第八十二話 明かせない思い
真衣と一緒に達樹さんがいたことにびっくりしながらも、二人を部屋の中に招き入れてダイニングテーブルへと導いた。
達樹さんが一緒に来た理由を聞かなくても薄々気が付いていた私は、せっかく真衣のために用意した料理が冷めてしまう前に食べてほしくて、話は食事の後にしてもらった。
「体調を崩したと真衣から聞いていたけど、大丈夫みたいだな」
多めに作っておいた料理を達樹さんも一緒に食べ終えた後、達樹さんと真衣が手土産として持って来てくれた缶入りのサワーを飲みながら達樹さんが口火を切った。
「心配を掛けて、ごめんなさい」
「尚哉のメールを見たんだろ」
体調を崩したことで心配を掛けてしまったことをダイニングテーブルとセットになっている椅子に座ったまま、謝りながら頭を下げた私の頭上から達樹さんの言葉が響いた。
私の吐いた嘘は見抜かれていたのだとはっきり教えられ、頭を上げて真衣を見ると、真衣の瞳の中に心配気な色が現れていた。
「真衣には事情を話してある。梨奈さんが体調を崩したと聞いて、真衣なら梨奈さんの相談相手になれるんじゃないかと思ったんだ」
「ごめんね。梨奈に許可も得ないまま、話を聞いてしまって」
申し訳なさそうに謝りの言葉を口にした真衣に私は首を横に振って、尚哉からのメールを見てから今日までのことを話した。
父と母に尚哉と一緒に暮らしていることを打ち明け、尚哉からのメールも見せたことを知らせると、達樹さんと真衣から驚いている気配が伝わって来た。
「それじゃあ、梨奈さんの両親は、何が起こっているのか知っているわけだ。それで、梨奈さんの両親は何て言ってるんだ」
「私の判断に任せるって、言ってくれてる」
僅かに驚きの感情と不安な思いを言葉に乗せて聞いてきた達樹さんに、私は父と母から言われたことを話した。
「梨奈はどうするか、もう決めたの」
真衣が瞳の中の心配気な色を濃くして問い掛けてきた言葉に、私は頷いて自分の気持ちを言葉にして紡いだ。
「私ね、考えてみたら、まだ尚哉と一言も話してなかったんだよね。メールを読んで尚哉の気持ちは分かったけど、でも、聞きたいことも聞けていないし、聞いてほしいことも何も言えていないし……。だからね、尚哉とちゃんと話し合うためにも、尚哉が帰って来るのをここで待っていようと思ってる」
「それは、尚哉と別れることも視野に入れてって、ことなのかな」
「そんなの駄目よ。何で、尚哉さんと梨奈が別れないといけないのよ。おかしいでしょ」
達樹さんが私の気持ちを探るように言葉を発すると、真衣が慌ててそれを否定した。
「ありがとう、真衣。私も尚哉と別れたいとは思ってないよ。でも……」
“美咲さんのお腹の中にいる赤ちゃんが、尚哉の赤ちゃんだったら……”
父親の尚哉が、私のところへ戻って来てしまったら、その子はどうなるのかと思うと、簡単には続く言葉を口にすることはできなかった。




