第四十八話 親友
今週もよろしくお願いします。
尚哉から贈られた指輪と携帯電話を呆然と眺めていた。
心が惹かれる素敵なデザインに嬉しい言葉が刻まれた指輪は、尚哉が私を求めているようにも思え、反対に今でもつながらない電話は、はっきりと私を拒絶しているようにも感じられた。
“私は……、尚哉に捨てられたのだろうか……”
そう考えると全ての辻褄が合うような気がした。
以前、会社の同僚の沙織が話していたように尚哉に出世の話が持ち上がり、そのために必要な相手との縁談の話が進んでいて、尚哉は心を私に残したままその相手との結婚を選んだ……
でも、話の辻褄は合っても、私は違和感を覚えていた。
尚哉は努力することを厭わず、そうすることが必要だと思えば時間は掛かってもこつこつと積み上げ、それを自分のものとすることができる人だった。
私は、そんな尚哉を尊敬していた。そう考えると、尚哉の今の行動はちぐはぐなような気もしていた。
思案に余った私は、真衣にメールを入れた。
真衣は一年程前から、達樹さんとお付き合いをするようになっていた。
出会ったばかりの頃は、女性にもてて誰にでも優しい達樹さんとのお付き合いは、苦労しそうで嫌だと言っていた真衣だったが、尚哉も交えて四人で何度か会っているうちに親しくなっていったようだった。
尚哉と仲が良く気兼ねなく何でもぽんぽんと話をしている達樹さんなら、尚哉に何が起こっているのか知っていて、真衣にもそれらしいことを話しているのではないかと思った。
仕事中かもしれないと思い、電話ではなくメールを入れたのだけれど、真衣からは五分もしないうちに電話が掛かってきた。
「何か、あったの」
真衣からの問い掛けにどう応えたらいいのかと躊躇いながらも、自分だけの胸の内に仕舞いこんでおくには苦しすぎて、私は事実をありのままに話した。
「本当に今も尚哉さんからの連絡はないの」
話を聞き終えた真衣に問われた内容に私は胸が詰まり、真衣に対する気安さから弱い自分が顔を覗かせた。
「私……、尚哉に愛想を尽かされて……、捨てられちゃったのかなあ……」
「なに馬鹿なことを言ってるのよ。あんなに深く梨奈のことを思ってる尚哉さんから梨奈を取ったら、何が残るって言うの。たとえ捨てたとしても、捨てた瞬間にそのことに思い当たって、即座に拾い上げるに決まってるでしょ」
尚哉に捨てられたかも知れないと言った私の言葉を、間を置かずにきっぱりと否定した真衣に力を貰えた気がした。
「達樹さんから、何か聞いてない」
「達樹とは、仕事が忙しいらしくて、ここのところ会ってなかったんだよね。でも、確かに達樹なら何か知ってるかも……。ちょっと待ってて。確かめてみるから」
真衣から貰った力に後押しされて、真衣は何か知っているのではないかと尋ねてみると、真衣は言うだけ言って、私の返事も聞かずに電話を切ってしまった。
呆気にとられた私に折り返しの電話が入ったのは、だいぶ経ってからだった。




