリだなと思った俺は、事務所に戻って出窓になってるところに折りたたみ式のソーラーパネルを展開して予備充電池を接続。
おー!充電してるな〜!
よしよし!と、開店前のみんなを事務所に集める。
「なに始めるの?つまんなかったら雷撃食らわせるわよ?」とはツンデレ超美人エルフさん。
「にゃんか楽しいことでもするのにゃ?」初出演、接客主任の三毛猫族のミーラ・ウォルシュさん。二二歳!同い年!
「ショウタがなんか面白いことするって聞いたんだけど?」とは荷受番頭のトラ族のカール・モーガンズさん。三九歳愛妻家の頼もしいおっちゃん!
「なんだ?面白いことって?」とはカールさんの部下で人間族のガストン・レンフィールドさん。恋人募集中の兼業冒険者さん。兼業とはいえCランク!この世界ではGランクからSランクまであって、Sランクはクレアさんのひいお祖母さんにあたるソフィアさん以来出でいないそうだ。
その他十数名の店員さんが集まってきて、ようやく店長のグレイグのおっさん登場。
「なんじゃなんじゃこの忙しい時に……」
いや、あんたが忙しそうにしてるの見たことないんだけど……面接だってコーヒー一口飲んて「旨い」って言っただけで「合格!」だったしな。
『もう、な~に~?みんなうるさいから起きちゃったじゃない……』
そう目をこすりながらふわふわ飛んできたのが、クレアさんの風の精霊ソフィー、真打ち登場!
ってことで、とりあえずソフィーに目を覚ましてもらいましょうか。
ポチッと、動画ファイルを再生。
再生するは、ソフィーのドアップ百面相劇場!(鼻の穴はなし!)
再生された瞬間は、みんなポカーン。
そして、大爆笑!
「ソフィー、お前あんな変な顔すんのかよ!」
「ソフィー可愛い!けどオカシー!」
「もう腹いてー!」
「ソ、ソフィー、私にはあんな顔してくれないのに!今度鏡でも与えてみようかしら!」
飼い主……ちがった、主のクレアさんまでがお腹を抱えて笑っている。
みんながお腹抱えて笑ってるのを不思議そうに見るソフィー。その目がようやくタブレットの画面に移った。
『ンなッ!』
ソフィーはそう一言だけ発すると固まってしまった。
「ソフィー、お前さんのあの顔をうちの看板に載せようかの!」
なんていうグレイグのおっさん。かなりツボに入ったらしい。
『シ、ショウター!』
顔を真っ赤にして手に稲妻を纏わせる。
あ、ヤベ!怒らせちまったか?
と思いきや――ひらひらと木の葉のように落ちていくソフィー。
『お、お腹空いてて力が〜……』
おいおい――
落ちてくるソフィーを捕まえてテーブルの上に下ろし、昼の足しにでもしようかと持ってきておいた「カロリーのお友達」なブロックスティック一本と、ミネラルウォーターをペットボトルの蓋に注いでソフィーの前においてやる。
『あ、ありがと……ショウタ……』
とブロックスティックをポロポロこぼしながらガツガツ食べ始めるソフィー。時々こぼしたやつをひょいと拾ってそのまま口の中へポイ……
ソフィー、少しは慎ましく食ったらどうなんだ?
お淑やかとは無縁のソフィーであった――
ソフィーがブロックスティックな『カロリーのお友達』を完食してから、昨日のすぺ……じゃなかった、スウェードの水増し受注書作成の様子を再生した。
ところが、みんな計算ができないのか、それとも何か理由があるのか……みんなどこがおかしいのかサッパリな顔をしていた。
なので、予め用意していた受注書の単価、数量、小計に合計の『正しいあり方の表』と『スウェードの表』を見比べさせた。数字は地球のアラビア数字と全く同じで、進法も地球と同じ十進法なので、計算間違いをしていない限り間違えようがない。
みんながしげしげと二つの表を見比べている側で、俺はスマホの電卓アプリを起動させて検算をする。
よし、俺の計算に間違いはないな!
みんなの反応を待つことにしよう――
一方ソフィーはというと――タッチパネルなタブレットで、自分の百面相な動画を見てケタケタ笑っている。
いや、それ自分の百面相だからな?
