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「あ、あ、ああ゛ぁぁぁぁーーー!!」
突然の大声に何事かと人々があたりを見回した。
「どけぇぇぇ!!」
そして、その声のもとは上から降ってきたなにか…いや、人だった。見事に人々が空けた空間に頭から地面に着地した。バギャッという嫌な音とともにゴキッとも音がなる。思わず目を瞑った人々が恐る恐る目を開くとそこには誰もいなかった。
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いってぇなぁ…
なんで空からなんだと思いつつ首の骨をゴキゴキ鳴らしながら歩いて、ついた場所はでかい門の前だった。門の横には兵が2人立っており、周りにもいくらか扮装して歩いているようだった。何も言わずに門をくぐろうとすればやはり止められた。
「何者だ?」
チラリと目線をこちらにやり少年の体をジロジロと見る近衛兵に新人だよ、と言いつつ少年は笑った。
新人…?と訝しげに見る近衛兵にホレと手渡したのはただの紙切れ1枚だった。
『異妖警備邏卒指名者――小鳥遊 鶚』
あぁ、そういえば、さっきも異妖隊指名者がゾロゾロと入っていったなと近衛兵は思い返すと、もう一度その紙切れを見た。その他に書かれていることといえば、日時と場所、差出人だけだった。
「ことりあそび…?」
ポツリと零した近衛兵の一言にブハッと少年は吹き出した。
「ちげーよ、それでタカナシって読むんだ。タカナシ ガク」
ガクという少年はピッと紙を近衛兵の手から抜き取ると通してくれるよな?と目で語っていた。渋々というように近衛兵たちが道を空けると、どーもと笑って奥へ進んでいった。
「タカナシ ガク…」
「アイツ、これからどうなるんだろうな…、“異妖隊”なんてよ」
「さあな、俺達は壱拾参番隊で辞めねぇことをねがうだけさぁ」
「案外、零番隊まで登っちまうかもしれねぇなぁ」
「ま、それは“相方”にもよるけどな」
「ハハッ、それもそーか、さて、俺たちゃ仕事に戻るかね」
「そーだな、頑張れよ新人」
彼等は幾度も此処を通る新人と出ていく落ちこぼれを見てきた近衛兵であり、そんな奴等の会話を聞けるような奴等も此処にはいない。つまりこの近衛兵たちもなかなか侮れないということだ。
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不動 沙羅は怯えていた。周りにいるのは男男男―――。女は自分以外見受けられなかったのだ。そして、その分、女ということが目立っているのか視線が四方八方からビシビシと突き刺さっていたのである。幼い頃に両親を妖怪によって亡くした彼女は異妖隊に入るのを夢に見ていた。適正通知が届いた時には普段、物静かな彼女が一生のうち一番の大声を出したのである。そのレベル程には嬉しかったのだ。
でもこんなつもりじゃなかった…。
もう少し、女史がいてもいいんじゃなかろうかと彼女は頭を抱えた。すると突然電気が消えた。ヒゥッと変な声を出した彼女は更に怯える。キーンとマイクの音がなり、思わず背筋がピンとなるような―沙羅は本当に伸びた―声が聞こえてきた。
「指名者全102名に告ぐ!!私は零番隊隊長、綾小路 鶯だ!ただいまから異妖隊適正試験を行う!!」
その言葉に皆それぞれの目にやる気が灯った。沙羅もその一人で頑張るぞ、と一人意気込んだ……と、同時に間延びした声が入ってくる。
「すいませーん、遅れましたぁー」
入ってきたのは、一人の少年だった。
「構わん、空いている席に座れ。それではルールの説明をさせてもらう」
沙羅はただ一人の女史であったからか長椅子に、一人で座っていた。それを、目敏く見つけた少年がそっと腰掛ける。
「隣、いいか?」
と、問いかける少年に沙羅は、うんっと返事をすると少年はどーもと言って前を向いた。そうしているうちにカラカラと壇上に同じような何冊もの分厚い本が運ばれた。
「これは、百鬼全書である!!いまから、これを一人一冊配布する!これを10分で覚え、その後すぐに行われるテストに、全書に登場した妖怪を書けるだけ書け!!書いた数の多い上位25名のみが二次試験に進むことが出来るものとする!異論は無いな?」
「すいませーん」
また、あとから入ってきた少年―鶚が問うた。
「暗記がさっさと終わったらテスト書き出してもいいっすかね?」
その問いに綾小路 鶯は考えた。
「ふむ……いいだろう。ルール変更だ!暗記時間10分、記入時間10分とし暗記を10分以内に終わらせた者は手を挙げさえしてくれればその余った暗記時間を記入時間に使用することができるものとする!終了者も同様に手を挙げろ!構わないな?」
ルールの説明をしている間にいつの間にか百鬼全書がくばられてあった。
「百鬼全書は渡ったな?では、始めッ!!」
一次試験が始まった。
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「止めっ!!今から用紙を回収する。これから一時間後に一次試験合格者発表を行う!!以上!」
沙羅はほぅっと息をついた。今回の試験が得意分野で良かったと思いつつ、隣の少年を見た。
「…あの、名前教えて下さい」
「ん、俺?」
「そうです。あ、私は不動 沙羅といいます」
「俺は小鳥遊 鶚、よろしくなー」
「あのっ、聞きたいことがあるんですけど…」
鶚は何でも聞いてーとニコニコ笑っている。沙羅はずっと疑問に思ってることを彼に問いかけた。
「どうして、10秒で解き終わったんですか?」
「だってあれ、一言で十分だろ?」
「え?」
「後で教えてやるよ」
う、うん?沙羅は納得できなかったがとりあえず試験結果が出るのを待つことにした。
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「合格者を発表する!」
綾小路 鶯がそういうと同時に垂れ幕が落ちてきた。同率一位に隣の彼と自分の名前がある。たった10秒で!?と沙羅がそっちを見ると、鶚はニコニコと笑っていた。ラッキー、当たっちった、そう考える鶚は、隣でポカーンとしている少女に答え合わせをしてあげることにした。
「俺は、百鬼って書いただけだよ?」
へっ!?と驚いたしてやったりとニシシと笑った。
「だって百鬼で全員含まれそーじゃん?」
はぁっ!?そんなのありなの!?すべて書ききった自分が馬鹿みたいだと沙羅は頭を抱えた。
「さ、二次試験に行こーぜ」
鶚がニッと笑うと沙羅もハァーと溜息をつき、うんっと答えてニコリと笑った。
えー、突発的に書きたい!!と思って書きだした作品です。まだ先が見えておりません。それでもなんとか完結にはこぎつけたいと思いますのでよろしくおねがいします。がんばります。