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第四十七話 すれ違い

 翌日、何の答えも見つからないまま会社へ行き、仕事を終えて『ベルフラワー』の建物の前まで戻って来ると、年末も間近に迫った夕暮れは陽が沈む時間も早く、もう辺りは真っ暗だった。


建物を見上げ、自分の部屋の窓を探す。尚哉が戻って来ていれば、明かりが灯っているはずのその窓は暗いままだった。




 溜息を吐き、『ベルフラワー』の玄関を通り抜け、いつもの習慣で手紙の有無を確かめるためにメールボックスに近付いて行き扉を開けた。


すると、中に見慣れない小さな箱とその箱に添えるようにカードが一枚置かれていた。


私は不思議に思いながらカードに手を伸ばして取り出し、書かれていた文字を目にした。その途端、心臓が大きく跳ね上がった。そこには、尚哉の筆跡で『愛する梨奈へ』と書かれていた。




“これは、尚哉が置いたんだ。尚哉が帰って来たんだ”

と思った時には身体が反応し、カードを握り締めたまま私は建物の外へ飛び出していた。


道路まで出て左右を見渡し尚哉を探したけれど、尚哉の姿を見つけることはできなかった。




尚哉に会えなかったことにがっかりしながらも、メッセージを残していってくれたことで、私の心は少しだけ軽くなっていた。


しばらく『ベルフラワー』の玄関の前に立って、尚哉が戻って来るのを待っていた。


でも、戻って来る気配はなく、メールボックスの中に置かれていた小さな箱の中身も気に掛かり、私は後ろ髪を引かれつつ何度も後ろを振り返りながら建物の中に入った。




 メールボックスから小さな箱を取り出すと、それは綺麗にラッピングされていた。


私は落とさないように添えられていたカードと共に、持っていたバッグの中へ大事にしまい尚哉と私の部屋へ向かった。




部屋の中に入り、リビングのソファに腰を落ち着けてバックの中からカードを取り出す。


尚哉の字で書かれた『愛する梨奈へ』というメッセージをもう一度確かめ、他に何か書かれていないかカードをひっくり返してみると、それは尚哉の名刺だった。


以前にも尚哉が名刺を使って自分の連絡先を教えてくれたことがあったなあ、と懐かしい思い出に浸りながら名刺の表と裏を隅々まで見たけれど、他には何も書かれていなかった。




名刺をソファの前に置いてあるローテーブルの上にそっと載せ、バッグから小さな箱を取り出して包装を解き中の物を取り出す。


それは、注文した人の要望を取り入れて一点一点手作りでアクセサリーを作ってくれることで人気のある、ジュエリーショップ『アーク』のマークが入ったビロードの布を張ったケースだった。


ケースのふたを開けると、中には植物のツタを模し、つるの部分には花に見立てたダイアモンドがちりばめられた指輪が入っていた。


ケースから指輪を取り出し持ち上げてみると、内側の台座になっているプラチナのリングに『Endless Love』と刻印があった。


『Endless Love』、それは、終わりのない愛、すなわち『永遠の愛』を意味する言葉。




嬉しさがじわじわと沸き上がり、私は今の気持ちを尚哉に伝えたくて電話を掛けた。


でも、電話はつながらず切れてしまった。


「嘘……。嘘でしょ……。だって、帰って来てくれたじゃない。指輪だって、届けてくれたじゃない……。どうして……。どうして、つながらないの……」


切れた電話が信じられなかった。なぜつながらないのかわけが分からず、私はすっかり混乱してしまった。


ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。


また、今週も新たにブックマーク登録をして下さった方がいたようで、嬉しく思っています。


本当にありがとうございます。


来週はシルバーウィークになりますが、これまで通り投稿するつもりですので、楽しみに待っていてもらえればと思っています。


よろしくお願いします。

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