しばらくして――
「なによこれぇ~!?」
と、声を上げたのはクレアさん。かなりのお冠のようである。ま、そりゃそうだよな。勝手に知らないうちに余計な金払わされてたっていうんだから。
「うわ!?えげつないな、これ……」
続いて気がついたのはガストンさん。ガストンさんはまだ気が付かない上司のカールさんに説明してる。それを皮切りにみんながざわつき始める。
取り敢えずここは収めておこう。今ここで騒がれたら、スケジュール以外なところで警備隊がやってこないとも限らない。そうすりゃ警備隊を通して商業ギルドまで騒ぎは伝わるだろう。スケジュール通り警備隊が来た時までも騒いでいたら、やっぱり同じ状況になるだろう。
まあ、確かにそれもアリっちゃアリなんだけど、どうしてもスウェードに逃げの一手を与えてしまう恐れがある。逃げのイッテを与えない状況が完璧だけど、少なからずその一手を遠くへやっておきたい。
そこで、考えた手は、今日都合よく警備隊隊長のスコットさんからお礼と称してお昼前にお迎えに来てもらえる事になってる。そこで、警備隊にもちょっと絡んでもらおうと考えている。というのも、昨日スウェードが言ってたように『この辺り』は彼の縄張りらしいから、警備隊に情報のバリケードになってもらうつもりだ。
ま、それが無理なら無理で、うちだけで証拠出しておっさんの首根っこひっ捕まえて、俺も一緒に商業ギルドに殴り込んでやるまでだ。
あとは、俺の仕事じゃない。つか、ぶっちゃけ喧嘩は苦手だ。
喧嘩になったら他力本願!それが俺のモットー!……歌舞伎のような「お囃子」が聞こえたような……ま、いっか――
「ねえショウタ、これどういう事よ!」
クレアさんが顔を真っ赤にして目を釣り上げて詰め寄ってくる。違うシチュエーションで詰め寄られたら万々歳なんだけど、このシチュエーションは俺は望んでないのですが……というか、なぜ俺が詰め寄られているのでしょうか?
「と、取り敢えず、クレアさん落ち着きましょうか……」
「私は落ち着いてるわよ!」
フーッ!と怒った猫みたいに毛が逆立ってしまった。
ひえー!クレアさん怖いです!
っていうか、誰だクレアさん怒らせたのは〜!
俺の心の叫びを読んでか、クレアさんのマヂギレにブルブル震えながら俺を指差すソフィー。
あ、テメ!コノヤロ!俺を売りやがったな!
『ショウタ、生きてたらまた会おうね!』
ソフィーは一人上空へ退避していった。
あー!クソ!俺にも羽根くれ〜!
つーか、勝手に人を殺すな〜!
「ショウタ〜!………」
「はい〜!」
全身に稲妻纏ったクレアさんがジリジリ寄ってくる。周りを見ると、みんな隅っこに退避して、目のあった奴らがサムズアップしてくる。
お、お前ら……!
さらにガストンさんに至っては……
「骨は拾ってやる!」
とウンウン一人で頷いている。
いや、頷くより助けて?
「ジョヴダ〜!」
いえ、私は翔太です、「ジョヴダ」ではありません!――ってツッコんだら命ないだろうな〜……いや今この時点でかなりヤバイか……
これがホントのジリ貧!
なんてボケてる場合じゃねーよなー……。
あ、助けてくれそうな人発見!クレアさんの父親、グレイグのおっさん!――しかし――
「南無阿弥陀仏……」
縁起でもない!
つか、なんでそんなもん知ってんだー!
「ジョヴダ〜!」
「ひぃ〜〜!」
ビリビリビリビリ……!
「んぎゃぁぁあああああ!」
やっぱりこうなんのか〜!
やっぱ理不尽だ〜!
☆☆☆ ☆☆☆
こっちの時間はどうなってるのか説明しておこう。
というか、全部グレイグのおっさんからの受け売りだけどな――
そこ、「な〜んだ」とか言わない。
えっと……
実は、つい最近までこの国には時計自体がなかったらしい。ではどうやって時間を測ってたのかというと日時計だ。
そう、目印になるものの影の方位、長さで測るやつで地球では約六千年前の古代エジプトで使われていた事が知られているあの日時計が三年前まで使われていたという。
そして、今から五年前。
王都メイン通りの南区画にあるエーリシア中央公園向かいに武具店として「カータル」をオープン。元々一つだった事務所から外へ出るドアの隣にいつの間にかできたドア。そのドアを開けてみたら何故か現代日本に通じていたという。理由は不明。取り敢えず外に出てみたら近くには馬鹿でかい鏡のような建物に、大勢の人、綺麗着飾った女性達、そして、道を煙を吐きながら走る馬車(自動車)、カタンカタンと軽快な音をさせながら空中を走る連結馬車(電車)、バラバラと音を立てながら飛ぶ鉄のハエ(ヘリコプター)。もう訳がわからなかったという。しかし言葉は通じる。けど、文字は見たこともない複雑な記号(漢字)に丸っこい可愛らしい文字(ひらがな)に自分達も使っている文字(カタカナ)。グレイグのおっさんは、この人種はどんだけできるんだ!と目を回してしまったという。
