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第八話 呼び出し

この回より、尚哉の視点になります。

「……分かりました。こちらが片付き次第、伺います」


デスクの上の内線電話を切ると、重い溜息が零れた。




壁に掛けられている時計を見上げると、終業時間まであと二、三分というところだった。それは同時に、これから始まる悪夢の時間までの残り時間をも表していた。




「樫山専務か」


「ああ」


俺の溜息を耳聡く聞き付けた隣の席の同僚でもある山内が、俺への同情を含んだ苦笑を浮かべて聞いてきた。




 現在、四葉環境株式会社の専務の座にある樫山秋満かしやまあきみつは、俺たちと同じ営業部の出で、営業マン時代には常にトップの営業成績を維持し『不動の樫山』という異名を与えられていた。


その功績が認められ短期間で課長へと昇進すると、四葉環境株式会社と取引のあるメインバンクの当時の頭取に目を掛けられるようになり頭取の孫娘の婿へと納まった。




大きな後ろ盾を得て部長へと出世した後、それまでに培った営業のノウハウを生かして各分野に精通し尚且つ、各部署において高い評価を得ていたメンバーを集めプロジェクトチームを起ち上げた。


その後、プロジェクトチームの有効性が認められるようになると、起ち上げ当初から総責任者を務めていたことが評価され専務の座まで上り詰めた人物だった。




「お前も、ご苦労なことだな」


綺麗さっぱり片付いた自分のデスクの上を見て、また一つ溜息を吐いた俺に詳しい事情は知らなくともここの所の樫山専務と俺との間の、ぎすぎすとした関係に気が付いていた山内がねぎらいの言葉を掛けてきた。


俺は苦笑で返し、帰りの挨拶をして樫山専務の待つ専務室へ行くためエレベーターへと向かった。




 エレベーターへ乗り込み、上昇しているのを感じながら

“頼んだぞ。達樹”

と俺は心の中で呼び掛けた。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


次回の投稿日は、13日(月)になります。


少し間が開きますが、これからもよろしくお願いします。

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