だが驚いたことに日本人は魔法が使えない。精霊も知らない。取り敢えず透明で街を歩いてみたら、色んなところで手のひらサイズの光る板を持って誰かと喋っている。
すぐにエーリシアへ戻り、警備隊を介してお城へ謁見。外貨獲得と現地人間との接触をと国王が仰るので、エーリシアの壺なんかを「質屋」なんかで売ってみたら六〇万円の日本のお金が手に入ったので、七時十一分な『なんでも屋』を真似て弁当やお菓子などを仕入れて売ってみたら売れてきて日本のお金がたくさん入ってきた。
まぁ駅近でのコンビニってだけでも立地いいのに、いわゆるショッピングセンターや商店街が駅の向こう側にあって、かつアパートやマンション、どこぞの社宅とか意外にひしめき合ってるあの区画でコンビニっていったら「カータル」しかなかったので、そりゃ儲かるのも頷ける。しかも、何故かあの区画には大手コンビニチェーンなショップは近寄って来なかったしな。
そこで、日本で使われている「電池で動く時計」なるものを買い、また城へ謁見してみると、魔術師団で改良できないかとなり、今ではかなり高級品ではあるが魔法石で動く「壁掛け時計」が出回っているのだという。
因みに日本式壁掛け時計は一つ一九、八〇〇Gなのだが、魔法石式壁掛け時計は一二、五〇〇Gで、日本式はカータル独占販売と国王が決めたそうで、以降「カータル」は『武具店』から『コンビニ』へと店種別が変わったらしい。本当は『コンビニエンスストア』が地球の正式な名称なのだが、そこも巷の日本人的な略式名称の『コンビニ』が定着してしまったのだろうと思われる。
いやはや、まさかそんなことがあったとは。しかも、なぜ繋がったのか原因もわからないなんてな――
グレイグのおっさんに言わせると、
「そりゃお前さん、神様の仕業に決まっとるじゃねーか!」
という。
つーか、この世界でも神様っているんだな――
因みに、なぜ俺を雇ったのかというと、
「それか?日本でよくいうアルバイトを募集してみたら、さっそくお前さんが現れた。ただそれだけだ」
ハ?えっと――
「大丈夫だって!みんなお前さんを色目なんかじゃ見てねぇから」
「そなの?」
「そりゃお前さん、魔法を使えないような男をだな、自分の旦那にしようなんていう好きものの女はこの国にはいねえさ」
ハイ、俺ここで彼女なんて出来なさそうです。はい……
最近、ネコ耳もいいな〜なんて思ってたんですけど、魔法っすか……使ったことないっすね〜ハハハ……俺、詰んだ?
俺のしている腕時計で、午前十一時三四分。そろそろ昼だなとみんなが言ってる時に、スコットさんの乗る馬車がコンビニ「カータル」へやってきた。
いや~人って凄いね!時計関係なくお昼時ってわかるんだから。
え?それは腹時計?
いや、まぁそうとも言うが、ん〜……
颯爽と身軽に馬車から飛び降りるフル装備のスコットさん。
モテてまうやろ!
――ん?なんか間違ったような……ま、いっか。
スコットさんの装備はというと、約一五キロという甲冑、腰にレイピアを差し、左腕には盾(これも単体で三キロはあるという)、背中には、真っ赤なマントを纏っている。
うちの女性のお客さんの目がみんなハートになってる。
スコットさん、バラを背負いながらの微笑みはどうにかならんものでしょうか……俺当てられてるんですよ……
『ねえねえショウタ!あのカッコイイ人誰?』
お前もかソフィー……
因みにクレアさんはというと、
「はい、三点で四二〇Gになります………ちょうどお預かりします!ありがとうございました!……いらっしゃいませ……」
至って普通だった――
『ねえねえショウタ、アノ人こっち来るんだけど!』
「はいはい、そうだね。あの人はスコットさんだよ……」
俺はソフィーを捕まえて、スコットさんに向けて目をひんむいてやる。
『あー、ホントだね〜……スコットさんってあんなカッコよかったっけ?』
完全にやられてるソフィー。
その夜、あまりに『スコットさんがね』と煩いソフィーにクレアさんがブチ切れて、ソフィーが朝まで恐怖で震えていたというのはまた別の話だ。
最後まで読んでいただきましてありがとうございます!
感想、ツッコミ、ダメ出し……いただけましたら嬉しいです!!
クレア 「ねえ、週一ってのはやっぱり保険?」
翔太 「たぶん、でしょうね……」
クレア 「やっぱり……」
ソフィー「ワタシ、あんなんじゃないよ〜!」
クレア 「なに?」
翔太通訳中...
クレア 「え?ああ!おの百面相?」
翔太 「たぶん、その事だと……」
クレア 「百面相はともかく、いつもあんな感じよね?」
翔太 「ですね……」
ソフィー「うがぁ~!」
ミーラ 「にゃに三人だけで楽しそうな話してるにゃ?」
三人 「あんた誰?」
ミーラ 「それはあんまりにゃ!(TдT)」